態文法:態の全体像を把握する3
2017/06/15(木)
態の全体像を理解するために必要な考え方は、2つの着眼点で動作を識別する
ことです。
①動作の律仕方:自律動作であるのか/他を律する動作であるのか、の識別、
②動作の発着仕方:能動(発する状態)か/所動(受ける状態)か、の識別、
律仕方や発着仕方をそれぞれ二者択一の識別で把握するのが基本ですが、すでに
「態の双対環」では、基本の自律/律他のほか、互律、無律なども説明しています
から、広がりのある律仕方です。ただし、自動詞、他動詞の区別はしないで律仕方
だけに注目します。
また、発着仕方も基本は能動/所動の区別ですが、所動には受け身表現のほか、
可能態、結果態、自発態、進行状態描写、形状様態描写なども含まれます。
逆に能動の基本は態3系(能動系/強制系/使役系)の原形態だけですから、それ
以外の可能態、結果態、受動態などがすべて所動の性質を示します。
(動作主が主語になる構文でも、可能態、結果態、受動態の構造であれば、動作の
辿り着く状態を示唆する意味になる。これは所動の状態です)
動作の律仕方の基本:自律/律他については、次の研究書籍が分かりやすい。
〇今泉喜一:『日本語態構造の研究-日本語構造伝達文法 発展B-』:晃洋書房:
2009年11月20日第一刷発行
〇今泉喜一:『日本語のしくみ(1)-日本語構造伝達文法 S-』:揺籃社:2015年
12月24日 (入門書1の形式)
・今泉本の「日本語構造伝達文法」では、実体による動詞動作を「実体の属性」と見
なす構造を想定する。
★自律動作はまさに実体の属性であり、実体が自律的な動作属性を行う。
★律他動作の構造には主実体と他実体を想定し、主体は他に命ずるだけ、他実体
が命じられた動作属性を自律的に行う。そういう構造を伝達するのが日本語の
描写文法だと説明する。(研究書籍の超簡略説明です)
〇清瀬本も今泉本も進歩的な日本語文法を研究した成果ですし、両著者ともに
膠着語であるモンゴル語を研究テーマとされた経歴があり、ウラル・アルタイ
諸語のなかの同類として日本語を位置づけることができたのでしょう。
表音文字を使うモンゴル語の膠着語文法は単語派生の構造が明確で分析しやす
いのではないでしょうか。
・しかしながら、どちらの研究書も派生連結が「連結子音/連結母音」+機能接辞
に留まっています。
〇「態の双対環」文法では、動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞と一歩進める考え方
で、汎用一般式=動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹+[挿入音素]+機能接辞
語幹+・・・を提起するところまで来ました。
・[挿入音素]の法則は、機能接辞の語頭音が母音始まりならば、[挿入音素:子音
単音]であり、先行語幹の語尾音が子音なら[挿入音素:潜在化無発音]とし、語
尾音が母音なら[挿入音素:顕在発音]する。
・機能接辞の語頭音が子音始まりならば、[挿入音素:母音単音]であり、先行語幹
の語尾音が子音なら[挿入音素:顕在発音]し、語尾音が母音なら[挿入音素:潜
在化無発音]とする。
★[挿入音素]の概念を導入することにより、動詞の機能派生を汎用的に一般化
して把握できるのです。
論旨が横道へそれますが、いま読書中の図書は『漢字が日本語をほろぼす』田中
克彦:角川SSC新書:2011年5月25日第1刷発行、です。この本の著者も研究経歴
に、モンゴル語があります。
日本語研究にはローマ字つづりによる音素解析が重要であると分りますが、日常
の日本語としても「視覚文字に頼らない/音による伝達」、世界に通じるローマ字
つづりの日本語をもっと自分の生活にも使って、便利さを実感すべきだなと感じ
はじめてきた。
★ローマ字(アルファベット26文字)は世界共通でも、発音に合せた文字組み合
せ:つづり方は各国で異なります。ヘボン式ローマ字つづりは世界共通になり
ませんし、日本語の五十音表の並びを乱す原因になります。
訓令式では、第一表には五十音式つづりを載せて、第二表に少数のヘボン式つ
づりを補追し慣例上の用法も残せるようになってはいる。一般使用では第二表
を極力使わないようにすればよいのだろう。
・訓令式だけでは表現範囲がせまいのと、日本語の古典書物のローマ字化などに
対応することを想定すると、田中舘式(日本式)が一番広範囲な五十音表に拡張、
順応できるものと思う。
国際標準規格でも訓令式、日本式の両論併記になっているらしい。
・日本式ローマ字つづりの国際標準規格:ISO-3602(1989年)をベースにして、
日本語のローマ字つづり書籍を増やしていくことが最善策と思う。
(日本行政は日本式を積極的には推進していないようだ。例えばパスポート用
署名にはヘボン式に固執している。また、長母音文字のキー入力にもてこずる
から、本格普及にはPC側の改善が必要なのだと思う)
・当座の措置としては、母音二重化で長音表示に当てるという99式(梅棹式)を
部分限定で借用するか、、、
本論へもどる間もなく余力なしになってしまった。
ここで一区切りします。
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