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2016年4月

2016/04/27

日本語文法の論理8

2016/04/27(水)

 3年前に、日本語の動詞:日本語文法学問の3盲点、の考察文章を記述したが、現在の心境、考えは変化してきている。考察の整理をかねて新しい視点で書き直す。

【旧要点】日本語の動詞:日本語文法学問の3盲点:要点のみ:
○日本語文法(学問)の三大欠点は:(2013/01月 時点)
①明治以来、外来の概念に引きずられて、日本語では不要な「主語」を使い続けていること。
②日本語本来の自動詞/他動詞/受身/使役の言語運用メカニズムが全く誤解、忘却されていること。(動詞の自・他の派生方法、動詞態の使い方の深層原理が忘却されている)
③平仮名分析に固執していること。(音韻分析:ローマ字つづり:にこそ西洋音韻学の手順を取り入れるべきだった)
 と指摘がある。

【新要点】日本語文法の論理:3盲点をどう見る:(2016/04/)
①明治以来、西欧語文法の影響を受けている。日本語では「主語明文化」は必須でないが、「暗黙了解できる文脈・場の読み」が必要である。
②特に日本語の動詞は自他交替、態交替(使役態・受動態の生成)の機能により動作の交代が簡便に行えるので、正しい文法法則を確立すべきだが・・・
また、日本語では「連体修飾句」、「連用修飾句」の機能力を十分に使いこなすと、柔軟な表現が可能になるので、正しい文法法則を確立すべきだが・・・
③語源解析で音素分析を取り入れたが、動詞活用などでローマ字解析が定着しなかった。
ひらがな解析の限界で自他交替、態交替の深層実態を見抜けない状況が続いている。(時枝文法:ひらがな解析だが、態交替には先進的な考察があった)
 ローマ字解析法が効果を発揮するのは、動詞の自他交替、態交替、動詞活用などに限られます。また、逆にローマ字解析法を安易に振り回して思考停止を招いているのが、「動詞語幹:子音語幹、母音語幹の識別」の乱用です。
★動詞の自他交替、態交替には、「動詞活用:未然形」などは無関係です。
 自他交替、態交替は「動詞原形の語末子音までの語形」に対して接辞を付加するのですから。
参考のために、【旧文法:態の生成】/【新文法:態の生成】比較図を示します。
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2016/04/20

日本語文法の論理7

2016/04/20(水)

★時枝誠記:『国語学原論』1941年:上・下巻の内容に共感しつつ、関連考察を引き続き述べたい。
〇時枝文法は問題提起の着眼が奇抜に見えても、意外なほど論述展開・結論が自然で柔軟な着地点に到達します。
 前回の「論理6」で記述した【2】、【3】の実験思考に込めた新しい態動詞生成方法をご理解いただけただろうか。
〇態の助動詞を「詞」あつかいすると初めて聞かれた方にとっては、理解・容認の範囲を超えているかもしれません。(態接辞の由来が「動詞自他交代の機能接辞の再利用である」ことを感得できれば、自然な着地点に着くはずです。動詞の未然形に接辞をつなぐと言うのは間違いです)
〇小島剛一:『再構築した日本語文法』2012年の書中では、「ら抜き可能」を非文法としています。
・後にご自身のブログ記述で、「(ra)reru:ら抜き」ではなく「r(ar)eru:ある抜き可能」だと気づいて、文法的側面を考慮し直したようです。
・しかし、「入れれれば:可能仮定」など「れれれ:3連続」に辟易だという。「入れられれば:受動仮定」ならばOKで、「入れれれば」が容認できないという。
〇外山滋比古:『日本語の絶対語感』2015年9月の後半部分で「ら抜き可能」に触れている。
・用例の1つに「~行けれる」を上げているが、「行け(る)+れる」では二重可能となり誤用に相当する。(校正もれ?)
・五段活用/一段活用、「れる/られる」との受動態の文法説明はあるが、その問題点の洗い出しがない上、新しい流れの可能態に対する文法形態の説明も不十分。
・若い世代に「「~れる」がつけば、可能形だ」と反射的に思わせてしまうのがこわい。
 正しい「可能態接辞:eru」が定着してほしい。

【4】[詞]辞)入れ子型の本領:
 態動詞の文法を先行したが、やはり、本来の[詞]辞)入れ子型の文法にもどろう。
★時枝文法:[詞]辞)では辞が詞を総括し、次段の[詞]辞)が前段入れ子を総括する。
最後の[詞]辞)が表現の完結を果す述語形式を持ち、全体を一文に統合(統括)し、意味を完結させる。

【4:思考実験】確かに入れ子型は風呂敷統一形式:
 入れ子を入れ子が総括することを、風呂敷包みを風呂敷が包むと類推する。
★風呂敷総括の原則を構文のなかで応用すると、特に形容詞や動詞の連体修飾句の扱い方に威力を発揮する。
【例】被修飾語を含めた入れ子型を風呂敷型:【】)で強調してみよう。
・[源さん]が)こわい]φ=その)饅頭]とは、)→【[源さん]が)こわい])饅頭】とは、)
〇関係代名詞句を使う言語では、
~こわい]、その)饅頭]と言う形式で表現するが、関係修飾句を使う日本語では~こわい]φ)饅頭】という直結形式で風呂敷型表現を常用する。
 ~こわい]φ)と饅頭]が直結できるように、~こわい])には辞が付かない。
・[女]は)なぐられた]φ=その)男]に)復讐]した。)→【[女]は)なぐられた])男】に)復讐]した。)
〇風呂敷の中が男だけならば、
・【[なぐった])男】は)女]に)復讐]された。):男の立場での動作修飾により表現される。
★ここまでの論旨:日本語の関係修飾句は、そこまでの語順全体を風呂敷型総括することで意味が固定する。また、【~[修飾語])被修飾語】の間は無辞で直結します。

 寺村秀夫:関係修飾句の被修飾語を「底」と名付け、修飾語と底の関係を内の関係/外の関係と見分ける認識を示した。
【例】内の関係修飾:
・【[私]が)買った])本】。)←[私]が)本]を)買った]。):構文中にあった「本」を「底」にした関係修飾文。
【例】外の関係修飾:
・【[さんま]を)焼く])煙】が)すごい]。)←[さんま]を)焼く]と、)煙]が)すごい]。):条件構文からの変化?通常、外の関係修飾としているが、境界はむずかしい。

★修飾機能の結合力を強く表現するために「=記号」を使い、
・【[私]が)買った=本】。)
・【[さんま]を)焼く=煙】が)すごい]。)
・【[源さん]が)こわい=饅頭】とは、)
・【[女]は)なぐられた=男】に)復讐]した。)
・【[太郎]は)明日]、)大阪]に)行く=予定】だ。)
のように記述したいですね。
(=記号:文章中の視認性が高く、日本語の繋辞とは区別可能だろう)

★なお、修飾機能「=記号」に対しては、西欧語では、関係代名詞を使う。
・買った(、その、)本/さんまを焼く(、ときの、)煙/源さんがこわい(、と言うその、)饅頭/女はなぐられた(、その、)男に/太郎は大阪に行く(、のが、)予定/
などの()内の語句は、日本語では通常明示しなくても、修飾機能力が十分に働くから意味が通じる。
★日本語の形容詞・動詞が持つ連体修飾の結合力と、風呂敷統一形式の概念との2つを確実に作用させれば、西欧語の関係修飾よりも柔軟な構文が作れる。
・名詞修飾、形容名詞(:形容動詞)修飾の場合には、【~[名詞]の)修飾】)や【~[形容名詞]な)修飾】)と助辞が間に入ります。だから余計に連体修飾句(と「底」)の結合力には自信を持って語感を高めていきたいですね。
【例】
・【~[トンネル]を)抜ける]と、)雪国】だった。)
・【~[トンネル]の)向う側]は、)雪国】だった。)
機関車などを登場させなくても、時空間の広がり、移動感を直接感じることができる。
日本語が持っている風呂敷統括作用の効果です。

2016/04/14

日本語文法の論理6

2016/04/14(木)

★時枝誠記:『国語学原論』1941年:上・下巻を通して読後感想を述べる。
【1】言語の存在条件:
:主体(話し手)とその主観判断が素材(客観的語彙、概念)と場面(話の場、聴き手、話の内容・前後関係)に志向作用すること。
【1:思考実験】原意は優れている。が、俗人の当方としては、主体-素材-場面(三角図形を想定)の一般化を進めて考察実験したい。
★「素材-場面」を垂直辺、垂直軸として立てる。左側横に「主体」があり、そこから発する「志向作用」が素材、場面へ向かう辺線をなすという三角図形を基本に思い描いてください。
★主体1:話し手-素材-場面、
 主体2:聴手1-素材-場面、
 主体3:聴手2-素材-場面、
 この3つの三角図形を、素材-場面の軸を共通の中心軸にして、立体的に配置してみよう。
主体1、2、3が対話する立体的な場面を想定できる構造図形になります。
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〇実際の対話の場では、主体1、2、3が随時に発言役、聞き役にと入れ替ります。
〇それぞれの「素材-場面」がいつでも完全一致しているわけではありません。修正しつつ影響されつつ話が続くのでしょう。
〇主体相互間での「伝達」の重要性は「素材-場面」の一致だけではなく、主体の「志向作用」も受け止める必要があります。
(時枝原案「場面」には聴き手を含めていましたが、これを聴手主体に取り出すことで、一般化、立体化ができると思う)

【2】[詞]辞)入れ子型:
:辞より除外すべき受身可能使役敬譲の助動詞。
【2:思考実験】入れ子型を提唱したからには、詞辞の区分けに厳密性を示したわけです。
「態の助動詞」を「辞:主観表現」でなく「詞:客観表現」の範疇に入れた点は優れた判断だと共感します。
★態接辞を「接尾語」と命名し、「動詞原形に接合」して新たな態動詞を生みだすと解釈すればよい。
〇「態接辞を動詞原形に接合する」の意味は、動詞の子音語幹、母音語幹につなぐのではありません。
(「動詞を活用させて」態動詞を作り出すのではありません。自動詞から他動詞を作り出す/他動詞から自動詞を作り出すための機能接辞と同じ性質を態接辞が持っています)

【例】読m・areru:読まれる(受動態)
 読m・aseru:読ませる(使役態)
 読m・eru:読める(可能態)
 書k・areru:書かれる(受動態)
 書k・aseru:書かせる(使役態)
 書k・eru:書ける(可能態)
 食べr・areru:食べられる(受動態)
 食べs・aseru:食べさせる(使役態)
 食べr・eru:食べれる(可能態)
 見r・areru:見られる(受動態)
 見s・aseru:見させる(使役態)
 見r・eru:見れる(可能態)
★母音語幹動詞:食べる、見る、に対しては、動詞原形として、食べr、見r、のように「r」を補います。
・使役態、強制態の接辞と結合する際には、食べs、見s、のように「s」に置き換えます。
これは、原形末尾「r:自律動作/s:他を律する動作との交替」という文法的操作です。

【3:思考実験】動詞原形を採用する利点:
①上例のように、子音語幹、母音語幹の動詞に対しても態接辞は同一形態で定義できます。
・受動態接辞:areru/あれる
・使役態接辞:aseru/あせる
・可能態接辞:eru/える
と憶えれば、動詞原形の語末子音に対して迷わずに使えるでしょう。
②間違い文法:態接辞を「動詞の未然形に接続する」を廃止できます。
(態は動詞活用で生成するのではありません。まず動詞原形から態動詞を生成します。
 態生成後に態動詞として活用すればよいのです)
③可能態接辞:eruをすべての動詞原形に接続でき、「ら抜き:ar抜き」を正式文法則に認定できます。
〇時枝本では、可能態に触れていませんが、受動態「ar付き可能:ar・eru」の「ar:ある」については、「ある、在る、有る」に通じる意義を感得していたらしい。(聞きかじりで不詳事項)
〇残念ながら、いまだ受動態と可能態の機能を明快に明解に説明する者なし。
〇また、文語体の受動、使役:
・受動接辞:aru/ある:動作結果が:ある、在る、有る。
・使役接辞:asu/あす:他律動作を:さす。
つまり、これも原形末尾「r/s交替」により、接辞自体も「ある/あす」が生成されたのでしょう。
〇歴史的な日本語文法の論理なのでしょう。(類推事項)


2016/04/05

日本語文法の論理5

2016/04/05(火)

★時枝誠記:『国語学原論』1941年:下巻を読み直している。
〇文節を詞・辞の接合で区切り、[詞]辞)入れ子型(風呂敷型)での構文解釈を導き出した時枝文法の真髄は、
・学校文法(橋本文法)での文節区切とほぼ同じ。ただし、使役、受動の態接辞は助動辞でなく接尾語と見なし動詞に接合して詞の部類に入るものとした。
・入れ子型の[詞]辞)の関係は、「主体の主観的表現の辞」が「客体的概念表現の詞」を総括する。
・前の入れ子型:[詞]辞)を次の[詞]辞)が統括すると言うことを繰り返して構文が出来上がる。(順次、風呂敷に包むような形態)
・通常、最後の入れ子型は、陳述や判断、疑問の表現の完結形式をもって統括する。つまり、文は述語入れ子型で全体が統括される。
これが時枝文法の極意です。

〇残念ながら現代ではその影響力が薄れてきたのか。
・言語の存在条件を見据えた視点を見習って、思考実験してみたい。

★[詞]辞)入れ子型:簡易表記法
・最初の[①詞]①辞)入れ子型だけを(左[付き)として、つぎからは、②詞]②辞)③詞]③辞)と連結して簡易的に記載することとする。
【例】[源さん]が/は)饅頭]が)こわい]φ。)
・[源さん]にとって)饅頭]が)こわい]φ。)
・[源さん]が)饅頭]に)こわがる/こわかる]φ。)
もちろん、時枝文法でも複主語文に対して、述語の客観概念、主体概念の混在多義性をすでに記述してあり、深く国語の表現性に遡ることだと説く。
(時枝文法では複主語を細分して、主語:源さん、と対象語:饅頭、と識別した)
(一方、山口明穂の研究のように、「が格」など「辞」として同一形態で複主語を表現するなら、「が格」共通の意味・呼び名があるはずだという視点にも一理ある。進展することを期待する)

★時枝文法の真骨頂:
・[詞]辞)では辞が詞を総括し、次段の[詞]辞)が前段入れ子を総括する。最後の[詞]辞)が表現の完結を果す述語形式を持ち、全体を一文に統合(統括)し、意味を完結させる。
・入れ子型が次々に総括していくので、最後は構文全体を述語入子型が統括する。逆に言えば、主語や補語のどれかが抜けていても構文が出来上がると言う日本語の特徴を見抜いた文法なのだろう。
・「入れ子型が順次総括する」とは難解だが、無理なく自然につながり行くように配置すると考えれば、「実体とその属性を記述すると言う定義で構文をつくる」と考えるよりも、はるかに気楽に文章の読み書きができそうだ。

★時枝文法で構文解釈練習:
【例】言葉の場面が重要:省略文でなく、これが普通の会話文です。
・[彼]は)学生]です。)
・[ぼく]は)うなぎ]φ=に)φ=する]φ)φ=の]だ。)
(「ぼくはうなぎだ。」:会話場面は、ウナギ屋での注文の段)
・[コンニャク]は)太らない]φ)φ=食べ物]ですよ。)
(「コンニャクは太らない。」:会話場面は、たらふく食べた後の段)
【例】入子型の総括順が重要:連体修飾が優先:
・[女]は)なぐられた]φ)男]に)復讐し]た。)
 [なぐった]φ)男]が)(被害者の)女]に)復讐され]た。)
・[犬]が)きらい]な)猫]なら、)犬]には)近づかない]よ。)
・[太郎]は)明日]、)大阪]に)行く]φ)予定]φ=が)φ=ある]φ)φ=の]だ。)
・[太郎]は)予定]が)明日]、)大阪]に)行く]だ。)
(連体修飾の順次総括機能を捨ててまで、人魚構文:「太郎は明日大阪に行く予定だ=太郎は予定だ?」と見立てる必要はない。簡略化すると「うなぎ文」と同じ典型的文型に見えるだけです)
・[警官]が)必死]で)逃げる]φ)泥棒]を)追いかけ]る。)
・[警官]は)泥棒]が)必死]で)逃げる]φ)の]を)追いかけ]る。)
・[必死]で)逃げる]φ)泥棒]を)警官]が)追いかけ]る。)
(関係句や修飾句を持つ長めの補語を単一構文に組み込むと、意味が紛れやすくなる。工夫が必要です)
【例】態動詞は創造力・想像力を刺激する:
・[弟]が)祖父]の)おかげ]で)父]から)大学]に)行かさせられ]る。)
・[祖父]なら)父]に)弟]を)大学]に)行かさせられ]る。)
・[立たされる]と、)立たせられる]とでは、)どちら]を)普段]、)使われ]ますか。)
・[私]は)日本語]が)話され]ます。)[これ]で)話せる:可能]を)意味代行した]φ)時代]も)あり]ました。)
 [同じ造語原理]で)派生する]φ)見れる、来れる、着れる、食べれる、言える、考えれる]なども)可能動詞、可能態]として)平等]に)統一的文法]で)あつかう]φ)時代]の)到来]を)推進し]たいですね。)

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