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2015/11/11

日本語動詞:今泉「研究会」に参加して

2015/11/16
:追記はじめ-
★★→投稿本人注:動詞基幹の名称概念を廃止します。
態接辞にしか通用せず、動詞活用接辞、助動詞接辞などを含めて通用する概
念としては、「動詞語幹+挿入音素+機能接辞」の全体構成から「動詞語幹+挿
入音素」の部分を「機能接辞」と接続するという解釈がよい。
(一般化した「動詞語幹+挿入音素」は子音終わりの基幹形態にならない場合
もあるから)
追記終わり-

2015/11/11(水)

 今年5月~10月に「研究会」に飛入り参入させていただいた。日本語構造伝
達文法を開拓された今泉氏のもとに卒業生などが各自の課題の調査成果を
たずさえて報告披露する。日本語、フォン語、アイヌ語、中国語、韓国語、
などに関する調査成果を先生が逐一質疑・指導されるという進め方です。
調査論文を作成するための考察点や整理方法を助言するような感じです。

 私が披露したのは「態の双対環」態文法です。このブログにも先行して記述
してある以下の各記事、
「態の双対環」質問箱、と質問箱2質問箱3質問箱4質問箱5
可能態と受動態の可能表現の差
を題材にして要点をぬきだして発表しました。

 数回の研究会での反応はほとんど拒絶的でした。日本語教育の現場に立つ
経験者の方からは、「子音語幹と母音語幹の区別をせっかく教えたのに、そ
れをくずしては動詞活用を教えられない」と反論を受けた。
確かに、教師が半信半疑では学習指導ができないでしょう。
 「研究会」からの質疑・助言にはいくぶん手加減があったのでしょう。
「態の全体像を考察するのはよいのだが、いわゆる仮説だらけですから反証
がむずかしい」、「動詞語幹と動詞基幹の2本立て、態活用と動詞活用の2本
立て、複雑な文法だなという印象です」という総括だったかとおもいます。
個々の仮説を吟味することに対して素人の悲しさ、歯がゆいほど不十分な答
えしかできない。
残念ながら、これの繰り返しでしたので、仮説の因って出てくる根拠を十分
に述べきることができなかったと感じています。
今回、とても貴重な経験をすることができました。研究会各位には感謝いた
します。
参加総括のつもりで以下にまとめを記述します。

 現在の学校文法では、動詞活用と態活用をどのように教えているのか。
各種の国語辞典で後尾付録に記述がある『動詞活用表』、『助動詞活用表』を
調べる。
○どの辞典でも『助動詞活用表』の最初欄に「受動、使役」が記述されてある。
・唯一、『岩波広辞苑:第6版』の別冊付録の『助動詞活用表』では「受動、使役
」が表の後尾側におかれてある。不用意なあつかいだ。一方、『岩波国語辞典
:第7版』では「受動、使役」が『助動詞活用表』の最初欄にあるから安心した。
岩波書店の確信的な方針で広辞苑のそれが決ったのではないらしい。
★つまり、国語辞典の大勢が示すように、「態:受動、使役」は助動詞の中でも
最初に動詞と接続、結合するものだという暗黙の法則があると見抜けます。
(この見抜きも仮説ですが、、、)

★今泉喜一『日本語構造伝達文法』の態文法部分では、さらに進んで「動詞活
用表」の中に「態:原因態(使役)、受影態(受動)、許容態(可能)」と「否定:打
消し」を組み入れる文法です。(描写属性の構造に付加する機能に注目して
活用表に編入)

★本ブログ提唱の「態の双対環」では動詞述語で描写する順序については、
さらに進んで、第一に「態動詞生成」をおこない、次に「動詞活用」、「助動詞
活用(態を除く)」へ移行するという文法法則を示してきた。
○態の接辞は「動詞の自他交替の機能」を持ち、自他の動詞語彙の派生で使
 われると同時に、文章内で動詞の態生成にも使われる。と見立てている。
★この「態の生成規則」では、子音語幹、母音語幹にかかわらず、動詞基幹(動
 詞原形の子音語尾まで)に対して態接辞を接続する。
 (と仮説を立てました)
○つまり、帰られる:帰r+are.ru、変えられる;変え.r+are.ruと受動態は
 同形並びとなり、使役態では、帰らせる:帰r+ase.ru、変えさせる:変え.s
 -ase.ruとなります。
○母音語幹の基幹部分は、変え.r-、変え.s-のように使役系との往復で
 「r/s交替」が必要なので、母音語幹か子音語幹かの判定識別法に適用でき
 ます。
○「態の双対環」では、
・可能態:-e.r-、結果態(文語受動態):-ar-、受動態(結果+可能):-are.r-、
・強制態(文語使役態):-as-、使役態(強制+可能):-ase.r- を基本要素
 として使い、
・能動系の「態の双対環」、強制系の「態の双対環」、使役系の「態の双対環」を
 提起しました。
 (態の動詞基幹を扱う場合:可能接辞の表記は-e-でなく、-e.r-、または
 -e.s-とします)
○「態の双対環」で動詞基幹の概念に従えば、見れる:見.r-e.ru、食べれる
 :食べ.r-e.ru、食べさせれる:食べ.s-ase.r-e.ru、などを文法的に可能
 態として正当化できます。
・また、江戸期に、子音語幹の「す」語尾動詞(他動詞に多い)が受動態・渡され
 る:渡s-are.ruの形態では可能意義を想起できないため、渡せる:渡s-e.ru
 と可能接辞に移行してきた歴史を正式に「可能態」として文法的位置付け
 をして伝承できます。
〇「態の双対環」になじめるようになったら、動詞単語に組み込まれた「態の
 要素」にも、構文内の「態動詞」にも理解が深まり、学習指導もしやすくなる
 でしょう。

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