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2017/04/15

態文法:[挿入音素]が語幹・接辞の連結役

2017/04/15(土)

1.派生文法と「態の双対環」文法の見比べ

 前4回にわたり派生文法(清瀬本)の考え方と「態の双対環」文法(当ブログ)とを
見比べてきました。(挿入音素の役目を述べて全体の補足とします)

〇派生文法:動詞語幹+「連結子音/連結母音」+派生接尾辞、を原則におく。
 ・子音語幹+(連結母音)・子音語頭派生接辞、(母音語幹+子音語頭派生接辞)
 ・母音語幹+(連結子音)・母音語頭派生接辞、(子音語幹+母音語頭派生接辞)
 常に(連結音)と子音語幹、母音語幹を並べて考察する必要がある。
〇「態の双対環」文法:動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞、を原則におく。
・[挿入音素]=「連結子音/連結母音」と見なせば、考え方は同一です。

 さらに、[挿入音素]概念には大きな利点があります。
★動詞派生一般式:動詞語幹(子音/母音:両方対応可能)→Dと表記:
 =D+[挿入音素:1個の音素]+機能接辞、で派生機能を説明可能となります。
  この一般式:D[挿入音素]機能接辞の形式ですべてを考察できます。
・例:可能動詞の一般式:
 =D[r]e[r]u←動詞語幹:D、挿入音素:[r]、可能接辞語幹:e、挿入音素:[r]、
  終止接辞:u、という派生が簡単に表せます。
・実例:書ける←kak[r=Ø]e[r]u、 食べれる←tabe[r]e[r]u、
 (本来、可能動詞は子音、母音語幹で派生できる:見れる、来れる、変えれる、、)
・挿入音素:kak[r=Ø]e[r]uでは、kak[r:無音化]e[r:有音化]uして発話し
 ます。実例表記では、kak[]e[r]uのように無音化を[]で表せばよい。これで
 語幹の区切りも明示できます。
★派生を一般式で表すことに慣れると、語幹(子音/母音)両方を平等に考察でき
 ます。
・機能接辞が本質的に必要な機能ならば、子音・母音語幹の両動詞に接続して
 「意味を生成させる」べきもので、それに対して「挿入音素」が役目を果します。
・[挿入音素]を度外視するような片側語幹だけの派生考察に対しては、違和感を
 感じるようになります。

・前々回、態文法:形状動詞の派生と挿入音素、で記述したように、
★「態の双対環」文法:形状動詞でも、[挿入音素]が必要なはずと考察して、
 派生一般式=K:形状動詞語幹(母音多し)+[挿入音素]+機能接辞、と徹底。
  =K[k=Ø]i/K[k]a(r=[Q])ta/K[k]ar[]oo、
・実例:高い:taka[k=Ø]i/高かった:taka[k]a(r=[Q])ta
  /高かろう:taka[k]ar[]oo、
・実例:高し:taka[s]i、強し:tuyo[s]i、早し:haya[s]i、など動きや変化を言う
 場合の挿入音素は[s]だろう。が、「高さった、高さろう」などの派生はない。
〇形状動詞の挿入音素:[k]は、動きでなく「状態・様態」に対する意味付けであり、
 「動き・変化」の意味付けの挿入音素:[s]と区別できる。
★挿入音素[k]は、動作動詞でも使用することがあり、[s]、[r]と違い、「動きの
 意図を無にした状態を出現させるために挟み込む」ものです。
・例:寝かす:ne[k]asu←ne[s]asu、笑かす:wara[k]asu←waraw[]asu、
 だまかす:dama[k]asu←damasu、など、相手の「意図を越えた状態」を出現
 させるため、[k]を挿入しているのでしょう。

2.挿入音素の特長:

 六動詞形を一般式で表現すると、通常、未然形[a]、連用形[i]の挿入音素がつく。
★D[a]nai、D[i]masu、D[r]u、D[r]u-、D[r]eba、D[r]e/o
 だが、母音語頭の機能接辞:abaを未然条件で使用する場合、
・D[r]aba→住まば:sum[]aba、見らば:mi[r]aba、出らば:de[r]aba、
 のように、挿入音素[r]もあり得ることです。
・連用形は、挿入音素:[i]-だけでも使用するほど強い動作相ですね。
 (おそらく母音語頭の連用機能接辞がないのでしょう)
〇学校文法で言う動詞五段活用表の「活用語尾:あいううえ」の「あ」「い」は挿入
 音素[a]、[i]であり、「う」「え」は機能接辞の語頭音です。
★「態の双対環」文法として、「六動詞形派生表は基本アスペクト一覧表である」
 と捉えて、
・一般式:D[a]nai、D[i]masu、D[r]u、D[r]u-、D[r]eba、D[r]e/o、に加え
・第2一般式:D[r]aba、D[i]masu、D[r]u、D[r]u-、D[r]eba、D[r]e/o、の
 条件接尾辞の未然形・已然形の揃いを示すと、未然形の挿入音素:[a]音、接尾辞
 の「あ」音の位置付けが明確になり、誤解が避けられるはず。
★態動詞派生の一般式:態の接辞が「as/ar/e[r]/ase[r]/are[r]」と母音
 語頭であるから、母音語幹動詞には挿入音素:[s]、[r]の子音挿入音素を挟み込
 む。
・「態の双対環」は「態の基本アスペクト一覧表」だと見なせます。
〇能動系:動詞語幹:D(子音語幹ならD[]、母音語幹なら[r]を挿入)
 ・原形態:D[r]u→可能態:D[r]e[r]u、(事象→已然)
   ↘結果態:D[r]ar[]u→受動態:D[r]are[r]u。(結果事象→已然)
〇強制系:D[s]as:(まず強制接辞を付加し)これを新たなDで表す。(子音語幹)
 ・原形態:D[]u→可能態:D[]e[r]u、(事象→已然)
   ↘結果態:D[]ar[]u→受動態:D[]are[r]u。(結果事象→已然)
〇使役系:D[s]ase:(まず使役接辞を付加して)新たなDで表す。(母音語幹)
 ・原形態:D[r]u→可能態:D[r]e[r]u、(事象→已然)
   ↘結果態:D[r]ar[]u→受動態:D[r]are[r]u。(結果事象→已然)
★可能態接辞:e[r]u、は、自他交替、他自交替、可能発話など多機能ですが、さら
 に態動詞の已然形としての機能が内包されています。
・作例:
 生きる:事象叙述、→生きれる:体験叙述、→生きれた:体験述懐。
  ↘生きらる:結果事象、→生きられる:経験叙述、→生きられた:実績述懐。

3.[挿入音素]の制約:

 [挿入音素]は、単一音素で挟み込むのが原則です。

・子音語幹動詞には[a]、[i]の挿入音素を説明した。発話に際して、「未然・連用」
 に対する表現の予告標識音になります。
〇[i]te、[i]taの連用形接辞では、イ音便として[I]、[Q]、[N]、[¥]を挿入音素
 表記に定義した。

・母音語幹動詞には[r]、[s]、[y]、[k]を挿入音素として定義した。
 この形態の挿入音素は、動作意図や動作制御に対する明確な意味付けが含まれ
 ている。
 [r]:自律動作(動作主体自身が動作を律する:自動詞、他動詞とも)
 [s]:律他動作(他者が自律的動作をするように仕向ける)
 [y]:自他勧奨(主体、他者も動作推進するように仕向ける)
 [k]:誘導動作、形状叙述(他者意図を斟酌せずに結果へ誘導する。形状表出)
・特に[k]は、子音語幹動詞に対しても語末音を切り落して母音語末化してまで
 も挿入音素[k]を付加する。
 :だます:damas[]u/だまかす:dama[k]as[]u、
 :散らす:tiras[]u/散らかす:tira[k]as[]u/散らかる:tira[k]ar[]u 。
 (そのうち、電話詐欺で「だまかされる」ことを、「だまかる」などというかもしれ
 ない)

以上。

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