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2018/03/31

態文法:二段活用から一段活用へ

2018/03/31(土)

 前回、態文法:未然形はあるのか?5をしめくくりとしたが、少し追記したい。
動詞語幹の子音・母音の「う動詞、る動詞」区別についてインターネット検索して
みると、判別法の質問やら、回答やら多数の情報が出てくる。 連用形、已然形の
形態から[r]uを付加して独立した動詞という視点での考察は見当らない。

 前回の「る動詞」を判別する方法を要約再掲すると、
〇動詞語尾音が「~i[r]u」、「~e[r]u」の場合、る動詞である可能性が高い。
★当ブログが推奨する判別法は、(現代口語の日本語話者に適合する方法)
①活用形「連用形-終止・連体形-已然形(仮定)」の語尾音をローマ字表記する。
②語尾音:「i-u-e」ならば、う動詞。(四段・五段活用、子音語幹動詞)
③語尾音:「i-i[r]u-i[r]e」ならば、る動詞。
 (いる動詞:上一段活用、母音幹動詞:[r]を[挿入音素]とみなす)
④語尾音:「e-e[r]u-e[r]e」ならば、る動詞。
 (える動詞:下一段活用、母音幹動詞:[r]を[挿入音素]とみなす)
(いる動詞=連用形「~i」を独立動詞に派生させるため動詞接辞:[r]uを付加)
(える動詞=已然形「~e」を独立動詞に派生させるため動詞接辞:[r]uを付加)
例:原動詞:落つ→いる動詞化=落ちる、原動詞:投ぐ→える動詞化=投げる。

 今回の追加分は、文語文法の二段活用での連体形:「~u[r]u」、「うる」動詞に
ついて考察を記す。(修正:古語連体形:「~u[r]u」表記とする。04/30)
★文語文法での動詞二段活用は、連体形が終止形から離れた形態を用いる。
①動詞の四段活用では語尾音:「i-u-u-e」で、終止と連体は同形だったが、
②二段活用の語尾音:「i-u-u[r]u-u[r]e」で、連体形が独立単語化してしまい
 已然形が連体動詞側での活用になる。(命令形は元の連用形側にもどる)
③二段活用の語尾音:「e-u-u[r]u-u[r]e」で、連体形が独立単語化してしまい
 已然形が連体動詞側での活用になる。(命令形は元の連用形側にもどる)
この状況をみると、原動詞:落つ、投ぐ、の活用しにくさが相当なものだったのだ
ろう。 落つ→落つる、投ぐ→投ぐる、連体動詞として独立させたくなるほど、原
動詞:落つ、投ぐ、は扱いにくい形態だったのだ。
(うる動詞=連体動詞:例:落つる:otu‐[r]u、投ぐる:nagu‐[r]u、を生成すれば
 已然形も「落てば、投げば」でなく、「落つれば、投ぐれば」を生成できる)
・二段活用は、連体:うる動詞が大活躍していき、段々、終止形が連体形に合流し
 、その扱いにくい原動詞が使われなくなりはじめると、連体動詞の存在理由が
 薄れてくる。
・連体動詞の形式が当り前になると、連用側と段差、不釣合いに関心が移り、
 連用:いる動詞、已然:える動詞のほうが、連体動詞(うる動詞)よりも活用全体
 の流れを円滑にできて、一段活用の構成にできる、と気づいたのだろう。
★参照用に変遷表を挿入追記しました。 動詞活用の変遷

→文語時代を、「いる」動詞、「うる」動詞、「える」動詞を通して分析してみた。
 二段活用から一段活用への変遷は長い期間がかかっているが、簡素化と明解さ
 の方向に進んだ。(反面深刻な影響を生み出したのは、連用・已然による母音語
 幹動詞の成立と終止・連体の同形化により動詞活用の相・アスペクト感覚が不
 明瞭になってしまったことだ。それでも、四段活用動詞を含めれば、相感覚は
 全滅でなく半死半生だということを覚えておきたい)
〇連用動詞、已然動詞、連体動詞という言い方は、奇異に感じるかもしれないが、
 動詞活用の列から新しい動詞が生まれたこと(新しい終止形ができる)に注目
 してほしいからです。
★連用:いる動詞、の潜在的な意味を考察すると、
・落ちる、起きる、足りる、過ぎる、など自動詞的で、瞬間的な一過性の動作に適
 合するようだ。「混じる/混ぜる」のように、いる動詞/える動詞で自他交替す
 る場合もある。
★已然:える動詞、の潜在的な意味を考察すると、
・投げる、捨てる、比べる、流れる、寄せる、受ける、届ける、答える、などの他、
 古くは、隠る・恐る・忘る・垂る・分く、など四段活用だった動詞が下一段に変っ
 ていて、已然形の概念自体が「動作の完遂」の意味があるから、どんな動詞にも
 付加できる形態だ。 現代語では、係り結びを回顧しても意味がない。
★連体:うる動詞、の潜在的な意味を考察すると、原動詞形「u」に[r]uが連結し
 たとすると、母音語幹動詞あつかいで「落つ・ます/落つ/落つ・る/落つ・れ」
 、「~ur[]u」の子音語幹でも、「落つ・り/落つ/落つ・る/落つ・れ」となり、
 ほとんど活用しても意味が涌かないが連体形として動作事象の強調にはなる。
 現代語ではほとんど使われない。
★なお、当然ながら、
・「ある」動詞(「ある/あす」動詞、「おる/おす」動詞、など)もあるわけだが、これ
 は、未然動詞に位置づけしないで、態動詞、自他交替動詞を派生する、という範
 疇に入れたい。
以上。

前回の記述で二段活用に関する考察がなかったのでこれを追記しました。

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