« 態文法:態の律仕方を伝える4 | トップページ | 態文法:態文法を組み上げる1 »

2017/10/08

態文法:形状動詞:こわかる?こわがる?

2017/10/08(日)
 態文法:形状動詞にも[挿入音素]が必要か態文法:動詞強制形由来の形容詞語幹 で記述したように、
形容詞も形状動詞として扱う。
 落語ネタを短縮して一行で書き出すと、
「源さんは饅頭がこわかったが、こわがった後ではお茶がこわい、と言った」
を材料に考察してみよう。
こわかる?/こわがる?/こわい、の中で形状動詞の範疇に属すのは、
こわい/こわかる?、であり、「こわがる」は動作動詞に属する。
〇形状動詞の派生一般式:形容詞語幹:K+[k]+ar系接辞、
 こわい:kowa[k=0]i、こわかった:kowa[k]a(r=0[Q])ta、
 こわかろう:kowa[k]ar[・/y]oo、
 こわかる?:kowa[k]ar[]u?、←形状動詞の終止形には不採用(動作動詞と紛
 らわしい)
・「こわかる」は無律化したとはいえ、「饅頭」がこわかる動作をしたようにも感じ
 られ、やはり末尾に「る」音が付くと形容詞には向かない?
 だから、「る」音なしの地方言葉で「こわかぁ」と発話があれば共感できる。
 (あくまでも感情感覚の表現であり、こわがる動作の表現ではない)
 一方、動作動詞として考察すると、
★「こわがる」は動作動詞であり、「こわい」という感情が何らかの身体動作に
 よって体外に表出されることを意味している。
→感情の動作動詞として広く使われる接尾語:「+がる」と定義できる。
・名詞+がる:不思議がる/残念がる/気の毒がる/迷惑がる/
 (husigi[+]gar[]u/zannen[+]gar[]u/kinodoku[+]gar[]u/、)
・助動詞+がる(たがる):書きたい→書きたがる:kak[i]ta・gar[]u、
・動詞・形容詞+がる:楽しがる/うれしがる/痛がる/寒がる/
 (tanosi[+]gar[]u/uresi[+]gar[]u/ita[+]gar[]u/、)
〇助動詞:たい/たがる、は、動詞に連結する機能接辞として派生一般式で、
例:D[i/・]ta[k=0]i:形状動詞(状態形容の動詞)
 書きたい:kak[i]ta[k=0]i/食べたい:tabe[]ta[k=0]i、
例:D[i/・]tagar[]u:感情の動きを身体動作で表そうとする動作動詞であり、
 書きたがる:kak[i]tagar[]u/食べたがる:tabe[]tagar[]u、
という「挿入音素:[i/・]の連結」で表記できる。
→古語辞典で調べてみると、「まほし」、「たし」、「たがり」は古代にも記録がある。
 特に注目したのは、「~たい」が発話者の希望感情だけでなく他者の感情記述に
 も適用したし、「~たがる」は動作動詞として発話者、他者ともに適用したらし
 いこと。 また、「ク語法」の無律接辞:-ak-が盛んな時代と重なるのだが、形容
 詞の「シク活用/ク活用」の混在時代でもあり、形状動詞活用表の整理が遅れて
 いて、「こわかる」が「こわがる」生成に寄与・影響したと論じる条件はなかった
 かもしれない。
〇国語辞典で「がる」:接尾語(複合単語)として記載があり、「たい」/「たがる」:
 助動詞(たがる:連結した形態で機能接辞)として記載がある。(助動詞活用表)
〇助動詞たい:ta[k=0]i、は形状動詞の形態で用いられるし、動作動詞と見られ
 る助動詞たがる:ta・gar[]u、も、どちらも機能接辞として差別なく使われる。
→以下、記述の整理のため補足書きする。
 「がる」接尾語を分析するつもりで、kowa[・/g]ar[]uと想定してみた。
 論証するには、husigi[g]ar[]u、nozomasi[g]ar[]uなどを含めて
[g]の意義を見つけ出す必要がある。しかし、見つからない。
 また、成立する子音挿入音素には対応する機能接辞が存在するはずで、
例:[・/r]:自律:ar[]u/s[]u/sur[]uの動詞統語接辞-u-との連結用。
 :[・/s]:律他:as-/ase-の強制、使役接辞との連結用。
 :[・/y]:互律:ay-(古語可能接辞)、現在のmi[y]oo/tabe[y]oo:勧奨推量
  の接辞との連結用。
 :[・/k]:無律:ak-(古語ク語法)、現在の散らかる:tir[]ak[]ar[]u/寝かす
 :ne[k]as[]uとの連結用。
などのように、現用の[挿入音素]には対応する機能接辞が存在しており、それに
由来する「子音」が[挿入音素:子音]で使われている。
 ところが、[・/g]ar[]uには、ag-とかの接辞が成立せず、何律の動作律仕方に
なるのか思いつかない。だから、派生形式でなく、複合化の個別的な接尾語の位
置付けで使われるのだろう。
〇なお、古語「ク語法」に対する先行研究で大野晋(古語辞典)が記述する内容:
 「あこがれ」の原意は「あく・がる」であり、「ak-」は場所を意味し、「gar-」は離
 れるを意味する。「この場を離れる高い願望を表す」と解説する。
(古語辞典に:「ある、かる、」が「離る」だと解釈するのを確認した。だが、がる?は)
この「ク語法」に関わる「あく」推論には、当方は共感がわかない。
当ブログ文法では、
・「接辞:ak-は動作意図を無律化し動名詞化する機能」と捉える。
・「gar-」については前述のように的確な解釈を示し得ない状態だ。
・追記:2021/1/3 :〜したげ・ある=[+]g(e[x])ar[]u の縮約結合かと思う。
 こわげ・ある=こわがる なのだと思う。

« 態文法:態の律仕方を伝える4 | トップページ | 態文法:態文法を組み上げる1 »

日本語文法」カテゴリの記事

態文法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 態文法:形状動詞:こわかる?こわがる?:

« 態文法:態の律仕方を伝える4 | トップページ | 態文法:態文法を組み上げる1 »