態文法:受動態と使役態の違い(2)
2016/12/21(水)
(3)動作には、「r:自律動作」と「s:律他動作」がある:
前提条件:復習を兼ねて動作区分の論理を整理:
〇動詞を動作動詞/事象動詞に分ける。
〇動作動詞を自律動作動詞/律他動作動詞に分ける。
〇律他動作とは、指示して相手に自律動作をさせること。当然、相手が有情
の人、生き物であることを想定する。(動作の軽重により強制、許可、容認
、放任などで相手に自律動作を行わせる)
・対象が無情物なら他動詞扱いで主体がなすべき自律動作である。
〇態派生して事象動詞に変化しても派生元の動詞性を残すこともあり得る。
〇事象動詞は「事態、事象、出来事の発生状態、変化の状態を表現する」動詞
で、態動詞原形態以外のすべての動詞形態を指す。
・少し乱暴な区分けだが、名称は暫定扱いです。
(言語学では、構文構造に対して「事象叙述/属性叙述」と区分けする
専門術語がある)
・事象動詞は事象も属性も含み、動作動詞だけを別とする。
〇自律動作:動作主が自主的に行なう動作をいう。
〇律他動作:他者に自律動作を行わせる行為をいう。
・動詞活用の命令形:D[r]e(/o)も「他に動作を命じる」形態なので律他動
作に相当する。命令形は即実行を迫るような猶予のない律他動作を指示す
るので、間投詞的な使い方になる。このため、構文構造に関わりにくい。
(4)受動態と使役態の鏡像関係:
・受動:D[r]ar[]e[r]u:の形態と
・使役:D[s]as[]e[r]u:の形態を比べると、
異なる要素は、挿入音素[r]と[s]、接辞「ar」と「as」の部分です。
〇ここでは、接辞:「ar」と「as」の「r」と「s」の関係を考察しよう。
・受動「ar:ある」は存在動詞の意味を内包した接辞で、「D動作結果がある」
という所動的、事象動詞的な意味を表現する。
構文構造としては、事象現場に登場する主体、客体、目的物などの誰を主語
扱いしても成立つ文章が作成できる。
・受動態を受け身と捉えると、その反対動作が強制、使役の「他に自律動作を
させる」態動詞となる。
・強制「as:あす」、使役「aseru:あせる」の形態は、「ある/さす」、「なる/
なす」の対比が示すように、「ar/as」の「r→s」交替で動作態を事象性から
対極的な律他性へと派生させたものだろう。
・結果態:ar[]u→強制態:as[]u、(文語での受動と使役の関係)
受動態:ar[]e[r]u→使役態:as[]e[r]u、(口語はともにe[r]uを付加)
・可能態:e[r]uは、文語体の連体形「u[r]u」や已然形「-[r]e-」に由来する
のか定かでないが、意味として「~になる/になす」の両義が感得できる。
このため、自他動詞、自律・律他動詞の現代口語化に重宝されたのだろう。
自律動作と律他動作が鏡像関係にある「態の双対環」全体図を示す。
鏡像関係図を見て、補足説明をします。
〇各「双対環」で文章の主語が使える態動詞は、
①動作主体なら:(動作軸の)原形態、可能態、(受動軸の)結果態、受動態。
②客体(被動作体)が主語なら:(受動軸の)結果態、受動態。
③事象主体が主語なら:(可能軸の)可能態、受動態、(受動軸の)結果態、
受動態。(原形態以外の態すべて)
・原形態は動作主体のみが使えます。また、動作主体はすべての態を使えます。
・結果態、受動態は、主語を選ばず使える態ですが、動作Dの意味合いが違い
ます。(受動態の多義性である理由です)
以上。
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