日本語文法:文化庁「国語に関する世論調査」を読む(2)
2016/11/02(水)
前回の日本語文法:「ら抜き言葉」は「ar抜き:結果抜き可能」、で文化庁「国語に関する世論調査」
の結果を読んで「態文法」に関わる「ら抜き」について思考実験を記述しました。
それを(1)回目とすると、今回が「世論調査の結果」を読むの(2)回目です。
「態文法」に関わる「さ入れ言葉」について思考実験を記述します。
>資料を抜粋引用、省略的に再録します。
結果数値:各年代を含めた回答の全体平均で示す。(平成28年2月~3月調査)
(6)明日は:休ませていただきます(79.6%)/休まさせていただきます(16.5%)
(7)今日はこれで:帰らせてください(80.3%)/帰らさせてください(16.8%)
(8)担当のものを:伺わせます(75.5%)/伺わさせます(20.7%)
(9)絵を:見せてください(59.6%)/見させてください(32.7%)
(10)私が:読ませていただきます(71.9%)/読まさせていただきます(23.2%)
〇使役形態の設問で(9)番以外は子音語幹の動詞で「さ入れ言葉」になりやすい
ので注意が必要です。結果では70~80%が正しく一段使役の形態で使用してい
る。
〇(9)見せる:見出語になる動詞/見させる:見るの使役態(見出語にならない)
どちらも文法的に問題ない表現だとしている。
<引用おわり。
さて、この5問の調査結果を読んでの思考実験をしてみたい。
文化庁の国語文法感覚が学校文法に依拠しているので、思考実験は対立する。
・「さ入れ」で注意すべきは:帰r・as・aseru/伺w・as・aseruのように、
二段使役(強制+使役)と解釈されることです。
★未然形に「させる」を接続する文法は間違いなのです。
(未然形・帰ら+させる:帰ra・saseru=学校文法の間違いです。
未然形・変え+させる:変え・saseru=学校文法の間違いです。
正しくは語幹・帰r・[ ]+aseru=帰r・aseru=新「態文法」です。
正しくは語幹・変え・[s]+aseru=変えs・aseru=新「態文法」です)
★使役態の接辞は子音母音両語幹に対して「あせる」なのです。
語幹側に付加した[ ]、[s]は、[挿入音素]であり、態接辞と接続するときに
音韻調和させるための音素です。
(すべての態の接続に適用できる法則です。受動態:変え・[r]+areru、
可能態:変え・[r]+eru、など)
・二段使役を正しく使う状況とは、
例:母親は「先生、今日は子どもが高熱なので休まさせてください」と電話した。
例:教師は保護者に風邪の学童を帰らさせるよう連絡した。
(両例とも教師が親に対して動作の許可や要請を出して、学童を行動させる。
動作の流れがA→B→Cのように3人に関わり、仲介:Bが存在する状況の時に
なりたちます)
最後に(9)問の思考実験をしてみます。
(初出版した『日本語動詞 態文法を再生する』での思考実験が初出ですが、考察
が少しでも進歩するように期待して)
〇動詞の自他交替形式の一つに「せる接辞:seru」がある。
(一人動作でなく、二人動作になります)
・見る:見[r]・u/(見す)→見せる:見[ ]・seru、
・着る:着[r]・u/着[ ]・seru、乗る:乗[r]・u/乗[ ]・seru、
この「せる」は[s]eruならば、汎用性もあるでしょうが、独特の接辞のようです。
見せる/見させるを比較しながら考察する。
例:絵を見せる:自己の行動で相手が「見る動作」を為すようにする。
(収納箱から取り出して絵を見せる、とか付随の準備をこなす。解説するとか)
例:絵を見させる:相手が自律的に「見る動作」をすることを許容する。
(見る動作に限定して相手が自律的に動作することを強要する)
例:絵を見さす:相手に自律的な「見る動作」を強制する。
(実行可能か否かの判断のもとで、見る動作を相手の自律行動でさせる)
〇態接辞の内部には、「s:律他動作」、「r:自律動作」の深層意義が潜在すると理解
します。つまり、
・共動:見[r→s]eru:[r→s]=他を律する、eru=自律(為す)→自他共動
・使役:見[r→s]as・eru:[r→s]as=強制、eru=自律(為す)→使役・介助
・強制:見[r→s]asu:=強制、強制的に他を律して動作させる。(自律動作なし)
のように、強制・律他の強さが段階的に強くなります。
前回の「ar抜き:結果抜き」で、「ある:ar:結果」、「える:er:可能」、の意味を
説明できたし、今回は少ないながらも「あす:as:強制」の意味を記述しました。
この3つは、動詞単語のなかにも組み込まれており、態動詞として基本機能にな
っています。これを十分に理解することが日本語文法を判りやすくします。
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