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2016年11月

2016/11/29

態文法:態接辞「ある:結果」の意味(4続)

2016/11/29(火)

4.態接辞「ある:結果」の意味:つづき

③本題の結果態接辞:「ある:aru」について
 結果態接辞:「ある」が「結果」態と名付けられる必然性を納得できたでしょ
うか。(「態の双対環」文法での名称ですが)
〇結果態「ある」の原意は単語「ある」にあるから、国語辞典で調べよう。
・ある→有る、所有する:動作(結果)を持つ=結果可能、経験・実績可能の意
・ある→行われる、起こる:事象がおこる=現象、自発、懐旧の念がわくの類
・ある→在る、存在する:動作(結果)が在る=動作が及ぶ・受身、受動の意
・ある→(漢語)動詞について敬意を表す:動作(結果)を表敬発話するの意
・ある→(である)肯定的判断を表す、(複合辞として断定、措定する)
・ある→(てある)動作完了して結果がある、(複合辞として結果相を表す)
このように、「ある」が持っている多面的な意味が動詞本体の動作と合成さ
れて、結果態として表現される。

〇動作結果(動作遂行)があると表現する形態なので、自動詞、他動詞、強制
 動詞、使役動詞に対してもそれぞれの「結果態」を派生することができる。
〇文語体では「結果態」が「受動」態を意味していたので、古来より受動表現
 は自他動詞の区別なしに使われたのだろう。
・多面的な表現:受身、結果可能、自発、尊敬の表現に使われていた。
〇口語体、現代語では受動態接辞:「ある+える=あれる:areru」を付加して
 受動態を派生する。
・受動態の成り立ちが西欧語とは異なるが、学校文法では文語体の受動接辞
 を「る」、「らる」、口語体の受動接辞「れる」、「られる」という形態でしか説
 明していない。これでは、「ある」、「あれる」が見えないし、意味にもたどり
 着けない。
〇接辞「ある」が把握できれば、素人流儀でも結果態の意味構造が比較できる。
・「動作+有る」→「動作+have」→「have+動作過去分詞」:英語の動作完了
 形に近似するが、結果態は時制が過去・現在・未来に通じ、意味も結果、経
 験、実績、習慣があることを表現する。
・「動作+在る」→「動作+be」→「be+動作過去分詞」:英語の受身、受動形に
 近似するが、結果態は時制が過去・現在・未来に通じ、意味も広く、事象が
 おこることや、懐古の念がわくとか、動作を受ける人が主格になれば、受身
 形を表現する。

〇当「態の双対環」文法では、
・自動詞、他動詞を一括りにして「自律動詞」と位置付けます。
 自律的に自分が行う動作動詞のこと。
・強制動詞、使役動詞に対しては「律他動詞」と位置づけます。
 他者に対して、他者自身が自律動作を行なうように強制すること。
 ただし、使役動詞には、他者の自律動作を介助する、手を貸すことも含まれ
 る。
という大きな枠で解釈します。
・自律動詞、律他動詞の別に関係なく、どちらにも動作の結果はありますか
 ら、結果態接辞「ある」を接続させて受動態の元を派生できます。
 これが、日本語の受動態の成り立ちです。どんな動作動詞でも動作結果(動
 作の遂行)があることを言明する手段が結果態です。

★「態の双対環」の全体を概観するため、記号を用いた文字列で表記してみ
 よう。
(動詞語幹:D、挿入音素[][r][s][x]、態接辞・u/eru/aru/asuなど)

〇自律動詞の態動詞集団を能動系「態の双対環」でまとめます。
 能動系:D[r]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態
例:書k[]u/書k[]eru/書k[]aru/書k[]areru、(子音語幹動詞)
  考え[r]u/考え[r]eru/考え[r]aru/考え[r]areru、(母音語幹)
〇強制動詞の態動詞集団を強制系「態の双対環」でまとめます。
 強制系:D[s]as[]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態
例:書k[]as[]u/書k[]as[]eru/書k[]as[]aru/書k[]as[]areru、
  考え[s]as[]u/考え[s]as[]eru/考え[s]as[]aru/考え[s]as[]areru、
〇使役動詞の態動詞集団を使役系「態の双対環」でまとめます。
 使役系:D[s]ase[r]:+u原形態/+eru可能態/+aru結果態/+areru受動態
例:書k[]ase[r]u/書k[]ase[r]eru/書k[]ase[r]aru/書k[]ase[r]areru、
  考え[s]ase[r]u/考え[s]ase[r]eru/考え[s]ase[r]aru/考え[s]ase[r]areru、

〇挿入音素[r][s]は、r:自律動作、s:律他動作に対応した意味を表します。
〇律他動詞は原動詞から律他派生したあと二段目の接続ですから、二段語幹
 の表記法になります。
〇態接辞が共通して各態系に使われ、areru/aseruが受動態、使役態へ合
 成接辞として使われる。

2016/11/24

態文法:態接辞「ある:結果」の意味(4)

2016/11/24(木)

4.態接辞「ある:結果」の意味

(1)結果態接辞「ある:aru」の意味
 態接辞-aruは、存在を意味する唯一の単語「ある」と同根であり、文語体で
 は「書かる、読まる、疑わる」など「ある」接辞がついて、受動態とした。
 現代語では、「ある+える=あれる」接辞をつけて、「書かれる、読まれる、
 疑われる」の形態にして受動態とする。

〇「態の双対環」文法では、「ある」接辞を結果態接辞と命名して、敬意を持っ
 て活用すべきだと提唱する。
・理由を記すので、少し感覚を澄まして読んでください。
(動詞「ある」と態の接尾辞「ある」と同等扱いします。どうぞ異論を考えなが
ら読んでください)
①存在を表す動詞は「ある」だけですから、「ある」接辞も「存在する状態」と
 いう深層概念を呼び起します。(これに気付かない方が多いと思います)
〇反証として動作動詞:「いる、おる」で結果態が派生できるか試そう。
 *「書きる、読みる、疑ひる、書こる、読もる、疑ほる」はダメでしょう。
  これでは「書く、読む、疑う」の動作表現のままで、結果表現にならない。
  国語辞典では「いる」の意味に動作進行と動作結果の継続の2つを記載し
  てあるが、進行中の継続を結果の継続と混同したもの。
・つまり、動作進行は「いる」で表現し、動作結果は「ある」で表現すべきとこ
 ろを国語辞典は混同した記述です。(多数の文法書も混同しています)

②結果相:「~てある」、進行相:「~ている」は自動詞、他動詞に共通する。
 (大多数の文法書に対向して反証するために記述してみます)
・自:「歩いてある、届いてある、走ってある、開いてある、閉ってある」など
・他:「書いてある、読んである、教えてある、開けてある、倒してある」など
 どちらも動作結果相:動作済み状態が一定時間経過しても「結果がある」こ
 とを表現する。作為動作である、ないに関係なく「結果相」の表現です。
・自:「歩いている、届いている、走っている、開いている、閉っている」など
・他:「書いている、読んでいる、教えている、開けている、倒している」など
 どちらも動作進行相:動作動詞に「いる」動作がつながって進行中を表現す
 る。自動詞の進行相が動作継続相(結果相的)も含むと仮定しても、本来の
 動作進行相が意味の中心をなすわけです。
・例:「立つ」が瞬間動作で「立っている」を動作継続相と見なすことに慣れて
 いる方でも、「立っている」が動作結果相と感じるのでしょうか。

〇「書いてある/書いている」、「歩いてある/歩いている」の結果相/進行相
 の意味感覚差は、他動詞、自動詞で何も違いはないはずです。
 自他の差で進行→結果の差異が起きるはずはなく、瞬間動詞か継続動詞か
 の差で動作感覚に違いがあるかもしれません。しかし、結果状態、体験状態
 を表現するには、「~てある」でしか明言できません。
 (「考えてある、調べてある」と返答する場面はあっても、「予定は立って
 ある」、「もう歩いてある」などを使う場面が少ないだけでしょう)
 (例:準備メモに従って大量の物品を購入する場合、購入したか「してある
 、してある、してある、してある、」というように目視確認をする。
 「している、している、している、している、」ではないはずだ)
〇他動詞:「書いてある」が意図する動作の結果を表す結果相であるし、
・自動詞:「歩いてある」も予定行動の実行結果を言明する結果相である。
 自動詞と他動詞とで根源的な意味の差異がないことを感得しておきたい。
 「自分の行動を実行した」と自動詞で言い立てる必要が少ないだけです。

・今読んでいる清瀬義三郎則府『日本語文法新論-派生文法序説』:桜楓社:
 1989年でも、残念なことに旧来の文法と同様な解釈を記述する。
 ・「~ている」:他動詞では進行体、(いるは存在の意義を失い、動作の進行
  中を表す):という。しかし、自動詞に対しては、
 ・「~ている」:自動詞で状態体。(動作作用の結果が保たれている状態)→
  自動詞では進行体を表さず状態体だと記す。
 ・「~てある」:他動詞で状態体。(作為的に動作を遂行した結果の状態)
 ・「~てある」:自動詞については言及なし。(全く眼中にないようだ)
*清瀬本が指摘する「状態体」の枠付が考察を誤らせた原因だと思う。
 「動作結果が保たれる」状態だと把握したなら、「結果相:結果が存在する」
 と見立てるべきであった。「状態体」の命名は的外れである。
・「~てある」を「結果相」と命名しておけば、自他動詞に通用するし、自動詞
 の「~ている」は進行相と継続相を兼ねているとの認識になったはずでし
 ょう。(自動詞の「ている」を進行体としてないのはなぜか。奇異な謎です)

・多数の文法学者も自動詞の「歩いてある、届いてある、立ってある」などを
 容認しないかもしれません。唯一「態の双対環」文法では、結果相と認めて
 自他動詞での差別はしないように提起します。
★本来、「いる」は動作動詞であり、「ある時点で存在を保つが、何時か居なく
 なる」ことを内包する。同様に「~ている」も進行の終り目が内包されている。
・「安定な状態にいる」は仮の安定状態しか意味しません。
・「安定な状態にある」は特定時間内の安定状態を肯定する意味です。
・否定の場合:「歩いてない」は「結果の存在:あるの否定」を思わせる。
 「歩いていない」は「動作の否定」です。
★「ある」は「ある時間点、時空間での存在が真実であると肯定する」こと。
 存在を表現できるのは「ある」しかありません。
〇もう一度、②の頭から読み直すと、理解が深まります。

③本題の結果態接辞:「ある:aru」について
(次回へつづく)

★「ある」についての追記:
 「ある」は「存在を真実であると肯定する」機能があり、動詞以外にも付加さ
 れて、「存在を肯定する」と陳述する。また、品詞を用言化します。
・形容詞に付加:楽しk・aru/楽しk・atta/楽しk・aroo、
・名詞(繋辞、断定辞)に付加:である←で・aru/で・atta/で・aroo、
 /で・arimasu→です、
・「である」をさらに簡略化して:だ←d・a[ru]/d・atta/d・aroo、
 のように用言化目的に使われ、形容詞文、名詞文・形状名詞文などへの派生
 動詞を生み出した。

2016/11/20

態文法:態接辞の意味を理解する(3)

2016/11/20(日)

3.膠着語での接辞連結

 日本語研究分野での資料、書籍を入手した。
①清瀬義三郎則府:『連結子音と連結母音と~日本語動詞無活用論~』:
 1969年(PDF入手可能)、
②清瀬義三郎則府:『日本語文法新論-派生文法序説-』:桜楓社:
 1989年2月、を走り読みしたところです。
>清瀬本に曰く、
・日本語は膠着語であり、用言が活用すると解釈するのは間違いだ。
 (体言、用言の)語幹に接尾辞が順次連結して派生する言語形式だ。
例:書かせられたがりますまい:従来文法では動詞、助動詞の活用という。
派生文法:kak-[*s]ase-[r]are-[*i]tagar-[i]mas-[u]mai
 ([連結子音][連結母音]を接辞側に付す。[*x]は無音化の意要約)
・語幹+[連結音素]接辞語幹+[連結音素]接辞語幹+[連結音素]接辞語幹
 +[連結音素]接辞語幹+[連結音素]接辞終止という膠着形式なのだ。
<要約おわり。(「連結子音」、「連結母音」を簡略して「連結音素」と要約)

〇「態の双対環」方式なら:([挿入音素]、[*x:無音素]を語幹側に付す)
・上例:kak[*s]-ase[r]-are[*i]-tagar[i]-mas[*r]u-mai
 と表記するのも可能か。(mas[*r]uは「ます」の終止形)
〇清瀬派生文法は、態だけではなく日本語の全品詞に対する新文法が含まれ
 ている。膠着語の一貫性を生かした「構文解釈、文節の形態素解析」などが
 容易になるから、自動翻訳などに応用されている。
〇清瀬派生文法の素晴らしさを実感する人が今現在どれほどいるのだろうか。
 教育現場で使えるように体系化(教材作成)が必要なのだが、継続した研究
 が広がっているのだろうか。

 当ブログでは、動詞から態動詞へと派生する段階に注目してきましたが、
上例に対して、今までなら精確さを求めて、
・書k[]ase[r]are[]tagar[i]mas[]u・mai
・書k・ase[r]are・tagar[i]masu[]mai
のどちらかで記述するだろう。
例文のなかには、態派生2つと連用形派生2つ、終止形と終結派生という、種
類の違う接辞連結が連続しています。
〇連結が、語幹[挿入音素]接辞語幹[挿入音素]接辞語幹と繰り返し、最後は
 終結接辞で完結する。この例では終止形構文のあとに否定推量「mai」接辞
 で終結するという副文連結構造になっている。
・派生文法でも説明がむずかしいのは、文法的な多用な機能が、語幹[挿入音
 素]接辞の形態に内包されているのだと印象づけることでしょうね。
 従来文法より優れている点が「同一連結法則」で説明できる点ですから。
・清瀬文法を参考にすれば、[連結音素]→[挿入音素]と呼び直すとか、それ
 を接辞側につけるか/語幹側につけるかの違いがあっても、すべての品詞
 の膠着連結が「同一連結法則」によるのだと得心できて本当に心強い。

 今回は横道にそれました。ここまでにします。

2016/11/15

態文法:態接辞の意味を理解する(2)

2016/11/15(火)

2.挿入音素と態接辞

 日本語研究分野での態接辞の形態把握の仕方について、概観しておこう。
当ブログの「態の双対環」方式では、『日本語動詞 態文法を再生する』に記述
するように、自他交替接辞の中から汎用的に再利用できる「態接辞」を選び
出して、日常的に使われる全態接辞を「双対環」にして示した。
(1)能動系「双対環」:
  「う:u/える:eru/ある:aru/あれる:areru」
(2)強制系「双対環」:
  「あす:asu/あせる:aseru/あさる:asaru/あされる:asareru」
(3)使役系「双対環」:
 「あせる:aseru/あせれる:asereru/あせらる:aseraru/あせられる:aserareru」

 実際に態接辞を「える」、「ある」、「あす」、「あれる」、「あせる」などの表記で
目にするのが、はじめての方も多いでしょう。
(ローマ字つづり解析で、動詞語幹と態接辞が正確に明確に分離できる)

〇学校文法では、「あ」のつく接辞の「あ」を未然形のために語幹側に引きは
 がして、残りの「る」、「す」、「れる」、「せる」を接辞だと説明します。
 これでは、接辞がズタズタで意味を考えることもできません。
 また、母音語幹動詞に対しては語幹が未然形になるので、「r」、「s」の付け
 所を接辞側にして「らる」、「さす」、「られる」、「させる」が接辞だと説明し
 ます。こうなれば少しは分かりやすくなりますが、「さ入れ」や「れ足す」の
 誘因にもなります。
・態接辞は自他交替機能接辞の再利用であり、動詞活用形の未然形とつなぐ
 のではなく、態動詞を生成する法則により動詞と接続する。

<今、「接続の法則」を再考察するうちに、再発見?か、いや新発見をした>
 「ひらがなつづり」での音素解析には無理なことで、やはり「ローマ字つづ
 り」での音素解析が必要です。
〇外国人言語学者が日本語解析を「アルファベット解析」して、
例:kak‐areru、yom‐areru、mi‐rareru、tabe‐rareru、の形態から、
 ‐(r)areruを取り上げている。(r)は語幹が母音のとき発音し、子音のとき
 無視という法則(「接尾辞先行子音削除」という名称らしい)を提唱した。
〇大きく進展したのは、日本人学者の清瀬義三郎則府が1969年『連結子音
 と連結母音と~日本語動詞無活用論~』(PDF入手可能)を講演していて、
 後年、2013年12月『日本語文法体系新論―派生文法の原理と動詞体系の
 歴史』が刊行されています。
・この学術書の名前を知ったのは、新書版『日本語学を斬る』国広哲弥:研究
 社:2015年1月30日初版のなかに小さな引用が載っていました。
 (その時に原典や関連資料を調べるべきだったが、気が回らなかった)
 今、ネット検索してPDF資料を見ています。
〇清瀬PDFの内容は、動詞語幹と接辞の「連結」に「連結子音」、「連結母音」
 が必要であり、動詞活用、形容詞活用などと言っても「語幹」と「接辞」が変
 形するのではなく固定であるが、順次連結されることで文法的役割を果し
 ているだけだ。
<「連結子音、連結母音」が万能関節の役割なのだと思える。表記の仕方が連
 結子音/連結母音だが、「挿入音素」と一括りにしていないだけで、同じで
 ある>
・当ブログで態動詞生成の3項方程式=【動詞語幹+[挿入音素]】+態接辞を
 定義したうえで、さらに【態動詞語幹+[挿入音素]】+活用接辞・助動詞接辞
 を見込んでいるから、態生成、活用接辞、助動詞接辞を追加できる、という
 構想と合致します。(助動詞の「多段連結」を具体的に思考提示しなかったが)

<立派な先達がいらっしゃるのだ。
『日本語文法新論-派生文法序説』清瀬義三郎則府:桜楓社:1989年を読もう。
(この派生文法では、動詞は活用するのではなく、語幹に「連結子音/連結母
音」を介して機能接辞が順次つながる、つまり語幹から派生することで述語
文節ができると解釈する。すばらしい考察が半世紀まえにあったのだ)>

〇態生成での[挿入音素]は、態接辞が母音始まりなので、
・子音語幹・[]+態接辞、(能動、強制・使役態接辞も同じ)
・母音語幹・[r]+能動態接辞、母音語幹・[s]+強制・使役態接辞、
〇活用接辞、助動詞接辞の接続での[挿入音素]は、接辞が子音始まりなので
・子音語幹・[a]+nai接辞(打消し)、子音語幹・[i]+masu接辞(丁寧体)、
・母音語幹・[]+nai接辞(打消し)、母音語幹・[]+masu接辞(丁寧体)、
〇[挿入音素]は単一音素で構成し、原則的に語幹側に付属させて扱う。
 挿入音素を接辞から切り離して考察すると、接辞形態が常に1つの形態で
 把握できるので、学習しやすいし、言い間違いがなくなる。
・日本語は膠着語であり、語幹[挿入音素]接辞語幹[挿入音素]接辞語幹[挿
 入音素]接辞(終結)・・・という連鎖が構文の基本となります。
 だから、接辞として独立した接辞語幹の形態をしっかりと記憶することが
 大切です。(清瀬流派生文法を聞きかじり状態で記述しています)
(つづく)

2016/11/12

態文法:態接辞の意味を理解する(1)

2016/11/12(土)

1.態接辞の由来

 日本語の態接辞の由来は、動詞の自他交替の機能接辞から汎用に使える
いくつかの接辞を再利用したものと思われる。
自他交替とは、動詞に交替接辞を付加して自動詞から他動詞、または他動詞
から自動詞を派生させることです。
自他交替の例を記述すると、
 ①つかむ→つかまる、②上がる→上げる、③立つ→立てる、④取る→取れる、
 ⑤逃げる→逃す、⑥離れる→離す、⑦動く→動かす、⑧生きる→生かす、
などとなり、全体では①から⑫まで分類され、分類ごとの自他交替接辞として
識別されます。(自他の並び方、→方向ともに恣意的で特定の意図はありません)

〇自他交替接辞の中から「態接辞」として汎用的に再利用できるものは、
(1)「える:eru」=②~⑥他動詞変化と自動詞変化の両方あり:可能態接辞
(2)「ある:aru」=①、②自動詞変化の接辞:結果態接辞(文語で受動態に利用)
(3)「あす:asu」=⑤、⑦⑧他動詞変化の接辞:強制態接辞(文語で使役態利用)
以上の3つがある。
 汎用的に使える態接辞という例示を2、3上げてみよう。
例:・呼ぶ→呼べる、呼ばる(+える:呼ばれる)、呼ばす(+える:呼ばせる)
・読む→読める、読まる(+える:読まれる)、読ます(+える:読ませる)
・走る→走れる、走らる(+える:走られる)、走らす(+える:走らせる)
現代の口語文章では、上例のように、どの態にも「+える」とするのを常態
とするから、汎用的態接辞として、
(4)「あれる:areru」=受動態接辞(結果態+可能態)
(5)「あせる:aseru」=使役態接辞(強制態+可能態)
の2つが加わる。多くの学校では(4)受動態、(5)使役態のみに学習の力点が
しぼられているようですが、動詞単語の中には(1)~(3)の接辞が既に組み
込まれており、重要な意味を果しています。
今回は、(1)~(5)の接辞の意味合いの差を感じられるように配慮して順次説明
をしていきます。

 当ブログで提唱する「態の双対環」方式の態文法では、態の接辞(1)~(5)
を全部組み入れた考え方をしています。(接辞で「双対環」を表現すると)
(1)能動系「双対環」:「う:u/える:eru/ある:aru/あれる:areru」
(2)強制系「双対環」:「あす:asu/あせる:aseru/あさる:asaru
   /あされる:asareru」
(3)使役系「双対環」:「あせる:aseru/あせれる:asereru
   /あせらる:aseraru/あせられる:aserareru」
例:呼ぶの一語から派生できるすべての態動詞をこの3種類の「双対環」が
 教えてくれます。(強制可能態=使役態だけが重複する)
・すべての受動態は、呼ばれる/呼ばされる/呼ばせられる。
・すべての可能態は、呼べる/呼ばせる(使役態と同形)/呼ばせれる。
通常は、3×4=12個の態動詞を間違いなく発話しているわけです。

 さて、態接辞の由来を探ってみて分かったことを整理すると、
・動詞の自他交替機能接辞が態機能として再利用されること。
・文語体でも、「ある」、「あす」の自他交替接辞を受動態、使役態接辞に再利
 用していた。
・口語体では、「える」接辞が大活躍して、「える」可能態を創出するほかに、
 「ある」に結合して「あれる」受動態を、「あす」に結合して「あせる」使役態を
 創出しました。
〇佐久間鼎以来の先行研究が、
・「ローマ字つづり解析」で動詞自他交替の音素構造を調べ上げた成果があっ
 て、機能接辞を抽出区分できたのです。
・自他交替では、原動詞が子音語幹であることが多いので、接続の機能接辞
 が「ローマ字つづり解析」なら見つけやすい。
・だから「える」、「ある」、「あす」という母音始まりの接辞構造を発見できた
 のです。

〇「える」、「ある」、「あす」接辞を汎用的に使うためには、動詞・母音語幹と
 の接続方法を明確にする必要があります。
・現代語の事例:(母音語幹に対しては、語幹側に[挿入音素]を付加する)
・上げ[r]える→上げれる、上げ[r]あれる→上げられる、(r:自律動作語尾)
 上げ[r→s]あせる→上げさせる、(r→s交替、s:律他動作・sasuの語頭辞)
・調べ[r]える→調べれる、調べ[r]あれる→調べられる、
 調べ[r→s]あせる→調べさせる、(調べ・させる:二語から一語連結化:r→s交替)
・見[r]える→見れる、見[r]あれる→見られる、(あれる-える=ある残り)
 (見れる、は「ある抜き:結果抜き」の、つまり動作開始時点の可能態です)
 見[r→s]あせる→見させる、(r→s交替、s:律他動作・sasuの語頭辞)
〇子音語幹動詞の場合は、挿入音素が無し、[]を想定して、
・読m[]える→読める、読m[]あれる→読まれる、読m[]あせる→読ませる、
 で表現すれば、統一的に表記できる。
 (態生成は自他交替の仕組と同様の法則で成るものであり、動詞活用の未然形
  接続ではないのです。学校文法の間違いです。:未然形の有無ではなく)
・子音語幹でも母音語幹でも、「える」、「あれる」、「あせる」接辞の形を替えずに
 同一形態で憶えておいて、さっと使えるのです。
・この方式が「態の双対環」で提唱する態文法です。
(つづく)

2016/11/02

日本語文法:文化庁「国語に関する世論調査」を読む(2)

2016/11/02(水)
前回の日本語文法:「ら抜き言葉」は「ar抜き:結果抜き可能」、で文化庁「国語に関する世論調査」
の結果を読んで「態文法」に関わる「ら抜き」について思考実験を記述しました。
それを(1)回目とすると、今回が「世論調査の結果」を読むの(2)回目です。
「態文法」に関わる「さ入れ言葉」について思考実験を記述します。

>資料を抜粋引用、省略的に再録します。
結果数値:各年代を含めた回答の全体平均で示す。(平成28年2月~3月調査)
(6)明日は:休ませていただきます(79.6%)/休まさせていただきます(16.5%)
(7)今日はこれで:帰らせてください(80.3%)/帰らさせてください(16.8%)
(8)担当のものを:伺わせます(75.5%)/伺わさせます(20.7%)
(9)絵を:見せてください(59.6%)/見させてください(32.7%)
(10)私が:読ませていただきます(71.9%)/読まさせていただきます(23.2%)
〇使役形態の設問で(9)番以外は子音語幹の動詞で「さ入れ言葉」になりやすい
 ので注意が必要です。結果では70~80%が正しく一段使役の形態で使用してい
 る。
〇(9)見せる:見出語になる動詞/見させる:見るの使役態(見出語にならない)
 どちらも文法的に問題ない表現だとしている。
<引用おわり。

さて、この5問の調査結果を読んでの思考実験をしてみたい。
文化庁の国語文法感覚が学校文法に依拠しているので、思考実験は対立する。
・「さ入れ」で注意すべきは:帰r・as・aseru/伺w・as・aseruのように、
二段使役(強制+使役)と解釈されることです。
★未然形に「させる」を接続する文法は間違いなのです。
 (未然形・帰ら+させる:帰ra・saseru=学校文法の間違いです。
 未然形・変え+させる:変え・saseru=学校文法の間違いです。
 正しくは語幹・帰r・[ ]+aseru=帰r・aseru=新「態文法」です。
 正しくは語幹・変え・[s]+aseru=変えs・aseru=新「態文法」です)
★使役態の接辞は子音母音両語幹に対して「あせる」なのです。
 語幹側に付加した[ ]、[s]は、[挿入音素]であり、態接辞と接続するときに
 音韻調和させるための音素です。
 (すべての態の接続に適用できる法則です。受動態:変え・[r]+areru、
 可能態:変え・[r]+eru、など)
・二段使役を正しく使う状況とは、
例:母親は「先生、今日は子どもが高熱なので休まさせてください」と電話した。
例:教師は保護者に風邪の学童を帰らさせるよう連絡した。
(両例とも教師が親に対して動作の許可や要請を出して、学童を行動させる。
動作の流れがA→B→Cのように3人に関わり、仲介:Bが存在する状況の時に
なりたちます)

最後に(9)問の思考実験をしてみます。
(初出版した『日本語動詞 態文法を再生する』での思考実験が初出ですが、考察
が少しでも進歩するように期待して)
〇動詞の自他交替形式の一つに「せる接辞:seru」がある。
 (一人動作でなく、二人動作になります)
・見る:見[r]・u/(見す)→見せる:見[ ]・seru、
・着る:着[r]・u/着[ ]・seru、乗る:乗[r]・u/乗[ ]・seru、
この「せる」は[s]eruならば、汎用性もあるでしょうが、独特の接辞のようです。
見せる/見させるを比較しながら考察する。
例:絵を見せる:自己の行動で相手が「見る動作」を為すようにする。
 (収納箱から取り出して絵を見せる、とか付随の準備をこなす。解説するとか)
例:絵を見させる:相手が自律的に「見る動作」をすることを許容する。
 (見る動作に限定して相手が自律的に動作することを強要する)
例:絵を見さす:相手に自律的な「見る動作」を強制する。
 (実行可能か否かの判断のもとで、見る動作を相手の自律行動でさせる)
〇態接辞の内部には、「s:律他動作」、「r:自律動作」の深層意義が潜在すると理解
 します。つまり、
・共動:見[r→s]eru:[r→s]=他を律する、eru=自律(為す)→自他共動
・使役:見[r→s]as・eru:[r→s]as=強制、eru=自律(為す)→使役・介助
・強制:見[r→s]asu:=強制、強制的に他を律して動作させる。(自律動作なし)
のように、強制・律他の強さが段階的に強くなります。

前回の「ar抜き:結果抜き」で、「ある:ar:結果」、「える:er:可能」、の意味を
説明できたし、今回は少ないながらも「あす:as:強制」の意味を記述しました。
この3つは、動詞単語のなかにも組み込まれており、態動詞として基本機能にな
っています。これを十分に理解することが日本語文法を判りやすくします。

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