態文法:受動態と使役態の違い(1)
2016/12/19(月)
日本語の動詞派生は規則的に合成できます。
基本規則:考察の利便のため、動詞形態を一般化表記する。(再掲)
〇動詞語幹:D、挿入音素:[][r][s][x]、態接辞:ar、as、erなど。
・動詞語幹:hanas/kak(子音語幹)/mi/tabe(母音語幹)をDで表示。
例:D[r]u:→話す、書く、見る、食べる:動作終止形、連体形。
例:D[r]e[r]u:→話せる、書ける、見れる、食べれる:可能態。
例:D[r]ar[]e[r]u:→話される、書かれる、見られる、食べられる:受動態。
例:D[s]as[]e[r]u:→話させる、書かせる、見させる、食べさせる:使役態。
(1)動作動詞と事象動詞の違いに着目:
「態の双対環」態文法では、自動詞・他動詞の区別を重要視しないで能動系
動詞として一括りで扱うことが多い。たしかに、動詞語尾音が「る:ru」と
「す:su」で自他交替する動詞群があるけれども、自他の識別法則にするほど
の規則性や重要性はないと判断するからです。
〇注目すべきは、挿入音素として記述する[r]、[s]と、受動態接辞、使役態
接辞に記述するar[]、as[]の「r」、「s」が重要な意味を持っている。
・結果態接辞:ar[]、強制態接辞:as[]、の接辞語尾音の「r」と「s」です。
・挿入音素[r]と接辞語尾「r」は同質の意味を持ち、[s]と「s」も同質の意味を
持つと想定する理由を記述していきたい。
〇最初に、人為動作による態を考察するまえに、「事象や事態、出来事を描写、
表現する態動詞」:事象動詞から説明する。
(2)事象動詞(所動詞)の概念:
〇文法書のなかには、自他動詞の比較対象の例で「ある」と「する」の対比で
説明するものがある。「態の双対環」では、次のように定義する。
・「ある:物の存在、状態」を表現するので、「事象動詞:所動的」であり、
事象、事態、出来事で生じた動作の状態を描写表現する動詞です。
・「する:自他の能動動作」を表現するので、「動作動詞:能動的」とみる。
作為をもって行う動作動詞:自他動詞、強制・使役動詞などを総称する。
〇すべての動詞を「動作動詞」と「事象動詞」に二分して眺めてみよう。
もちろん、動作性と事象性:所動性を併せ持つ動詞もあるでしょう。
実際に両性の混合率が気になるかもしれませんが、二分合体で問題解決
できる場合が多いのです。
〇事例を考える:
・結果態接辞:「ar」は、動詞と連結して能動性を残すこともあるが、多くは
事象動詞性を持つように変化する。
・可能態「er」、受動態「arer」も同様に事象動詞性が優勢になります。
・「×英語が話す」とは言わないが、「英語が話せる」、「英語が話される」と言
えるのは、「話す」の可能態、受動態が事象動詞化したからです。
「彼は英語が/を話せる」のように事象性のほか、能動性も残っています。
〇原動詞が最初から事象動詞である例:雨が降る、家がある、お金が要る、
などがあります。「態の双対環」では、能動系、強制系、使役系の各系の原形
態動詞だけには、能動性があると見ますが、可能態、結果態、受動態の動詞
は事象性(所動性)が発生していると見なします。
〇事象性へ変化した態動詞:「話せる:可能態」に対して、再度、「?話せれる
:二重可能態」や「?話せられる:可能受動態」などと発言しても意味が通じ
ません。
・使役系原形態:「ase[r]u」は、強制系可能態:「as[]e[r]u」と同形です。
能動性が強いので、(例外的に)使役系「双対環」が成立し、「話させれる
:使役可能」、「話させられる:使役受動態」の意味はしっかり分かります。
ただし、可能態が付加されると、動作動詞性が薄れてきます。
・「果す」「任す」など「as付きの他動詞」ですが、「果せる」「任せる」になると
可能態か使役態かと迷う感覚が出てきます。
〇用例としても「果せてよかった」「任せて安心した」などが気になります。
動作動詞の表現「果してよかった」「任して安心した」のほうが心に響く。
「果せて」「任せて」は事象動詞になった感じがして少し日和見表現に思う
のですが、どうでしょうか。
動詞の態が替わると表現する立場が変ると言うことが、「事象動詞」の概念
を使うことで理解しやすいのです。
・「本が分かる」事象動詞です。「本が読む」とは言えません。「本が読める」、
「本が読まれる」事象動詞になっています。
・「本が読まされる」事象表現です。「太郎が本を読まされる」太郎に対する事
象表現ですが、使役動詞は強制力が強いので「太郎は本が読まされる」とは
言いにくいようです。
・通常の動作動詞なら、「彼は納豆が食べられる」両者に対し事象表現が言え
ます。
(つづく)
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