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2017/06/08

態文法:態の全体像を把握する2

2017/06/08(木)

 

 動詞、形状動詞などの「活用」は、本来の膠着語の文法則に従えば「接辞を追加膠着させて機能を順次派生させること」に相当する。
・動詞「派生」には、以下のような段階があり、「派生」に「派生」が重なっていく。
①自他交替「派生」:動詞語幹に接辞を付加して自動詞、他動詞を派生する。
②態「派生」:動詞語幹に接辞を付加して動作、被動作の向い先(対向関係)を交替する派生をさせる。
(①、②の動詞派生は、単語生成の機能です)
③然相・動作相「派生」:動詞語幹に接辞を付加して動作の進捗描写(構文機能)を派生する。
④助動詞「派生」:動詞語幹もしくは「相派生の特定相」に接辞を付加して動作の進捗描写(構文機能)を補強派生する。
〇動詞(用言)は「活用する」のではなく、「機能接辞により派生する」のだ。
 (清瀬義三郎則府:『日本語文法新論-派生文法序説』:桜楓社:1989年、
 『日本語文法体系新論―派生文法の原理と動詞体系の歴史』:ひつじ書房:2013年、)
・清瀬本で提起された「文法新論-派生文法」の原理と、「ほぼ等価の派生方式」を当ブログの「態の双対環」態文法では提案しています。

〇まずはじめに、「態の双対環」態文法が有利な点をしめします。
・動詞(用言)の派生を汎用式で書き表わせます。[挿入音素]の概念が有利です。
 汎用式=動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹・・・
・「態の双対環」文法では、上記の①自他交替派生、②態派生に使う機能接辞群を単語生成接辞と見なし、汎用式の初段階で使います。
 ③相派生、④助動詞派生に使う機能接辞群を構文機能接辞、助動詞接辞だと見なします。
(どちらも派生の方法は汎用式に従い③、④の順に連結します)
★「態の双対環」を一般式で表記する。動詞語幹をDでしめす。
〇能動系の場合:D[-/r]u / D[-/r]e[r]u / D[-/r]ar[-]u / D[-/r]ar[-]e[r]u, 
 動詞例:kak[-]u / kak[-]e[r]u, (書く/書ける、)/kak[-/r]ar[-]u / kak[-]ar[-]e[r]u,(/書かる/書かれる、)
 動詞例:mi[r]u / mi[r]e[r]u,(見る/見れる、)/ mi[r]ar[-]u / mi[r]ar[-]e[r]u, (/見らる/見られる、)
〇D=kak:子音末語幹/D=mi:母音末語幹の両方に対して、共通一般式で概念表記できるのです。
(書ける、見れる、が共に派生成立するのが公平な文法です)
★機能接辞が真に強い有用性を持つならば、母音子音の両語幹の動詞で区別なく機能を派生できる工夫が定着しているのです。
 ([挿入音素]という公平な連結音素を導入したので、子音末/母音末両語幹に対して公平に文法を定義できます)
〇「態の双対環」の強制系、使役系については、-as-接辞前の挿入音素には[-/s]をはさむ。
・強制系:D[-/s]as-
 D[-/s]as[-]u / D[-/s]as[-]e[r]u / D[-/s]as[-]ar[-]u / D[-/s]as[-]ar[-]e[r]u, (見さす/見させる/見ささる/見さされる、)
・使役系:D[-/s]as[-]e-
 D[-/s]as[-]e[r]u / D[-/s]as[-]e[r]e[r]u / D[-/s]as[-]e[r]ar[-]u / D[-/s]as[-]e[r]ar[-]e[r]u, (見させる/見させれる/見させらる/見させられる)
 (ここでは説明を割愛)

 つぎに、動詞文用法の派生について概観する。
★動作相派生:学校文法で動詞活用と呼ぶものを「相派生」だと見なします。
 動詞構文を作るための基本形式が、未然・連用・終止・連体・仮定(已然)・命令で
 しめせる。(動詞単語生成でなく、その動詞を使って動作進捗を描写します)
・一般式:D[a/-]na[k]0i / D[i/-]mas[-]u / D[-/r]u / D[-/r]u- / D[-/r]e{+]ba / D[-(/r)]e([+]yo) / D[(-/)r](e[+]y)o, 
 動詞例:kak[a/-]na[k]0i / kak[i/-]mas[-]u / kak[-/r]u, (書かない/書きます/書く)
 /kak[-/r]e[+]ba / kak[-(/r)]e([+]yo), (書けば/書け、)
 動詞例:mi[a/-]na[k]0i / mi[i/-]mas[-]u / mi[-/r]u (見ない/見ます/見る)
 / mi[-/r]e[+]ba / mi[-/r(]e[+]y)o, (見れば/見ろ)
〇命令:D[-/r]e[+]yo :書け/見ろ、のほか、母子両語幹ともに「書け/見れ」という形態がありえます。
 一般式はそのことにも対応できる。

・相派生の一般式としては、現実的にもう一つの形態があります。
 文語体の時代で「態の双対環」が確立していれば、のたら/ればの話ですが、
 条件接辞:-aba- :未然、/-eba-:已然が使われたと仮定すると、未然:D[-/r]aba, 已然:D[-/r]eba, だったはず。
★一般式:未然:sum[-]aba,:住まば=OK, /tabe[r]aba,:食べらば=OK, と認められるなら、
  /已然:sum[-]eba,:住めば=OK, /tabe[r]eba, :食べれば=OK, が現在まで形を残したかもしれない。
ただし、-aba-, -eba-, は固有の独立した接辞/助動詞ではなく、-a- は[a/-]?か、-ba- は助詞:は、の連濁形、-e- は已然形の接辞:助動詞です。[?a/-][+]ba, -e[+]ba,の膠着形式は不安定です。現在では-e[+]ba- を仮定形と限定して使用するが、
仮定形には:nara=n(i[×])ar[a/-],=[+]なら、を名詞、動詞、形容詞の終止形に膠着する前提条件方式の仮定形がよいと考える。  

<以下削除: 打消し条件では、D[a]na[k=0]iに後付けて、
★D[a]na[k]ar[]aba:書かなからば/見なからば、(打消し未然条件)
★D[a]na[k]ereba:書かなければ/見なければ、(事前打消し已然条件)
 が現在でも理論上は使えるはずです。
また、naiを派生させるのは形状動詞の派生と同じですから、
★形状動詞の条件法一般式:形容詞語幹:Kとして、
 K[k]araba:美しからば、早からば、強からば、寒からば(未然仮定条件)
 K[k]ereba:美しければ、早ければ、強ければ、寒ければ(已然確定条件)
と応用できる。
・形状動詞の相派生を一般式で表すと、
★K[k]ar[y=0]oo/K[k]u・/K[k=0]i/K[k]ereba、
 形状動詞例:早かろう/早く・ない、・ても、/早い、早い・時間/早ければ、
 となる。
 語幹と接辞の間には、必ず挿入音素をはさむという原則を[k]で果します。
:削除終わり>

 前回の古語ク語法接辞:-ak-:は平安期以降の使用例が少ないようだが、誤用例も多いらしい。
★当時に[挿入音素]の概念があったならば、
・一般式:D[-/r]ak[-]u、であるから、[挿入音素]の顕在/潜在を正確にすると、
 例:曰く:iw[-/r]ak[-]u /老いらく:oyu[-/r]ak[-]u /oi[-/r]ak[-]u /願わく:negaw[-/r]ak[-]u 、など正しい発話操作ができるが、
・古き時代では、「く/らく」を未然、連体などに付加するという法則に留まっていたから、
 誤用例:×望むらく:nozom-u-[r]ak[-]u →〇望まく:nozom[-]ak[-]u、
 ×惜しむらく:osim-u-[r]ak[-]u →〇惜しまく:osim[-/r]ak[-]u 、
 ×疑うらく:utagaw-u[-/r]ak[-]u→〇疑わく:utagaw[-/r]ak[-]u 、
 など誤用(連体形に[r]ak-付加の誤用)が広がり、逆に〇印の正解用法(-ak-接辞の用法:[-/r]ak- )がなじまなかったのだろう。

 [挿入音素]の概念が現代でも広まっていないのは残念です。
真に必要な機能接辞ならば、母子両語幹に公平に派生するべきで、[挿入音素]は
そのための鍵になります。なんとか早く普及したいものです。
(つづく)

 

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