態文法:態接辞の意味を理解する(8)
2016/12/10(土)
9.有情動詞、事象動詞の可能態派生:
自他交替の有対自他動詞D[r]を直接可能態:eruを派生させると、どうな
るか思考実験してみた結果は、当然ながら、単一「双対環」から派生する③、
④型で重なりが生じるほかは、すんなり可能態が有効となる。
以下、まとめてみる。
(原理)可能態D[r]e[r]uは、Dになる/Dをなす、の両義を派生する。
・事象動詞→D[r]e[r]u→自・?可能態/→③他・原形態。
・自動詞→D[r]e[r]u→自・可能態(③?)/→③他・原形態。
・他動詞→D[r]e[r]u→④自・自発態/→他・可能態。
〇「届く」、「開く:あく」などを事象動詞と見なすと、可能態派生で意思動作
に感じられ、他動詞性が優勢になる。
反対に、他動詞の可能態派生では、
・「彼は英語が話せる」、「彼女はピアノでジャズが弾ける」のように
「話せる」、「弾ける」が有情動詞・事象動詞の可能態になったと解釈できま
す。話す、弾くが元から有情・他動詞なので意思の可能態が優勢です。
しかし、「英語が話せる」、「ジャズが弾ける」と表現するのは、事象動詞の
感覚で文章を理解する習慣があるからでしょう。
・事象動詞の概念を導入すると理解しやすいのは、おそらく、日本語に自動
詞の使用が多い上に、「自然の成行きを表現する」という解釈にも適用しや
すいからかもしれない。
〇自他交替の範囲を使役系まで広げて考察する。
・強制動詞:D[s]as[]u:→D[s]as[]e[r]u→使役動詞(=強制動詞の可能
態)、この派生は自他交替の有対自他動詞の一覧表では扱われないが、使役
交替=自他交替の広義範囲にある。
・強制態は「相手にD動作をさす」ことをする意思動詞であり、口頭指示だけ
でも成立します。
・使役態は「相手にD動作をさすようになる/なす」意思動詞です。
「相手にD動作をさせる:D[s]aseru」の形態には、as+erが連結している。
つまり、相手に「さす:as」だけでなく、主体も「なる/なす:er」動作をする
ことを示唆するもので、手助けや介助、気遣いが含まれる。
残念ながら、使役態を介助動詞だと指摘する人がほかにいませんね。
・強制受動態:D[s]as[]ar[]eru:泣かされる←?「泣かす人の実績可能」
(「as」でD動作が相手に押しやられた感が残るので、受け身印象が強い)
・使役受動態:D[s]ase[r]ar[]eru:泣かせられる←「泣かす人の実績可能」
(「aser」なら相手に押しやると同時に泣かす人の自律動作分を意識できる
から、その自律結果としての感覚が生じる。その意味差が重要です)
10.態接辞を連結する:
★標識音素:「r:自律動作」、「s:律他動作」
〇態接辞が持つ音素、as、ar、er、の語尾音素「s」、「r」には意味が潜んでい
ます。(もちろん事象動詞もありますが、態接辞は法則化できます)
・「s」:相手に自律動作をさせる意味の接辞。(律他動作と造語)
・「r」:自律動作を表現する意味の接辞。
(事象動詞などを含めると主体の動作と限定しないほうがよい)
★つぎに態接辞の付け外しの練習をする。
〇現代口語では、使役態、受動態に「+える:eru」可能接辞がつく。
・話させる:D[s]as[]e[r]u:→強制「as」を外して相手の自律に任すと、
話せる:D[r]e[r]u:相手自身の可能態の表現になる。
・来させる:D[s]as[]e[r]u:→強制「as」を外して相手の自律に任すと、
来れる:D[r]e[r]u:相手自身の可能態の表現になる。
・話される:D[r]ar[]e[r]u:→結果「ar」を外して主体の意図に任すと、
話せる:D[r]e[r]u:主体自身の可能態の表現になる。
(注:「su」語尾動詞の受動態では可能表現に感じれないことから、可能態
が始まったと推測する:渡される→渡せる、回される→回せる、、、)
・来られる:D[r]ar[]e[r]u:→結果「ar」を外して主体の意図に任すと、
来れる:D[r]e[r]u:主体自身の可能態の表現になる。
〇可能態は使役、受動から「as抜き、ar抜き」して誕生したわけではない。
古来より自他交替で機能する接辞であり、動詞語幹+挿入音素の概念で
「来れる、見れる、食べれる、調べれる、話させれる」などと派生できる。
・だから、一般形式をD[r]e[r]uと表記するのです。
「ら抜き言葉」の禁忌は根拠のない幻想だと早く気づいてほしいですね。
★つぎに接辞だけの組み合せで練習する。
・強制:「as」→相手に動作をさす。(指示、許可、容認、放任でも成立つ)
・使役:「as」+「er」→「相手に動作をさす」・を「なす:er:自律動作」、の意味
になるから、「[s]aseru」には許可だけでなく、自律動作:手助け、介助、準
備などを協同して実行してもよい。
・結果:「ar」→動作(の結果)が「ある」ことを意味する。自律、律他、事象の
どの動作でも「ある」とみる。(文語では「ある」で受動態を表現した)
・受動:「ar」+「er」→「動作(の結果)がある」・に「なす:er:自律動作」、
「動作結果を有する」の意味は、動作主の「D[r]areru:」=動作結果を成せ
る、結果可能、実績可能ということ。
また、受身では「動作(の結果)がある」・に「なる:er:自律動作」、「動作結
果がある:在る」に「なる」という意味から受け身表現になる。
また、事象動詞として「動作(の結果)がある:生じる」・に「なる」で、感傷や
懐古の情が思い出されることを表現する。
★このように、日本語の態構造は、動詞語幹Dと挿入音素[][r][s]を組み合
せて態接辞と連結する基本法則で成立している。
基本の態接辞も原形「u」、強制「as」、結果「ar」、可能「er」の4種類であり
これらを元に能動系、強制系、使役系の3つの態動詞集団を構成できる。
(「態の双対環」方式は、可能態、結果態、強制態を正確に解釈して「双対環」
の形式で採用・反映してある)
〇受動と使役の鏡像関係、その中心に可能態があるというような態構造。
まだ、十分に描ききれていない「態の双対環」態文法だが、思考実験し続け
ながら開示していきたい。
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