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2017/02/16

態文法:可能態動詞の成立条件2

2017/02/16(木)

 前回、後段で「可能態動詞の成立条件」を記述しました。
続編として考察を続けます。
★可能態動詞が成立する条件:(前回の要約、追記)
〇動詞活用の「命令形:D[r]e」が有効な意味を持つならば、それに応答する形態
 として、可能態動詞:D[r]e[r]u、が成立する。
・意味が有効な命令に対して「可能/不可能」を返答するのに可能態動詞が必要に
 なるはずだからです。
例:命令形「これを食べろ、食べれよ」、が成立するから、命令形に[r]uを付けて
  返答は「食べれる/食べれない/食べれます・・」となるのが通例のこと。
  可能態動詞として成立する。
  (「ら抜き:ar抜き言葉」が論理的であり、かつ合理的である理由です)
・(「食べれ」に対して「食べられる/食べられない/食べられます・・」は不適当。
 「食べられる」は結果、習慣、実績、の可能態ですから、即命即答には不適合)
例:命令形一回「行く→行けよ」条件成立、「行ける/行けない・・」可能態成立。
 二重命令?「行ける→?行けれろ」不成立、「?行けれる/?行けれない」不成立。
 (「行けれろ命令動作」とは何? 「れ足す言葉」がダメな理由がこれです)
・(「行けれろ」命令は「行けるように周囲状況が自然に準備立てしてくれ!」と
 いう自発変化を?命ずることに相当する。 返答の「?行けれる」動作は「行ける
 ように自然に変化してくる」という無為の策。不成立とみる)

★可能態動詞が成立する条件:その2(二段から一段活用へ:前回から漸進)
 江戸期までの母音語幹動詞の活用形式は、おおよそ上二段、下二段です。これ
を母音語幹動詞=「子音語根:D+(i/e)」で一般式表記すると、
〇D(i/e)~、D(i/e)~、D[]u、D[]uru~、D[]ureba、D(i/e)yo、
 となります。(「終止/連体/已然」の形態が「子音語幹こだわり」です)
〇ローマ字音素解析が進んでいなかった時代でも、解決策が徐々に広がって行っ
 たのでしょう。解決策はつぎの2つです。
(1)母音語尾を語幹に組み入れ、D(i/e)→新たにD:母音語幹と見做す。
(2)その語幹に「る:[r]u」を付加して終止形にする→D[r]u:。これで「終止/連
  体/仮定/命令」に対する基本要素とした。
★解決結果の一般式は、
 子音・母音語幹を含めたD:四段活用・一段活用を共通表記する一般式は、
〇D[a]~、D[i]~、D[r]u、D[r]u~、D[r]eba、D[r]e/o、
 という形式です。
★ここで注目すべきは、改まった命令形:D[r]e/o、の功績です。
 以前では、四段命令:D[]e、二段命令:D(i/e)[y]o、だった。
・四段命令:D[r]e:書け、探せ、走れ、(命令成立→「る」付加で可能態成立)
 →可能態へ:D[r]e[r]u:書ける、探せる、走れる、:可能態成立する。
・二段命令:D(i/e)yo:受けよ、寄せよ、起きよ、(残念ながら「る」付加しても)
 →?可能態へ:D(i/e)ru:?受ける、?寄せる、?起きる、:?連体形に留まるが。
 (二段終止形:受く、寄す、起く、に、新型連体形:一段化への変化を呼ぶ功績)
・一段命令:D[r]e/o:受けれ、寄せろ、起きろ(命令成立→「る」付加で可能態)
 →可能態へ:D[r]e[r]u:受けれる、寄せれる、起きれる、:可能態成立する。
〇命令形は方言的にも異形態が多く、間投詞的な使い方になるので関心が低い
 のだが、やはり、基本の表記:D[r]e/o、D[r]e[y]o/o[y]o、のように発話
 したいものです。
(母音語幹動詞の命令形では、異形態や連用形の混入が起きるので注意)
★一段活用の命令形:受けろ、寄せれ、起きろ、の[r]音素を外してしまい、
 お上品のつもりで「受けよ、寄せな(さい)、起きてよ」で言い替えすると、
 「連用形」と同形の活用になってしまいます。
・もともと、二段活用では、連用形と命令形の識別ができなかった。
・子音語幹では、「連用形:書きな(さい)」、「命令形:書けよ」と識別可能です。

 つまり、江戸期までは、終止形、連体形、已然形の語幹は「子音語幹」であるべき
だという暗黙の概念が働いていた。
〇D(i/e)~、D(i/e)~、D[]u、D[]uru~、D[]ureba、D(i/e)yo、
 未然、連用、命令形が母音語尾であったのが、二段活用の形式です。
〇D(i/e)~、D(i/e)~、D(i/e)[r]u、D(i/e)[r]u~、D(i/e)[r]eba、
 D(i/e)[r]e/o、一段活用が広がるとき、母音語幹を一貫して使い、同時に
 終止形~命令形まで[r]音素を付加することが定着しはじめた。
〇命令形は、間投詞的なので異形態で置去りにされる傾向が当時から続いたのか
 、一段活用から可能態動詞を派生することに馴染む地方が少なかった。
 それが現在も続いている。あと5年くらいは待たなければならないだろう。

★一段活用化への変遷をいろいろな見方から分析することができるので、この記
 述も諸説のうちの1つである。
〇可能表現の方法も、可能態と受動態で表す二通りがあり、それぞれ意味が違い
 ます。
・可能態の可能:即命即答する上例記載のように、「個の可能動作」を表現する。
・受動態の可能:動作結果の可能を表し、経験・実績・風習など「多の可能動作」を
 表現する。
〇子音語幹・母音語幹どちらの動詞にも「二通りの可能」があります。
 この「二通りの可能」概念も、あと5年くらいは待てば普及するだろうか。

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