日本語文法の論理5
2016/04/05(火)
★時枝誠記:『国語学原論』1941年:下巻を読み直している。
〇文節を詞・辞の接合で区切り、[詞]辞)入れ子型(風呂敷型)での構文解釈を導き出した時枝文法の真髄は、
・学校文法(橋本文法)での文節区切とほぼ同じ。ただし、使役、受動の態接辞は助動辞でなく接尾語と見なし動詞に接合して詞の部類に入るものとした。
・入れ子型の[詞]辞)の関係は、「主体の主観的表現の辞」が「客体的概念表現の詞」を総括する。
・前の入れ子型:[詞]辞)を次の[詞]辞)が統括すると言うことを繰り返して構文が出来上がる。(順次、風呂敷に包むような形態)
・通常、最後の入れ子型は、陳述や判断、疑問の表現の完結形式をもって統括する。つまり、文は述語入れ子型で全体が統括される。
これが時枝文法の極意です。
〇残念ながら現代ではその影響力が薄れてきたのか。
・言語の存在条件を見据えた視点を見習って、思考実験してみたい。
★[詞]辞)入れ子型:簡易表記法
・最初の[①詞]①辞)入れ子型だけを(左[付き)として、つぎからは、②詞]②辞)③詞]③辞)と連結して簡易的に記載することとする。
【例】[源さん]が/は)饅頭]が)こわい]φ。)
・[源さん]にとって)饅頭]が)こわい]φ。)
・[源さん]が)饅頭]に)こわがる/こわかる]φ。)
もちろん、時枝文法でも複主語文に対して、述語の客観概念、主体概念の混在多義性をすでに記述してあり、深く国語の表現性に遡ることだと説く。
(時枝文法では複主語を細分して、主語:源さん、と対象語:饅頭、と識別した)
(一方、山口明穂の研究のように、「が格」など「辞」として同一形態で複主語を表現するなら、「が格」共通の意味・呼び名があるはずだという視点にも一理ある。進展することを期待する)
★時枝文法の真骨頂:
・[詞]辞)では辞が詞を総括し、次段の[詞]辞)が前段入れ子を総括する。最後の[詞]辞)が表現の完結を果す述語形式を持ち、全体を一文に統合(統括)し、意味を完結させる。
・入れ子型が次々に総括していくので、最後は構文全体を述語入子型が統括する。逆に言えば、主語や補語のどれかが抜けていても構文が出来上がると言う日本語の特徴を見抜いた文法なのだろう。
・「入れ子型が順次総括する」とは難解だが、無理なく自然につながり行くように配置すると考えれば、「実体とその属性を記述すると言う定義で構文をつくる」と考えるよりも、はるかに気楽に文章の読み書きができそうだ。
★時枝文法で構文解釈練習:
【例】言葉の場面が重要:省略文でなく、これが普通の会話文です。
・[彼]は)学生]です。)
・[ぼく]は)うなぎ]φ=に)φ=する]φ)φ=の]だ。)
(「ぼくはうなぎだ。」:会話場面は、ウナギ屋での注文の段)
・[コンニャク]は)太らない]φ)φ=食べ物]ですよ。)
(「コンニャクは太らない。」:会話場面は、たらふく食べた後の段)
【例】入子型の総括順が重要:連体修飾が優先:
・[女]は)なぐられた]φ)男]に)復讐し]た。)
[なぐった]φ)男]が)(被害者の)女]に)復讐され]た。)
・[犬]が)きらい]な)猫]なら、)犬]には)近づかない]よ。)
・[太郎]は)明日]、)大阪]に)行く]φ)予定]φ=が)φ=ある]φ)φ=の]だ。)
・[太郎]は)予定]が)明日]、)大阪]に)行く]だ。)
(連体修飾の順次総括機能を捨ててまで、人魚構文:「太郎は明日大阪に行く予定だ=太郎は予定だ?」と見立てる必要はない。簡略化すると「うなぎ文」と同じ典型的文型に見えるだけです)
・[警官]が)必死]で)逃げる]φ)泥棒]を)追いかけ]る。)
・[警官]は)泥棒]が)必死]で)逃げる]φ)の]を)追いかけ]る。)
・[必死]で)逃げる]φ)泥棒]を)警官]が)追いかけ]る。)
(関係句や修飾句を持つ長めの補語を単一構文に組み込むと、意味が紛れやすくなる。工夫が必要です)
【例】態動詞は創造力・想像力を刺激する:
・[弟]が)祖父]の)おかげ]で)父]から)大学]に)行かさせられ]る。)
・[祖父]なら)父]に)弟]を)大学]に)行かさせられ]る。)
・[立たされる]と、)立たせられる]とでは、)どちら]を)普段]、)使われ]ますか。)
・[私]は)日本語]が)話され]ます。)[これ]で)話せる:可能]を)意味代行した]φ)時代]も)あり]ました。)
[同じ造語原理]で)派生する]φ)見れる、来れる、着れる、食べれる、言える、考えれる]なども)可能動詞、可能態]として)平等]に)統一的文法]で)あつかう]φ)時代]の)到来]を)推進し]たいですね。)
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