態文法:動詞活用形はアスペクト並び
2017/02/24(金)
前回に「可能態動詞の成立条件2」を記述しました。
可能態の成立を促進し、保障するのが「動詞活用の命令形」であるような書き方
でしたが本当に保障され保証できるかというと否で答えるしかないか。
そもそも「命令形」への馴染が幼少時代を過ぎてしまうと、ほとんどなくなる。
そういえば、「命令形、仮定形」の消滅を予測する本がある。
★水谷静夫:『曲り角の日本語』:岩波新書:2011年4月20日第一刷
読後印象をメモする。・・・>現状の日本語が曲り角にある。・・・
第4章 日本語未来図: 曲った先の「21世紀末の日本語」を電算機(短文なので
作例かも)で出してみた文章例・・・(う~~ん。絶句)・・・でも、言葉の自浄作用
が働くことを期待する道も選べるのです。・・・<・・・要約引用終わり
〇以前に読んだ感想として当ブログでも連続回の反響文(非難文?)を記載した
ことがある。当時は、水谷本での使役態や可能態、受動態に関する扱い方に著者
の例文読み違いが気になって、反論を載せていました。
〇「21世紀末の日本語」の条件設定には「ら抜き言葉の容認(善しとして)」、「さ入
れ言葉の容認(ぬぬ、ダメだ)」や、動詞活用の仕方にも「曲り角の若者言葉での
設定」がありますから、読んで後味の悪い、なんとも気が抜ける文章です。
★言葉の自浄作用が働いて、もう少し思考の本音が現れる文章になるとよいのに
と思います。
「言葉の自浄作用」が働くのを期待して、以下に思考実験を記述したい。
〇水谷本:動詞活用形の未来変化を記述しているが、由来として本居春庭:『詞の
通路』(?初出は『詞八街』か)での「活用型:未然・連用・終止・連体・已然」を述べ
ている。当時、命令形の記述は存在しなかった。
・春庭の活用型を適確に解説した水谷本に触発されて、当方も長年胸に秘めてい
た「動詞活用形が表現する動作局面:アスペクトについて」を図表化(表5)する
ことにした。
(直近の記事で可能態成立条件を考えるなかで「動詞活用」を考察したので、数
種の一覧表を作成しました)
〇動詞活用形の一般式:表1~表2(文語動詞と口語動詞の活用形)文語口語動詞活用表
〇動詞活用形の動作局面としての解釈:表3~表5図示
★ほとんどの動詞は表3:「四段・一段活用の共通表記」で示す活用形です。
・四段活用の挿入音素は、未然[a]・連用[i]に特長があり、終止[]以降で[]となる。
・一段活用の挿入音素は、未然[]・連用[]であり、終止[r]以降で[r]となる。
(一段活用動詞が使役系へ移行するとき、D[s]as[]e[r]uのように、[s]に交替)
★表5:動作局面:アスペクトに見立てた表示:
動詞派生の3要素を→「【動詞語幹[挿入音素]】+機能接辞」で一般方程式にした
ことにより、「未然・連用」区間/「終止・連体・仮定已然」区間とで「挿入音素」の
意味合いが明確に異なることが見えてくる。
〇「未然・連用」区間では「動詞の動作・動き」に焦点があり、「終止以降」区間では
挿入音素が[][r][s]となり動詞基本形に近づくから、「動詞原意に係る事象・出
来事の描写」に焦点があると感じる。
〇動詞の動作に注目すれば、「未然」は動作なし/「連用」は動作あり、です。
「終止・連体・仮定已然」では動作描写よりも「事象に対する成文化への働き」が
強くなる。
★表4:態動詞の派生もD[r]やD[s]ですから、(未然形でなく)動詞原意での接合
になります。
★表5で示す「動詞活用形のアスペクト把握」が定着すれば、「言葉の自浄作用」
が働きやすくなるだろう。(一般式・挿入音素の概念も重要)
〇たとえば、「さ入れ言葉、れ足す言葉」を一般式で表記すると、
?読まさせる→D[r]as[]as[]e[r]uで二重強制:as・as、だと教える、教えれる。
(二重強制が成立するのは、二段階の強制がある場合だけ)
?行けれる→D[r]e[r]e[r]uで二重可能:er・eru、だから不適当だと教えれる。
(行く事象を二重に実行可能だという事態は何か? 想像不可能と思う)
〇また、[r]:自律動作、[s]:律他動作の交替の概念を定着させて、
?見らす→D[r]as[]u、?自分[r]に見ることを強制する?(ダメ理由が分かる)
?着らす→D[r]as[]u、?自分[r]に着ることを強制する?(ダメ理由が分かる)
(見さす:D[s]asu、着さす:D[s]as[]u、他[s]を律して動作させる)
などを具体的に統一的に教えられる文法則となる。
・教えられる:何度でも誰にでも、誰でも教えることが可能だという「多の可能」
の意味です。(受動態の結果可能表現)
・教えれる:その場の行為として教えることができる。「個別的な可能」の意味。
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