態文法:動作を律する全法則
2017/08/05(土)
7月の投稿:態文法:動作を律する法則を含めて、動作意図の在り方、律仕方を考察してきたが、やはり肝心な部分の説明に不足を感じる。
不足項目を箇条書に掲げてから補完説明したい。
①受動態の律しかたを明記すること。
②「動作を律する全法則」の概念は日本語文法の基幹
③動詞に各種接辞を付け替えて意味の違いを吟味する
(1)受動態の律しかた(:結果律、果律)を明記すること
受動態の動作概念を的確に表現したいと青年時代から思ってきた。
受動態を使うと関係する主体、客体、対象体の誰でもが主格主語になった構文が可能になる。
この受動態動詞の動作に対する律しかたをどう表現すべきか。
日本語の受動態は、受身表現だけの態ではないから、概念を命名するに工夫が必要になる。
★受動態の派生一般式=D[-/r]are[r]u ←D[-/r]ar[-]e[r]u :書かれる、食べられる、
結果態接辞 -ar- のあとに可能態接辞 -e- が結合した動詞であり、文語体では結果態が受動表現を担っていたから、
基本的には結果態の働きが意味を形成する。(受動態の本務は、結果現実化した状態が関与する主部要素に如何に態応するかを述べることである)
〇結果態動詞の派生一般式=D[-/r]ar[-]u :書かる、食べらる。
これから、結果態の律しかたは、動作結果(事象)が関係する登場人・物:実体を律
すると見て、結果律(果律)と命名するのが的確だろう。
・果律:動作結果が「ある」:書くある/食べるある、が原初的な派生形態なのだ。
〇受動態動詞は上記★行のように、結果態と可能態の結合で派生するから、
受動態の律しかたは、結果律+互律(可能態の一側面)、または結果律+已然の意味
と解釈するのがよいだろう。(流る/離る→流れる/離れるのように、-e[r]- は結果の継続状態を述べることもある)
★受動態構文で「主語」と「事象・動作結果」との関わり方で意味が決る。
構文例:動作主+受動態=実績・習慣的可能、 客体主語+受動態=(間接)受身、
対象主語+受動態=直接受身、 事象主語+受動態=自発(主語、動詞は限定的)
別話者「動作主+受動態」=尊敬表現、 という意味構造である。
〇受動態は「動作結果」に対する各実体の関わり方を表現する役割だから、自・他動詞に関係なく、両方の動詞で派生可能なのです。
ここが西欧語の受身概念と異なる。
(英語では動詞を過去分詞とし、動詞の律しかたを他動詞・受身限定に絞り込んだ「直接受身律」概念に留まる。
それだけ主語律一本槍なのです)
根源的に自動詞・他動詞の区別なく、律しかた(動作意図)に注目すると、
①能動態動作の律仕方:自律動作(動作主体の自律的動作)をする。
②強制態動作の律仕方:律他動作(主体が他者に自律動作をやらす)をする。
③使役態動作の律仕方:律他・互律動作(主体が他者に自律動作をやらせる)を
する。(主体が手助け、介助することも含む)
④可能態動作の律仕方:互律動作(主体と対象との相互自律動作)をする。
(対象が持つ動作規則をうまく働かせて、主体が自律手助けする)
⑤結果態動作の律仕方:果律動作(動作結果に各実体がどう関わるか)を表出する。
⑥受動態動作の律仕方:果律・互律動作(動作結果に各実体がどう関わるか)を
表出する。(口語では結果態でなく、通常、受動態が使われる)
以上のような律しかたが基本となる。
(強制・可能態は使役態動詞と同形だし、強制・受動態、使役・受動態など二次派生
、三次派生法も日常的に誰もが経験・使用している。)
(2)「動作を律する全法則」の概念は日本語文法の基幹
残念ながら、現状の日本語文法では、態動詞、動詞全般の動作の律しかたを根源的な見方で解説する書籍がないようです。
★先に進む前に、律しかたの⑦を載せます。
⑦律変換用の無律化接辞:-ak- 、(一般式=D[-/r]ak[-]u →概念外延名詞化、無律概念化):「古語ク語法」と呼ぶ。
例:笑う(自律)→笑わく(概念化)→笑わかす(自律他動詞)→簡略されて→笑かす。
(笑わす:他者が自律で笑うようにさす。笑かす:他者が思わず笑うようにさす。失笑を誘うより強烈ギャグ!)
WARAW[-/r]ak[-]as[-]u →WARA(W[×]a)k[-]as[-]u →WARA[k]as[-]u →:(接辞 -ak- のk音が[挿入音素:[k] ]になった)
例:寝る(自律)→寝す(他動:不安定)→寝せる(互律:安定)→寝さす(律他:大人安定)→寝かす(無律・他動詞:幼児無律)
→寝かせる(互律:幼児安定)
NE[-/k]as[-]u 、 NE[-/k]as[-]e[r]u 、のように[挿入音素:[k] ]は定着していると判断する。
★形容詞の動詞化、つまり形状動詞も
⑧無律化[k音]を[挿入音素:[k] ]に使い、動作意図を消して形状属性に特化する。(K語幹は母音末なので [K] 挿入でOK)
形状動詞の派生一般式=形容詞語幹:K+[挿入音素:[k] ]+ar-接辞、で構成する。
(派生には[挿入音素]が必須法則であり、形状動詞も例外ではありません)
例:TAKA[k]0i / TAKA[k]u[-]na[k]0i / TAKA[k]ar[0i= Q]ta, ==TAKA[k]a(r[0i=) Q]ta,
(高い/高くない/高かった)。
例:YOROKOB[-]as[i]Ø[k]0i /YOROKOB[-]as[i]Ø[k]u[-]na[k]0i, /YOROKOB[-]as[i]Ø[k]a(r[0i=) Q]ta,
(喜ばしい/喜ばしくない/喜ばしかった)。
〇以上、律しかた:①~⑧までが態動詞、自・他動詞、形状動詞(用言)での基本法則です。
★動詞派生のように、語幹と接辞が連結するとき、両者の間に[挿入音素]を挟
み込むのが大原則です。 この大原則を忘れて「可能動詞は子音語幹動詞だけ」としたことで、「ら抜き言葉」が長い年月にわたり冷遇されています。
例:可能態の派生一般式=D[-/r]e[r]u :Kak[-]e[r]u /TABE[r]e[r]u, :書ける/食べれる、これらが正当な派生と認められるべきです。
〇可能態の動作可能は、動作する際の可能意思・可能意気込みを表現します。
書けた/食べれた、完了形でも「動作した際の可能」を述懐する表現です。
〇受動態の結果可能は、動作結果(を見通して)の可能であり、「実績や習慣・規則
としての可能」も表現します。
〇公式の会議では、個人的な「動作した際の可能」よりも、「実績や規則に関わる可能」を議論することが多くなるのは当然です。
両方の可能を使い分けることが必要なだけで、日常の場でも区別しつつ共存できる言葉です。
(3)動詞に各種接辞を付け替えて意味の違いを吟味する
「態の双対環」で態動詞のすべて(能動系、強制系、使役系の原形態/可能態/結果態/受動態)を派生させたり、「双対環」では派生 できない動詞が見つかると、その理由を調べたり、することで「動作の律しかた」を思考実験してきました。
派生の一般式が成立し、接尾辞の律仕方の意味が納得できるか、などを拠り所にまとめています。
例:見える、は、見る/見れる/見らる/見られる、からの派生ではない。
見る→見す→見せる、と、見さす/見させる、との違いは?
寝る→寝す→寝せる→寝さす→寝させる→寝かす→寝かせる、の意味の違いは?
などを思考実験した結果です。
以上。
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