態文法:解説3:一般式で汎用派生する
2017/08/20(日)
膠着語である日本語の動詞(などの用言)は、動詞「語幹」に「機能接尾辞」を順次「連結していく」ことで新しい意味を「派生」する。
〇「派生一般式」は、解説1で示したごとく、動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹+、、、、+[挿入音素]+統語接辞で表現した。
〇「一般式をさらに汎用式にする」にはどうしたらよいのか。
・「さらに記号化」して脳みそに負担をかけても仕方ないので、動詞派生の汎用式=動詞語幹+[挿入音素]+機能接辞語幹+、、、
と理解し、それぞれの項目を状況にあわせて的確に「一般式組立」ができるように練習しておくことが望ましい。
・そこで練習の目安として「派生一般式の[挿入音素]+接辞の傾向」を覚えておこう。
→自他交替派生、態派生では、挿入音素:[直結ー/連結子音]+母音語頭の接辞、の連結が多く、原動詞は子音末語幹が多いので直結に適した構成である。
→動詞・助動詞派生の未然形、連用形では、挿入音素:[連結母音/・直結]+子音語頭の接辞、の連結が多い。
(終止・連体形以降は母音語頭の接辞になる)
また、助動詞の連結では、[挿入音素]でなく、連用形、連体形での修飾による複合 [+] 連結もある。
★前回の「動詞活用表」を再度、一般式で表すと、(四段活用、一段活用を共通化)
・D[a/-]na[k]0i, D[i/-]mas[-]u, D[-/r]u, , D[-/r]e[+]ba, D[-/r]e/o, または、
・D[-/r]a[+]ba,? D[i/-]nagara, D[-/r]u, , D[-/r]e[+]ba, D[-/r]e/o, と変形することもできる。
★上記2行の一般式を「動詞派生表」と命名し、「活用表」と区別する。
未然形は [a/-]na[k]0i, [-/r]a[+]ba, の連結で「あ」音が付加されるので、連用形と区別しやすい利点がある。
が、口語文法では、未然形に [-/y]ou, 枠を併設して五段活用表とした。
未然相でくくるならば命令形:[-/r]e/o, も未然枠に入れる論理が成立つ。
〇「動詞派生表」を動作相:アスペクトの表現形式と見なす立場で言えば、未然形に繋がる接辞の意味が「未然相」に相当するなら、
上例のように[挿入音素]が[a/-], [-/r], [-/y], でも認めるべきだろう。
★「動詞派生表で動作相:アスペクトを明示する」一例(能動系)を縦順に示す。
①未然相:(打消、禁止、命令、意思・勧奨):D([a/-]na[k]0i, [-/r]una, [-/r]e/o, [-]y]ou, )
②実行相:(テ形、希望、連用形):D([i/-]te[+]~, [i/-]ta[k]0i, [i/-]Ø, [i/-]Ø[+]~, )
③事象相:(終止形):D[-/r]u, (←態に見立てれば原態形態)
④事象修飾相:(連体形):D[-/r]u[+]~,
⑤既然相:(仮定形、可能態):D[-/r]e[+]ba, D[-/r]e[r]u, (←已然概念)
⑥完了相:(終点形、完了形):D([i-音便]ta/da, D[-/r]e[-]ta, )
⑦結果相:(結果態、受動態):D([-/r]ar[-]u, [-/r]ar[-]e[r]u, )
〇強制系、使役系の派生表は省略するが、「派生表の作り方」は動詞語幹:Dを、
→強制系動詞語幹=D[-/s]as- :強制態接辞付きに直し、これを上記の①~⑦のDへ代入すればよい。
→使役系動詞語幹=D[-/s]as[-]e-:使役態接辞付きに直し、これを上記の①~⑦のDへ代入すればよい。
(この派生表は初出の発案であり、各項目の名称がいくぶん奇異に感じられる。 原初の学校文法の活用表でアスペクト表示に見立てるには不足する概念を補完する必要があり、態動詞のアスペクト概念を組込んだ)
★「態の双対環」の概念は、派生表の項目から拾い上げると、
事象相(原形態)-既然相(可能態)-結果相(結果態)-結果相+既然相(受動態)という構成だ。
「双対環」の場合は主客の態構文が主眼となり、原形態-受動態の対向関係と可能態-結果態の対向関係の2組の対向関係で動作事態を把握する。 (「双対環」の詳細は後述稿で説明予定である)
〇「動詞派生表:全動作相」と「態の双対環:態全網羅」とが重なり合う部分を持つのは当然のことだろう。
(現行文法では実行相での複合[+]連結のアスペクト:~書き[+]はじめ、書いて[+]いる、ある、おく、みる、くる、などを重用しすぎており、可能態、結果態などをアスペクトにも態の範疇にも組入れていない)
〇「イ音便」について解説を再掲する。(タ形のイ音便を一般式で表示)
実行相(連用形)のテ形派生の際には、古代文語体:書きて、を口語体:書いて、となじませる。
動詞語幹の末尾音との音便法則ができているので、再掲記事を元に一般式での表現を加えて一覧する。
例:まず、全用法を書き並べる。(完了形:D[i/-]ta の場合)
①母音語幹:→D[i/-]ta →D[-]ta, で音便なし。
:考えた←考え[-]ta ←考え[i/- -]ta. 。
②語末子音(S):→D[i]ta, で音便なし。
:話した←hanas[i/-]ta ←hanas[i/ -]ta.。
★①②は通常通りの派生用法です。
③語末子音 (-k,-g,):→D-k[0i=I]ta, D-g[0i=I]da,
:書いた←ka[I]ta ==kak[0i= I]ta ←kak[0i= I]ta.
:泳いだ←oyo[I]da ==oyog[0i= I]da. ←oyog[0i= I]da.
★これをイ音便という:簡略表記→[I]で示す。(一音素分のイ音)
④特例、一例のみ:行-k の場合:行-k[I]ta ではなく、行-k[0i= Q]taのイ音便になる。
:行った←i[T]ta==i[Q]ta ←ik[0i= Q]ta ←ik[0i= Q]ta.
★これを促音便という:簡略表記→[Q]で示す。(一音素分の詰った声、促音)
⑤語末子音(-t,-r,-w):→D(-t,-r,-w)[0i= Q]ta,
:立った←ta[ Q]ta==tat[0i= Q]ta, ←tat[0i= Q]ta,
:止った←toma[ Q]ta==tomar[0i= Q]ta, ←tomar[0i= Q]ta,
:言った←i[ Q]ta==iw[0i= Q]ta ←iw[0i= Q]ta,
★これを促音便という:簡略表記→[Q]で示す。(一音素分の詰った声、促音)
⑥語末子音(-b,-m,-n):→D(-b,-m,-n)[0i= N]da,
:結んだ←musu[ N]da==musub[0i= N]da, ←musub[0i= N]da,
:読んだ←yo[ N]da==yom[0i= N]da←yom[0i= N]da,
:死んだ←si[ N]da==sin[0i= N]da ←sin[0i= N]da,
★これを撥音便という:簡略表記→[N]で示す。(一音素分のn鼻音、撥音)
〇「イ音便」全体を、D[0i= IQN]ta/da(te/de)として簡略表記するのも勧めたい)
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