日本語動詞:新解釈「態の文法」を求めて3
2016/02/01(月)
★「態の双対環」命名の理由:
①態の双対:「態の対向関係を表現する形態が2組ある」という意味です。
:能動系では、「原形態←・→受動態」と、「結果態←・→可能態」の2つの対向関係を
縦軸と横軸にして「4つの態が環状に並んだ構成」と想定して命名しました。
②重要な態接辞に光をあてる:態接辞(:aru、asu、eru)を重用したい。
:結果態:「aru」は文語体受動接辞であり最重要。「ある」は日本語動詞の基本です。
:強制態:「asu」は文語体使役接辞であり最重要。「あす:他を律する」←「ある:自律」。
★:可能態:「eru」は万能接辞で重要。「動機あり:as的」、「動機なし:ar的」。
(例:取れる:動機あり→動作可能、動機なし→自・自発態:壊れてとれてしまう)
★「結果態←・→可能態」の対向は、可能態「:動機ありas的、意図しての動作可能」
の側面を想定して、これと結果態「:ar・動作の結果、見通し」と向き合う関係を
表現したものです。(動作結果←・→動作開始のアスペクト的対向関係とも類推できる)
③3系統の「双対環」と相互への飛び移り:
:能動系と強制系・使役系はそれぞれ別の「双対環」を構成し、通常では相互の「双対環」
から他の「双対環」へ飛び移ること少ないです。
:それでも、能動系受動態→強制態・使役態、使役受動態への飛び移り(:打たれさせる)
や、強制系可能態→使役態への飛び移り(:移s・as・eru→移s・aseru)は
当然にあり得ます。
:ただし、二重可能態や二重受動態は事態を混乱させるだけで意味不明になります。
また、強制、使役は人を何段階も介して他律動作をさせるなら、二重使役、三重使役も
原理的には可能です。ただ、文章を混乱させるだけですから、単文内での多段使役の表現
は控えるのがよいのでしょう。
以上が「態の双対環」方式の提案説明です。
最後に「態の双対環」の深層を整理しておきます。
①母音語幹動詞には、語尾に能動系:「・r」、強制、使役系:「・s」を挿入することで
子音語尾化して、母音始まりの態接辞と接続・膠着して態動詞を生成できます。
②動詞語尾子音で「rとsを」交替させて自他交替とするのは、古くから日本語文法で行われ
ています。
③自他交替文法により、結果態:aru→強制態:asuへと「r/s交替」が働いたもの
と思われます。
④動詞述語の場合:たすk・aru、かさn・aru、きm・aruなど「aru」形態の
ままで文法化されています。(動作がある、動作結果があるの意味です)
一方、
:名詞述語の場合:これは日本語d[e]・a[ru]。=日本語だ。
:形容詞述語の場合:これ、うまk・a[ru]。=これ、うまか。(九州弁)
と変形簡略化されますが、重要な役割を果しています。
⑤「態の双対環」では、可能態の生成にも子音・母音語幹で差別しません。
:見れる、食べれる、来れる、着れる、考えれる、起きれる、落ちれる、降りれる、
伸びれる、生きれる、上げれる、変えれる、開けれる、続けれる、逃げれる、、、
これらはすべて正式に可能態「:意思段階の可能」として認めるべきだと提起します。
(ただし自発系では:切れれる、割れれる、折れれる、倒れれる、こぼれれる、など形態は
可能形的ですが、動作意思軟弱な意味不明の単語になります)
⑥「態の双対環」では、受動態によって表現する可能は「:結果可能、実績可能」であると
意味付けします。
:行ける:個人意思で可能と推測 /行けない:意思が起きない不可能。
:行かれる:結果洞察できる(習慣的な)可能 /行かれない:(行きたくとも)人為を
超えた不可能。
⑦受動態が「受身、尊敬、結果可能、自発」など多様な意味で使われる理由:
「態の双対環」では、受動態接辞:areruが、結果態と(可能接辞)の合成による機能
が深層原理として共通に働いているからだと解釈します。
★受動態は「:動作結果で実現する状態を表現する」のが原理的役割です。
①動作主体を受動文の主格で表現すると、「尊敬、結果可能・実績可能、自発」を意味しま
す。(ただし、動作主体が発話で「尊敬」を言いません、第3者が発話する表現です)
②被動作者主格で受動文を構成するとき、「受身(直接、間接)」を意味します。
③事態主格で受動文を構成するとき、「結果可能・実績可能、自発」を意味します。
★受動態は「:動詞原形+areru」です。(西欧語が:be+過去分詞と時制を持ちます)
受動態の時制も完了に縛られません。将来を洞察しての動作結果予測を表現できます。
★受動態の接辞:areru:は、あれる、在れる、有れるに通じます。
(西欧語が:have+過去分詞で表現するのも含み)「動詞原形+有れる」は動作結果の有れることを表現します。
つまり、受動態は結果的に実現した動作である、実績可能であることを表します。
以上。
« 日本語動詞:新解釈「態の文法」を求めて2 | トップページ | 日本語文法の論理 »
「日本語文法」カテゴリの記事
- 「またく心」とは「待ち焦がれる心」のこと(2024.09.15)
- 「新手法」の用語(4):活用節=(体言/用言)[連用/連体/終止](2024.08.29)
- 「新手法」の用語(3):-e[r]と-ar[-]uを分かる知恵(2024.08.28)
- 「新手法」の用語(2):主部律と述語律(2024.08.27)
- 「新手法」の用語(1):膠着方式(2024.08.26)
コメント