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2017/09/14

態文法:態の律仕方を伝える2

2017/09/14(木)

 今回は、律仕方のうち「果律」:結果態、「果互律」:受動態について解説する。
★態動詞の動作の仕方:一般式=動詞語幹:D+[挿入音素]+態接辞
①能動原形態:D[・/r]u→動作:Dを「自律」でする。(自・他動詞ともに)
②可能態:D[・/r]e[r]u→動作:Dを「互律」でする。(主体・客体が互いに)
③結果態:D[・/r]ar[]u→動作:Dの「果律」がある。(結果が主・客に)
④受動態:D[・/r]are[r]u→動作:Dの「果互律」がある。(結果が主・客全体に)
〇文語体でも、④「書かれ」:未然・連用、③「書かる」:終止という下二段活用で使
 われていたから、結果・受動の形態を知っていたはずだが、次への変移:下一段
 化(終止・連体の同形化と連動)して④「書かれる」終止形態:独立単語になるた
 めには大きな言語上の社会実験を経なければならなかった。
〇今でも、ひらがな解釈に留まり続ける口語体の学校文法や国語辞典では、接辞
 形態:-ar-や-are-を音素把握していないし、説明できていない。

→「二段活用から一段活用への変移」については深入りしないが、可能態接辞が
 二次派生する実態を指摘しておこう。
★注目点は一般式:上例①~④、(前回投稿記事の強制系⑤~⑧、使役系⑨~⑫)
 の偶数丸数字の動詞には、必ず可能態接辞が付く。二次派生している。
→③結果態から④受動態への二次派生:-ar[]e[r]uの方法は、①→②と同様に
 ②可能態接辞-e-を汎用的に使用し二次派生の連結をするものである。
→同様に前回記事で⑤強制→⑥使役(強制可能)、⑨使役→⑩使役可能などでも
 ②可能態接辞-e-を汎用的に使用し二次派生の連結をするとを記述した。
★すべての動詞(事象動詞:D[・/r]u、D[・/r]ar[]u、D[・/r]as[]u)には、
  可能態接辞-e-/-e[r]u-を付加して二次派生させることができる。
→可能態接辞-e-を付けると、相・アスペクト的には「動作実行、已然状態」を表
 出できる。

 実際の受動態例文を見ながら、果律、果互律の律仕方を解釈する。
→結果態派生:D[・/r]ar-で一瞬の間をおいてから、可能態接辞:e-を連結して
 受動態:D[・/r]ar[]e-を生成すると思いながら意味を考えてください。
例:受動態の機能は「果互律」であり、「受身」専用の意味ではない。
「昨夜、隣家が泥棒に(入られ)た」:hair[]ar[]e-
「買物メモを(渡され)たが、夕方には買物自体を忘れていた」:watas[]ar[]e-
「熱くてコーヒーが(飲まれ)ない」:nom[]ar[]e-
「ゆっくりして(いられ)ない」:i[r]ar[]e-
「旅行に(行かれ)なくなった」:ik[]ar[]e-
「彼は納豆が(食べられ)る」:tabe[r]ar[]e-
「滝に(打たれ)(させられ)る」:ut[]ar[]e[s]as[]e[r]ar[]e-
「妹が小鳥を猫に(殺され)た」:koros[]ar[]e-
「そこに(立たれ)ると、何も見えない」:tat[]ar[]e-
「橋が新しく(架け替えられ)た」:kake[+]kae[r]ar[]e-
→受動態は、「動作結果のある、在る、有る」ことと、動作主体、客体、対象、事象
 (物の道理、自然の摂理)などとの互律関係を描写する機能がある。
 そのため、動作結果に至る要因や心理を説明する語句があると分かりやすい
 構文になる。
→一方、可能態:D[・/r]e[r]u、は、受動態:D[・/r]ar[]e[r]u、から結果態
 接辞:ar-を取り外して現れる形態と同じになる。(俗称「ら抜き」というが、
 本当は「ar抜き」だ) 可能態:D[・/r]e-は「動作:Dを互律でする」ことを表現
 する、つまり「事象:Dでの即応的な動作互律」を表現対象にしている。
→動作結果を洞察するような配慮を表すのは受動態の機能である。
例:泥棒が(入れ)ないように施錠する:hair[]e-、外出時の即応的な対策。
 (入られない)対策:hair[]ar[]e[]na[k=0]i、には厳重な恒久対策が必要。
 納豆が(食べれ)る:tabe[r]e-、納豆を食べる(動作)ができる。
 関西では納豆が(食べられていない):tabe[r]ar[]e[]te[+]i[]na[k=0]i、
 食べる習慣、実績・結果(=食べる+ある)がないという意味を表す。
〇行ける/行けない、考えれる/考えれない、可能態での可否表現をした場合、
 動作に対して即応的な軽い気持・意思だけの反映と感じる。
 だが、行けた/行けなかった、考えれた/考えれなかった、完了形可能態なら、
 結果を含めた述懐・回想だとの実感が強くなるが、あくまでも出来事の一場面
 での可否の対応行動に限定した述懐、個人体験の述懐だと感じられる。
〇行かれる/行かれない、考えられる/考えられない、受動態での可否表現は
 動作に対して結果状態まで予測・経験した結論的な判断だと感じる。
 受動態の場合には、行かれた/行かれなかった、考えられた/考えられなかっ
 た、と完了形になっても、時制の差を感じるが、出来事の結論的な結果に影響し
 ていないと感じる。熟慮結論型の可否判断、習慣・実績の判断表現である。

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