態文法:動詞形(未然/已然)と挿入音素
2017/04/12(水)
1.四動詞形の概念:(清瀬本:派生文法)
派生文法では膠着語である日本語は動詞が活用するのではなく、接尾辞が連結
して派生するのだと見做す。
->自立語には「動詞/非動詞」の別あり、従属語には「接尾辞/助辞」の別あり。
->動詞には「動作動詞/形状動詞」の別があり、四動詞形「終止形・連体形・連用
形・命令形」が構文上の形態種別と見做す。
(学校文法の活用語尾概念は捨て、未然形、仮定形は連用形に包含する。)
->接尾辞には「名詞接尾辞:格接尾辞と繋辞/動詞接尾辞:文法接尾辞と派生接
尾辞」の別がある。
-?>命令形は、子音語幹に-e-接尾辞が付き、母音語幹に-ro-接尾辞が付き、
特定の動詞形:結果態の「なさる、いらっしゃる、おっしゃる」などは語尾(r)
に-i-接尾辞が付いて「なさ(r=Ø)i、いらっしゃい、おっしゃい」となる。
禁止の命令形は、-(r)una-接尾辞が子音、母音語幹に付く。
-?>前望態の否定を意味する-mai-接尾辞は、-(u)mai-と連結母音(u)を付
けて、「話すまい:hanas-umai」、「食べまい:tabe-mai」を派生する。
-?>「書くと、すぐ分かった」OK、「書いたと、すぐ分かった」NGであり、
「見ると、すぐ分かった」OK、「見たと、すぐ分かった」NGである。
(文法的にNGの理由を十分に説明していない。自分の見聞き動作で分かった
のか、他人の動作だと分かったのかという意味の違い?)
-?>別例で派生接尾辞と助辞を比べた箇所がある。
・「ここに残ろうと:(y)ooto-残るまいと:(u)maito-好きにするがよい」
(両方とも派生接尾辞とみる)
・「泥棒は逃げよう:(y)oo-とした」(この「と」は引用の助辞であり、別構造)
<-
〇ここで、-?>の疑問に対する当方の考察を以下に記述する。
★命令形:全国の方言を推測すると、母音語幹でも「見れ、食べれ」形態がある?
から、最適な[挿入音素:r]を付けた「書け:kak[rØ]e、食べれ:tabe[r]e/
食べろ:tabe[r]o」が派生できるだろう。
〇つまり命令形一般式=D[r]e/o、を推奨できる。
禁止命令形一般式=D[r]una、は、そのまま推奨できる。
★否定前望態は、「話さまい/話すまい」、「食べまい/食べるまい」のように、2つ
以上の形態があるはずです。(浜松の「やらまいか精神」の言葉が思い浮ぶ)
・否定前望態の派生一般式=D[a]mai、の通常派生形態と、
・連体形との連結派生一般式=D[r]u・mai←D[r]u・[a]mai、の連体派生形態の
二通りの派生方法を採用すべきだろう。
★清瀬本:「書くと:kak(r)uto」の-(r)utoは開放条件の派生接辞と定義あり。
「書いたと:kak(i)ta・to」の-(i)tato:は何も定義なし。なぜ扱いが異なるのか。
〇「(r)uto」を派生接尾辞に含めるなら、完了態:(i)tato、前望態:(y)ootoも
当然、派生接尾辞に含めるべきです。
・その反面、「と」を派生接尾辞に限定してしまい、共通形態である「引用の接続助
辞:と」の機能を切り離すのは不利益が多いだろう。
・やはり、連体形の後続連結(連体形修飾)に対する文法則を働かせるほうが最善
策でしょう。
さて、四動詞形に絞り込むことには反論したい。学校文法の動詞活用には大き
な錯誤があるが、よい部分は汲み上げて残したい。
2.六動詞形と挿入音素:(「態の双対環」文法)
->当ブログの態文法では、学校文法にある「六動詞形:未然形・連用形・終止形・
連体形・仮定形(已然形)・命令形」を一応の基礎にする。
★「六動詞形の並び順」に込められた「動作事象の生起局面の順」を感得できる
から、並び順自体が大切な法則です。つまり、動詞のアスペクト感が明瞭です。
->江戸期(本居春庭?)に工夫があり、大局的な動作事象のアスペクトを目に見
えるように企画して、「六動詞形の並び順」を規定したのだと推察する。
・自立的な語形を持たない「未然形、仮定形」だからと言って、連用形の部類に入
れてしまうのは勿体ないです。
★もしも昔に戻れたら提起したい「未然形/已然形」の条件接辞がある。
条件接辞に未然形:-aba、已然形:-ebaを 復活させたい。
また、否定の仮定接辞に未然形:-naba、已然形:-nebaでは、問題があるので
再考してみた。(5月8日修正投稿)
〇既に古語辞典に載っているのは、
-naba:完了の「ぬ」由来で、「冬来たりなば春遠からじ」の例あり。不都合。
-neba:打消し「ず」の已然形+接辞「ば」で、これは合う。
〇また、-aba、-ebaは、まったく古語辞典のなかに記載がない。
再思考してみよう。
〇現代語の打消し「ない」の用法では、「ない」は形状動詞に準ずるから、
-naba、-nebaでは用が足りなくなり、少々、重たくなっても
★D[a]na[k]ar[]aba:売らなからば/食べなからば、(打消し未然条件)
★D[a]na[k]ereba:売らなければ/食べなければ、(事前打消し已然条件)
と表現するのが文法的用法となるだろう。
★D[r]aba:売らば/食べらば、(-aba:未然の仮定条件表現)
★D[r]eba:売れば/食べれば、(-eba:已然既然の仮定条件表現)
〇以上の再思考実験による新しい仮定接辞なら古語との混同がなく、口語の
仮定形とも矛盾しない。
〇形状動詞の場合:(念のため確認しておこう) 形状動詞語幹:K。
★K[k]ar[]aba:美しからば/楽しからば、(-aba:未然の仮定条件表現)
★K[k]ereba:美しければ/楽しければ、(-ereba:已然既然の仮定条件表現)
打消しの場合:(K[k]u[・]na[k=Ø]i:「美しく・ない」の連結と見なした)
★K[k]u[・]na[k]ar[]aba:美しくなからば/楽しくなからば、
(-na[k]ar[]aba:打消し未然条件)
★K[k]u[・]na[k]ereba:美しくなければ/楽しくなければ、
(-na[k]ereba:事前打消し已然条件)
以上のように、有意の機能接辞として仮定条件接辞を定義し、子音語幹、母音語
幹ともに連結可能な文法則を構成することができる。
これは、常に派生一般式:動詞語幹+[挿入音素]+接辞語幹+[挿入音素]・・・
の構文形式(日本語が膠着語であるから)で思考実験することが大事だというこ
とを示しています。
〇最後に、強制動詞、使役動詞についても仮定形を確認しておこう。
強制・使役では母音語頭の接辞に対して挿入音素は[s]になるのが通例です。
(挿入音素:[s]は他者を律する動作を暗示する。[S]as[]uの[S]です)
・強制前提条件:D[s]as[]aba→書かさば/食べささば:tabe[s]as[]aba、
・強制確定条件:D[s]as[]eba→書かせば/食べさせば:tabe[s]as[]eba、
・使役前提条件:D[s]ase[r]aba→
→書かせらば/食べさせらば:tabe[s]ase[r]aba、
・使役確定条件:D[s]ase[r]eba→
→書かせれば/食べさせれば:tabe[s]ase[r]eba、
・否定強制前提:D[s]as[a]na[k]ar[]aba→
→書かさなからば/食べささなからば、
・否定強制確定:D[s]as[a]na[k]ereba→
→書かさなければ/食べささなければ、
・否定使役前提:D[s]ase[]na[k]ar[]aba→
→書かせなからば/食べさせなからば、
・否定使役確定:D[s]ase[]na[k]ereba→
→書かせなければ/食べさせなければ、
複雑な派生連結になっても、一般式表現のローマ字つづりを見直せば理解でき
るだろう。また、日本語学習者にも一緒に一般式を見直させれば、確実な指導が
できると思う。(5月8日修正投稿終わり)
★今、提起するのは、既然・已然形:-e[r]u(可能態)を定着すべしということ。
已然形→可能態:D[r]e[r]u→書ける:kak[]eru/食べれる:tabe[r]eru 。
(なお、結果態:D[r]ar[]u→書かる:kak[]aru/食べらる:tabe[r]aru、
の -ar-接辞は「動作結果が:ある、在る、有る」の意味であり、未然ではない)
〇文語文法では、D[r]e[r]]uの一般式:挿入音素の概念が不足していた。
・日本語の動詞は機能接辞を付ければ、派生変身して可能態動詞のように巣立っ
てしまうのが当り前です。だから、未然形、已然形に自立形態がなくても意味
機能に未然、已然があれば十分でしょう。
・また逆に、巣立ってしまった可能動詞に已然形・既然形の深層構造を感じとる
感性も日本人にはまだ残っています。大事な感性です。
(「a」音に未然、「e」音に已然・既然、の感覚を呼び起すのは、六動詞形の一覧表
に慣れ親しんできたからなのか、下一段化に「e」音が果した深層構造が利いて
いるのだろうか)
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