日本語文法の論理9
2016/05/02(月)
日本語の動詞を考察する道具として、思考実験では「態の双対環」図解を提案しました。
★考察の核心は、「動詞は受動・自動・他動・使役と直線状に並ぶ」と言う仮説に反して、
「すべての動詞が受動になる日本語の特徴を考慮すると2本線に並ぶと考えるべきだ」とする立場からはじまった。
だから、有対の自他交替動詞の仕組みと受動態の対応関係、無対動詞と態の関係などを切り離さずに動詞全体の関連を考察してきた。
その結果、確信したことは、自他交替の機能接辞と態の機能接辞は形態も機能も共通するものがある、また、動詞と機能接辞の接続方法は、「動詞原形語末子音までの形態」に接辞がつながるのだということ。(動詞活用の未然形につなぐのは全くの間違いです)
<図参照>
【態の接辞】
念のために態の接辞を書き出すと、
可能態接辞:eru、
結果態接辞:aru(文語体受動接辞)、
受動態接辞:areru(結果+可能の合成接辞)、
強制態接辞:asu(文語体使役接辞)、
使役態接辞:aseru(強制+可能の合成接辞)、
です。
【動詞語尾の「る」と「す」の法則】
★日本語の動詞原形で末尾が「る」であるものは、自律動詞が多く、
(特に母音語幹動詞では原形語尾は「る」です)
・末尾「す」である動詞は、他律動詞:他を律する動作動詞や他動詞が多い。
・考えr・aru、考えr・areru、が自律動詞であり、
これを強制系へ態交替させると、
・考えs・asu、考えs・aseru、能動系の語末「r」と接辞「r」が
両方とも「s」に交替するのです。
つまり、自律的に行う動作を全体そっくり他者にさせるという表現が使役系の豪快無比なるところです。
★自分で「考えr・aru、考えr・areru」ことだから、
他者にも「考えs・asu、考えs・aseru」ことができる、という論理なのだろう。
・子音語幹の動詞:「読m・aru、読m・areru」では、態接辞だけが使役交替して、
「読m・asu、読m・aseru」となるので、普通のことですが、、、
【aru/asuもr/s交替の法則による】
★結果態と強制態:aru→asu、受動態と使役態:areru→aseru、「態接辞のr/s交替」です。これは大胆な仮説を提起していますが、日本語文法の学問書でも「る/す交替」については、自他交替の例として記述するところです。「態の双対環」で態接辞を考察していると、態接辞自体も「r/s交替」で生まれたように推測できます。
それほど、自他交替と態の交替は同じ法則に従っていると感じています。
また、日本語では自動詞でも受動態が発達しているのは、このような態の交替、使役・受動交替が円滑にできる構文法則・構造を生み出したからなのかもしれない。
★態の接辞を、(r/s)aru、(r/s)asu、(r/s)eruとして扱うなら、
旧来の学校文法方式を踏襲することになってしまいます。利点より弊害が残ります。
また、次項の法則にも対処できるように、ともかく法則を絞り込まないほうがよい。
【動詞語尾の「k・asu」の法則】
・蒸す:自他:自律動作と他を律する動作を区別して、
→蒸さす:他者に蒸させる、
→蒸らす:自分が自律動作で蒸す。
・寝る:自:他者に対する寝させ方:
→寝さす:他者自身の自律動作で寝せる、
→寝かす:寝k・asu=他者の意向を忖度せずに寝せる。(赤ん坊を寝かす)
・だます:他:だm・asuではないのだが。
→だまk・asu:他者の意向を忖度せず「だます」、
→だまくらk・asu:他者の意向を忖度せず「だます」。
(被害にあって「だまされた」より「だまかされた」と言うほうが心の痛手が少ない?)
・はぐる・はぐらす→はぐらk・asu:他者の意向を忖度せず「言い紛らす、ごまk・asu」。
・笑う:自他:
→笑わす:他者の自律動作として「笑わす」、
→笑k・asu:他者の意向に忖度せず「笑わす」ように気張る。
★k・asuの意味を仮説的に推測した。これが100%正しくないとしても、
・「r」:自律動作、「s」:他律(他者の自律動作)動作をしっかりと意識して、意向のあるなしを忖度をして強制・使役態を使いこなしているのでしょうね。
・態が動詞活用でなく、態動詞として造語するものだから、「~k・asu動詞」が比較的簡単に生まれて、試されて、定着するか、しないか短期間で命運が決るのかもしれない。
日本語、日本人の論理としては、自律か他を律する動作か忖度なしか、そういう心遣いのもとに言語運用しているのだと自覚していたいですね。
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