態文法:態の律仕方を伝える4
2017/09/27(水)
今回も可能態接辞:e-に関する機能について新論を記述する。
〇文語文法では、「え音」の已然形(すでにそうなっている事態を表す)の概念は
係り結びの用法で使うのだという印象が強い。 が、単独でも使える。
〇現代の学校文法でも、仮定形(そうなっていると仮定する)に接辞:eba-が使
われる。「え音」の已然形の概念が潜在するのだが明確な解説はない。
★今回の伝える主題は、動詞活用表の「命令形」に対する律仕方である。
江戸期の国学者・本居春庭(「詞八街」、「詞通路」)が最初に表した活用表は、
「未然・連用・終止・連体・已然」の5形態だったので、後継学者が「命令形」を追加
した。学校文法でも「未然・連用・終止・連体・仮定(已然)・命令」の6形態で継承
する。
→当ブログ態文法では、6形態「活用表」が、動詞の相(アスペクト)派生の模式表
なのだと解釈する。その意味で「国文法の工夫の産物」と評価する。
→模式表の価値を高めるためにも次の2点を明確にしたい。
①追加した「命令形」が配置される位置は、6形態の6番目でよいのか?
②配置を決めるためには、「命令形」が意味する「動作の律仕方」を定義する必要
がある。特に現代口語では子音幹動詞と母音幹動詞の命令形が見かけ上の形態
が違っているので、注意深く一般化して定義すべきだろう。
→では、「命令形」の配置と律仕方の検証・考察を開始する。
★文語文法の命令形(一般形式):
D[・/r]e:→D[]e-:(子音幹動詞):書け、読め、走れ、飛べ、(已然手前の概念)
D[i/・]Ø[・/y]o:(母音幹動詞):見よ、食べよ、乗せよ、走らせよ(連用勧奨的)
〇文語での命令形は、「連用以上で已然手前の概念」を表現するようだ。
★口語文法の命令形(一般式):
D[・/r]e[・/y]o:(子音幹・母音幹両動詞):書けよ、読めよ、見れよ、乗せれよ
D[・/r]e【省略[・/y]o】:→D[]e-:書け、読め、走れ、飛べ、(子音幹動詞)
D[・/r]【省略e[・/y]】o:→D[r]o-:見ろ、食べろ、乗せろ、(母音幹動詞)
〇口語の命令形は、「終止連体以上で已然手前の概念」を表現するようだ。
→以上の考察から、口語体の命令形は、
★動詞相派生の順序として「未然・連用・終止・連体・命令・仮定(已然)」の配置が
ピタリなのだろう。
★命令形の一般式:D[・/r]e/o:の形態について吟味すると、
←D[・/r]e【省略[・/y]o】:子音幹動詞での変遷、
←D[・/r]【省略e[・/y]】o:母音幹動詞での変遷、
が省力化・短縮化の結果であると説明できる。この一般式表示で問題ない。
〇可能接辞:e-(律仕方が互律)、[・/y]oo接尾辞(勧奨の互律動作)に近い呼掛
け接辞:[・/y]oと見なせば、「互律動作」形態の動詞でも相手に対する指示命
令の言葉になる。
つまり、命令一般式:D[・/r]e/o:の形態は、一見すると異形態であり不安定
に思えるが、実際は共通形態から生まれたものだといえる。
時代変化で子音幹/母音幹での省略化に違いが生じたが、基本の相派生の位置
も律仕方の意味も矛盾がないと分かる。
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