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2017/05/04

態文法:可能態の謎が解けた!?

2017/05/04(木)

 「態の双対環」文法と名付けて思考実験を続けてきました。少し整理します。
2年前に今泉喜一『日本語構造伝達文法』の自主研究会に飛入り参加して、実験状況を披露する機会をいただいた。
態文法に限定した仮説的な思考結果を数回にわたり発表できましたが、研究会員に対して新文法の優位性を論証するだけの力量がありませんでした。
先生からは「仮説思考を全体まで進めたら、逆に全体から思考検証し直して見ることが大切です」との示唆をいただいた。
 この示唆は「二分合体思考法」に通じるものですから、その後の一年間は態全体に考察を進めて、昨年秋に『日本語動詞 態文法を再生する』にまとめあげ出版することができました。
今年になってからは、「逆に全体から思考検証し直して見る」ことが多くなりました。
折返し点と言うか検証期と言うか、思考の端緒が「演繹的視点」になって来たかもしれません。

1.帰納的視点か? 演繹的視点か?

  拙著『態文法を再生する』で問題点として上げた用語例では、
〇「す」語尾の動詞のあつかい:他動詞と使役態動詞を峻別できるか?
 という設問で思考実験している。
例:動詞の終止形によって判断しているだけでよいのか?
・動かす:対物自律動作、 ・動かせる:対物自律可能態
・任す:対他自律動作、  ・任せる:対他委譲動作、
・償わす:対他強制動作、 ・償わせる:対他交渉動作、
・果す:対事自律動作、  ・果せる:対事自律可能態、
・輝かす:対物自律動作、 ・輝かせる:対物自律可能態?
・なびかす:対他物強制動作、・なびかせる:対他物誘導動作、
以上のような例を考察したあと、結論的には自己の自律動作を明確にするなら、
「す」動詞を使い、「せる」動詞での表現は控えたほうがよいとした。
〇上例では、根源動詞:Dに接辞:as[-]u が付加され、D[-]as[-]u となった動詞に、
 さらに、機能接辞:e[r]u が付加してD[-]as[-]e[r]u と派生した動詞です。
・この機能接辞を可能態接辞:e[r]u と命名して、自他交替、可能態、自発態の機能を発揮する動詞へ派生するものと定義した。
★この種類の動詞発話に関して、さらに報道場面などでの用法で設問したことは、
・発話「責任を果して、、、」をTV画面の字幕では「責任を果せて、、、」に代わる
 ことが多い。こと。
・「目を輝かして、、、」も「目を輝かせて、、、」で表現することが多い。
〇「果せて」、「輝かせて」は、他動・可能動詞の「連用形用法」だと解釈するしかない現状では、単純他動詞の「果して」、「輝かして」を使用するほうがよいと割り切った考え方を記述していた。
(可能態使用を提起する立場からすると逆説になるが、発話者の感覚を尊重し、相当苦労して可能にさせたのだと連想できるなら、可能態を使うのがよいという判断です)

2.可能態:e[r]u を演繹的に考える
 前項の設問は、「任す/任せる」などの強制態:as[-]u と、使役態:as[-]e[r]u の使い分けに関わることではあるが、問題の根本には已然形に関連する多くの要素が潜在する。
・現在の学校文法でも動詞已然形の概念を「仮定形」としてしか表現しない。
★当ブログは2017年1月、態文法カテゴリーを立てました。
・それ以前は日本語文法カテゴリーで、2014年9月日本語文法:可能態の謎を解く、の中で、
正に直感的な感性で可能態の謎を正しく解いていたわけですが、確信的に論証しきるほどの力量にありませんでした。
 今年になって、態文法:動詞活用形はアスペクト並び、に図表を載せて、
・動詞活用形式:未然・連用・終止・連体・仮定(已然)・命令の並び順が動作相:アスペクトの基本構造を表現するのだと提起した。

★アスペクト並びと見做す利点は十分にあるのだが、
仮説の「仮定形=已然形」が条件提示のみで文構造に届かない。(仮定形の已然力が弱いのに気づいた)
〇「イチゴを売る」構文で思考実験:売る=ur[-]u 、語幹D=ur- 。
・イチゴを売る:他動詞終止形、(×イチゴが売る)、 一般式:D[-/r]u =ur[-]u、
・イチゴを売れば、:仮定形、 (×イチゴが売れば)、一般式:D[-/r]e[+]ba=ur[-]e[+]ba 、
・イチゴを/が売れて、:可能・自発連用形、 一般式:D[-/r]e[i/-]te =ur[-]e[-]te 、
・イチゴを/が売れる :可能自発終止形、 一般式:D[-]e[r]u=ur[-]e[r]u 、
・イチゴを/が売れれば、:可能自発仮定形、一般式:D[-/r]e[-/r]e[+]ba=ur[-]e[r]e[+]ba 、
・イチゴを/が売れた :可能自発完了形、 一般式:D[-]e[i/-]ta=ur[-]e[-]ta、
★仮定接辞:e[+]ba は、「e」音を持つから暗黙のうちに已然を想定したが、已然を言い切るまでの力はなく、すこぶる弱い確定条件だと判明しました。
・それに比べ、可能接辞:-e[r]- 、これを基にした
已然連用形:e[-]te 、完了形:e[-]ta 、
可能仮定形:e[r]e[+]ba、には「態を替える」力量があるわけです。
・別に蛇足ですが、
 イチゴを/が売っている:他動詞連用形+アスペクト助動詞:いる、
 のように助動詞でアスペクト構文にする方法もあります。
〇「イチゴを食べる」構文で母音語幹を実験:食べる=tabe[-/r]u 、語幹D=tabe- 。
・イチゴを食べて、:連用形、 (×イチゴが食べて)、一般式:D[i/-]te=tabe[-]te 、
・イチゴを食べれば、:仮定形、 (×イチゴが食べれば)、一般式:D[-/r]e[+]ba=tabe[r]e[+]ba 、
・イチゴを/が食べれて、:可能連用形、 一般式:D[-/r]e[i/-]te=tabe[r]e[-]te 、
・イチゴを/が食べれれば、:可能仮定形、一般式:D[-/r]e[r]e[+]ba=tabe[r]e[r]e[=]ba 、
(食べれれる/食べれれたに転ずるのを回避したい。食べらる/食べられた=tabe[r]ar[-]u/tabe[r]ar[-]e[i/-]ta を推奨する)
・イチゴを/が食べれた :可能完了形、 一般式:D[-/r]e[i/-]ta=tabe[r]e[-]ta 、
★やはり、瞬間動作に仮定接辞:e[+]ba を付加するだけでは、已然感が非常に弱い。
〇だが、吟味して欲しいことは、動詞(子音語幹、母音語幹)に可能態接辞を付加する表現方法は、何らの語幹による差や不安定要素もないし、早く正式文法に組み入れるべきものだということです。

★可能態接辞:e[r]u 、または、-e- と記す文法書もありますが、意味は何か。
 何故、「強い已然力」を発揮するのでしょう。
・可能態接辞:e[r]u を付加した一般式:D[-/r]e[r]u の意味は能動已然の働きで、
 動作:Dの「ように成る」または「ように為す」の同時二義を有しているが、発話の文脈がどちらか一義に決める。
・売れる:(彼でも)売ることが可能/物が売れる(性状)の択一。
・食べれる:(好物なら)食べることが可能/栄養があり食べれる(性状)の択一。
(動作としても可能で、性状としても可能の意味を包含しているので、強い已然力を発揮するのだろう)

 

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