日本語動詞:「態の双対環」語感調査3
2015/09/12(土)
(3)「態の双対環」の独自提案は3つ:
態の双対環では、通常の学校文法と大きくかけ離れた考え方を採り入れています。
3つの独自提案をまとめて記述します。
★独自提案-1:動詞基幹とは?
①動詞語幹の見つけ方:態生成には「子音末揃え」を提唱する。
・子音語幹の動詞はそのままの子音語幹を使います。
・母音語幹の動詞は、動詞原形・終止形の最後音「る」の子音「.r」を語末に残す形態で子音語末に揃えて使います。
★両者の語幹を以下「動詞基幹」と呼ぶことにします。(動詞基幹の採用で、意味、形態が互角平等になります)
・動詞基幹の実例をあげます。
〇子音語幹:書k-、休m-、走r-、読m-、・・・
〇子音語末:見.r-、食べ.r-、起き.r-、下げ.r-、・・・
(文法措置で残置するのでピリオド付きのr-で表現します。)
〇強制系、使役系での子音語末:
見.s-、食べ.s-、起き.s-、下げ.s-、・・・
(文法措置で「.r-から.s-に交替」します。「見させる」のように「s」付きの使役系に順応させるためです)
★独自提案-2:態接辞は助動詞から独立した態動詞生成のための接辞です。
②「動詞基幹+態接辞」の合成で「態動詞」が生成されます。
・合成完了した態動詞は、次に「通常の動詞」として動詞活用されて使われます。
〇つまり、他の助動詞群よりも前段階で「態動詞の生成」を行うことが絶対必要条件です。
★態接辞を動詞活用の未然形に接続するという旧来の文法は間違いです。
・市販の国語辞典では後段付録に「助動詞一覧表」を掲げていますが、ほとんど例外なしに一覧表の最初に受動(尊敬・自発・可能)と使役の2つの助動詞が並んでいるはずです。
〇学校文法、国語辞典も暗黙のうちに「態の助動詞」はまず最初に先行使用すべきものだと気づいてはいる?のですが、どこかで論理が間違って「未然形接続」だと言い続けている。
〇新提案では先行使用を明示する意味で、「態動詞生成」のための接辞と位置づけます。
(動詞生成と動詞活用を区別する。態以外の助動詞は動詞活用の段階で使用されるもの)
★独自提案-3:態接辞は元来一つの原動詞から自動詞/他動詞の対動詞を生み出す接辞として使われてきたものですが、同時に態変換を述語動詞に加える機能接辞です。
③態接辞の形態と意味:
・可能態接辞:e.r-
→可能:~できる/動作意図、意思がある/自発:~になる/他動:~にする。
・結果態接辞:ar-:文語体受動接辞を現代も再利用。
→動作結果がある/結果になる/結果にする。
・強制態接辞:as-:文語体使役接辞を現代も再利用。
→他者に自律・自力動作を指示、強制する。
・受動態接辞:are.r-:結果態+可能態の合成接辞。
→動作結果がある(受身、尊敬)/結果になる(自発)/結果になれる(結果可能)。
・使役態接辞:ase.r-:強制態+可能態の合成接辞。
→他律、他力動作を指示、許容、放任する。
(母音語幹扱いの可能態は動詞基幹で表示すると、「e.r-」(または「e.s-」)となります)
④「態の双対環」:図式把握に、
・各系原形態(12時位置)/可能態(右3時)/結果態(左9時)/受動態(下6時位置)の環状配置を想像する。
★態の3系統と「態の双対環」:
〇能動系「態の双対環」例:簡略表記には、
書く/書ける/書かる/書かれる。
見る/見れる/見らる/見られる。
〇強制系「態の双対環」例:
書かす/書かせる/書かさる/書かされる。
見さす/見させる/見ささる/見さされる。
〇使役系「態の双対環」例:
書かせる/書かせれる/書かせらる/書かせられる。
見させる/見させれる/見させらる/見させられる。
以上、概観的に「態の双対環」方式の独自提案3項目を記述しました。
★提案3項は相互に関連しあっています。
〇態接辞はどれも「母音始まり」です。古来、「原動詞は子音語幹を持つものが多く」、直に態接辞と接合して動詞派生していた。また「原動詞が母音語幹を持つものは」:残る/残す、移る/移す、治る/治す、など「る/す」語尾対応で子音語幹の自他動詞を生み出す伝統もあり、直に態接辞と接合できる状態が多かったはずです。
★もちろん、完全に母音語幹の動詞が存在し、また常に生まれてきますから、先人は暗黙のうちに解決策として動詞基幹「~.r-/~.s-」法則を伝承してきたのではないだろうか。その智恵により態の接辞形態を統一活用できたわけです。
(明治の急激な文明開化以降に、動詞語幹を「ひらがな解析」したり、「音素解析:ローマ字解析」したりの両極端に揺れる解析に無定見な追従をしてきたけれども、真ん中寄りの解析で「動詞基幹:.r-/.s-」の伝承文法に回帰したいと提案するわけです。
・伝承文法:日本語の動詞は「有対の自他動詞」を生み出す「自他交替の法則」が根づいている。態の生成もその法則が深く関与しているはずだと思うのです)
〇態の選択は、動詞活用ではありません。「態の動詞を生成する」ことです。態動詞を選択、決定してから、その態動詞を動詞活用させて文章を作成します。
「態の双対環」方式は独自の態文法解釈です。
〇解釈例:読む:は他動詞ですが、「原書が/を読める」の読める:は自動詞か、他動詞か、
文法書の立場により解釈が分かれるかもしれません。
・でも「態の双対環」ならば、態接辞は本来、自他交替の機能を持つとの立場にあるから、自動詞であり、他動詞であり二面性があると判断します。
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