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2017/02/04

態文法:態の鏡像図に写ったものは?

2017/02/04(土)

 「態の双対環」を「態の双対環」鏡像図で図示すると、能動系、強制系、使役系の
3つの「双対環」に配置される態動詞の機能の配列が鮮明に見えてくる。
3つの「双対環」が、やはり相似的な意味合いで態機能の配列関係を主張している
ように思われる。
〇「鏡像図」を文字列表記すると、(能動、強制、使役の順で並べる)
◇能動態:D[r]u------------D[r]e[r]u:可能態
 ↘結果態:D[r]ar[]u--------D[r]ar[]e[r]u:受動態(結果可能)

◇強制態:D[s]as[]u---------D[s]as[]e[r]u:強制可能態=使役態
 ↘強制結果態:D[s]as[]ar[]u---D[s]asar[]e[r]u:強制受動態

◇使役態:D[s]as[]e[r]u-------D[s]ase[r]e[r]u:使役可能態
 ↘使役結果態:D[s]ase[r]ar[]u--D[s]aserar[]e[r]u:使役受動態
のように記述できる。

〇記号「◇」で各「双対環」の原形態を示した。
 それぞれ◇能動系「自律動作の軸」、◇強制系「律他動作の軸」、◇使役系「律他・
 使役動作の軸」を示す。
〇記号「↘」で各系の「結果・受動の軸」を示す。
★つまり、「態の双対環」の3系統「双対環」を「鏡像図」に変換して、態動詞の配置
 を文字列表記したことにより、「動作の軸」と「結果の軸」が把握できた。
 さらに、
・【◇原形態動詞の軸:左端----右端:態の可能態化】の対向関係に気づく。
・【↘結果態動詞の軸:左端----右端:態の可能態化】の対向関係に気づく。
・この発見で次の疑問が現れる。
〇◇動作軸の左端の原形態動詞が→右端の可能態動詞と対向・隣接関係なのか
〇↘結果軸の左端:結果態が→右端の受動態(結果可能態)と隣接関係なのは分か
 りやすい。
〇ともかく、右端が可能態:「e[r]u」接辞付きになる理由は何だろうか?

★自問自答の思考実験で答えを求めてみよう。
〇「双対環」鏡像表記の各軸:左端と右端の動詞態のそれぞれの意味を考える。
★左端の動詞態は、動作主体が行う動作陳述を表出する。
 (主体は両端の動詞態構文の主語になれるが、動作陳述は左端による)
★右端の動詞態は、行われる動作を客観属性として表出する。また、既然動作を
 回想的に陳述する意味にも使う。(可能より、自発の意味に近い場合あり)
 (客体が主語となる構文を作るには右端の動詞態による)
〇もっとも、結果態:「ある:ar[]u」と強制態「あす:as[]u」に対しては、下一段活
 用の推奨?がある(国語辞典の助動詞活用一覧表に明示あり)から、右端の態は
 受動態:「あれる:are[r]u」、使役態「あせる:ase[r]u」となるように動詞活用を
 法則化している。
・ただ、学校文法では、下記の例のように◇能動系の右端、◇使役系の右端の動詞
 に対する法則に一貫性を欠いている。(下一段活用でなく態接辞とすべき)
例:はなす:話す(子音語幹動詞)
◇話す----話せる:→可能動詞扱い。【可能態接辞化(「双対環」も提唱)】
 ↘話さる--話される、
◇話させる---話させれる:?。【可能態接辞化(「双対環」も提唱)】
 ↘話させらる--話させられる、
例:たべる:食べる(母音語幹動詞)
◇食べる----食べれる、:?。【可能態接辞化(「双対環」も提唱)】
 ↘食べらる--食べられる、
◇食べさせる---食べさせれる、:?。【可能態接辞化(「双対環」も提唱)】
 ↘食べさせらる--食べさせられる、
〇上例の右端の態動詞は、可能態接辞「e[r]u」結合と解釈すれば、「態の認識」が
 安定して感得できる利点があります。
★(「双対環」も提唱)と記述したわけは、古く江戸後期から各地で使われ初めて
 いる(話せる、食べれる)ことを追認し、先人を応援するつもりであるからです。

 可能態が動作意思の可能だけでなく、既然(既に行った)動作を回想叙述する
機能について最後に記しておきたい。
〇文法研究でも「表現の揺らぎ」とせずに、「陳述と述懐」の違いで把握できる。
◇軸左端:「責任を果した」「仕事を任した」←主体動作の陳述。
◇軸右端:「責任を果せた」「仕事を任せた」←(主客)既然動作の述懐。
〇SMAP曲「夜空ノムコウ」の主要歌詞:「あれからぼくたちは 何かを信じて
 これたかなぁ」の◇軸左端:「来た」と◇軸右端:「来れた」、また↘軸右端:「来ら
 れた」の比較を整理しておこう。
◇軸左端:「~来たかなぁ」←主体動作の陳述。
◇軸右端:「~来れたかなぁ」←(主客)既然動作の個々を述懐する。
↘軸右端:「~来られたかなぁ」←(主客)動作結果の一括を述懐する。

〇先日、鴨長明:『方丈記』を青空文庫で読みかけて、気づいた。
>およそ物の心を知れりしよりこのかた、四十あまりの春秋をおくれる間に、世の
 ふしぎを見ることややたびたびになりぬ。<の連体形:「おくれる」が可能態だ。
◇軸左端:「おくる」間に←これなら普通に動詞連体形だ。(平安後期、鎌倉初期)
◇軸右端:「おくれる」間に←下一段活用。可能の意味では通じない。既然動作の
 回顧述懐と解釈すればぴったり感覚に合います。
(鎌倉時代にも四段活用と一段活用を一つの動詞に併用する風潮が始まって
いたのでしょうか.)

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