態文法:態接辞の意味を理解する(2)
2016/11/15(火)
2.挿入音素と態接辞
日本語研究分野での態接辞の形態把握の仕方について、概観しておこう。
当ブログの「態の双対環」方式では、『日本語動詞 態文法を再生する』に記述
するように、自他交替接辞の中から汎用的に再利用できる「態接辞」を選び
出して、日常的に使われる全態接辞を「双対環」にして示した。
(1)能動系「双対環」:
「う:u/える:eru/ある:aru/あれる:areru」
(2)強制系「双対環」:
「あす:asu/あせる:aseru/あさる:asaru/あされる:asareru」
(3)使役系「双対環」:
「あせる:aseru/あせれる:asereru/あせらる:aseraru/あせられる:aserareru」
実際に態接辞を「える」、「ある」、「あす」、「あれる」、「あせる」などの表記で
目にするのが、はじめての方も多いでしょう。
(ローマ字つづり解析で、動詞語幹と態接辞が正確に明確に分離できる)
〇学校文法では、「あ」のつく接辞の「あ」を未然形のために語幹側に引きは
がして、残りの「る」、「す」、「れる」、「せる」を接辞だと説明します。
これでは、接辞がズタズタで意味を考えることもできません。
また、母音語幹動詞に対しては語幹が未然形になるので、「r」、「s」の付け
所を接辞側にして「らる」、「さす」、「られる」、「させる」が接辞だと説明し
ます。こうなれば少しは分かりやすくなりますが、「さ入れ」や「れ足す」の
誘因にもなります。
・態接辞は自他交替機能接辞の再利用であり、動詞活用形の未然形とつなぐ
のではなく、態動詞を生成する法則により動詞と接続する。
<今、「接続の法則」を再考察するうちに、再発見?か、いや新発見をした>
「ひらがなつづり」での音素解析には無理なことで、やはり「ローマ字つづ
り」での音素解析が必要です。
〇外国人言語学者が日本語解析を「アルファベット解析」して、
例:kak‐areru、yom‐areru、mi‐rareru、tabe‐rareru、の形態から、
‐(r)areruを取り上げている。(r)は語幹が母音のとき発音し、子音のとき
無視という法則(「接尾辞先行子音削除」という名称らしい)を提唱した。
〇大きく進展したのは、日本人学者の清瀬義三郎則府が1969年『連結子音
と連結母音と~日本語動詞無活用論~』(PDF入手可能)を講演していて、
後年、2013年12月『日本語文法体系新論―派生文法の原理と動詞体系の
歴史』が刊行されています。
・この学術書の名前を知ったのは、新書版『日本語学を斬る』国広哲弥:研究
社:2015年1月30日初版のなかに小さな引用が載っていました。
(その時に原典や関連資料を調べるべきだったが、気が回らなかった)
今、ネット検索してPDF資料を見ています。
〇清瀬PDFの内容は、動詞語幹と接辞の「連結」に「連結子音」、「連結母音」
が必要であり、動詞活用、形容詞活用などと言っても「語幹」と「接辞」が変
形するのではなく固定であるが、順次連結されることで文法的役割を果し
ているだけだ。
<「連結子音、連結母音」が万能関節の役割なのだと思える。表記の仕方が連
結子音/連結母音だが、「挿入音素」と一括りにしていないだけで、同じで
ある>
・当ブログで態動詞生成の3項方程式=【動詞語幹+[挿入音素]】+態接辞を
定義したうえで、さらに【態動詞語幹+[挿入音素]】+活用接辞・助動詞接辞
を見込んでいるから、態生成、活用接辞、助動詞接辞を追加できる、という
構想と合致します。(助動詞の「多段連結」を具体的に思考提示しなかったが)
<立派な先達がいらっしゃるのだ。
『日本語文法新論-派生文法序説』清瀬義三郎則府:桜楓社:1989年を読もう。
(この派生文法では、動詞は活用するのではなく、語幹に「連結子音/連結母
音」を介して機能接辞が順次つながる、つまり語幹から派生することで述語
文節ができると解釈する。すばらしい考察が半世紀まえにあったのだ)>
〇態生成での[挿入音素]は、態接辞が母音始まりなので、
・子音語幹・[]+態接辞、(能動、強制・使役態接辞も同じ)
・母音語幹・[r]+能動態接辞、母音語幹・[s]+強制・使役態接辞、
〇活用接辞、助動詞接辞の接続での[挿入音素]は、接辞が子音始まりなので
・子音語幹・[a]+nai接辞(打消し)、子音語幹・[i]+masu接辞(丁寧体)、
・母音語幹・[]+nai接辞(打消し)、母音語幹・[]+masu接辞(丁寧体)、
〇[挿入音素]は単一音素で構成し、原則的に語幹側に付属させて扱う。
挿入音素を接辞から切り離して考察すると、接辞形態が常に1つの形態で
把握できるので、学習しやすいし、言い間違いがなくなる。
・日本語は膠着語であり、語幹[挿入音素]接辞語幹[挿入音素]接辞語幹[挿
入音素]接辞(終結)・・・という連鎖が構文の基本となります。
だから、接辞として独立した接辞語幹の形態をしっかりと記憶することが
大切です。(清瀬流派生文法を聞きかじり状態で記述しています)
(つづく)
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