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2018/06/05

態文法:派生/複合?:継続助動詞:afu

2018/06/05(火)

 古語辞典に継続の助動詞:あふ、afu←合うの原意、が付録一覧表に載る。
(掲載の助動詞形態は:ふ、であり、未然形に連結するとある)
造語例は上代にあり、住まふ、語らふ、戦ふ(叩く+合う)、散らふ、など、継続し
た動作を意味する単語(四段活用)が見つかる。
動詞:あう(合う、会う、逢う、和う、敢う、饗う、の原意)は、自立動詞(四段活用、
下二段活用)でもあるから、通常の機能接辞とは違いがある。
 では、この助動詞をかな分析/音素分析で詳しく調べてみよう。

<かな分析>
四段動詞:住む、語る、たたく、散る、の動作継続を表現するのか、くり返し動作
の事象としての表現なのかで接続様式が異なる。
・動作継続:連用形(住み、語り、たたき、散り、)[+]あふ、の連結(複合の単語)、
 →連用形「住み合う、語り合う、たたき合う、散り合う、」、動作のくり返し。
・事象継続:終止形(住む、語る、たたく、散る、)[・]あふ、の連結(派生、造語)、
 →終止形との連結では語尾:う音と接辞語頭:あ音が母音直結する結果、調合さ
  れ、う音が落ちて、「住まふ、語らふ、戦ふ、散らふ、」という新概念の動詞にな
  る。
(未然形(住ま、語ら、たたか、散ら、)[・]ふ、と解説する辞典も多いが、この説明
は、二段活用(、一段活用)動詞に適用できないし、その造語例もないから不適当
で、発展性もない。この接辞:afuは特定の動詞語幹と連結して継続意味の新造語
を作るのに使われたもので、接辞の役割は済んでいるようだ)

<音素分析>
 古語辞典に継続・繰り返しの助動詞:ふ、とあるから、普通に検証すると、
〇助動詞:ふ、未然形を認めて連結するならば、
・一般形式=動詞語幹[a/・]機能接辞、で表せる。
 子音幹:D[a]fu→住まふ、語らふ、戦ふ、散らふ、
 →子音幹動詞・未然形の条件なら成立する。新造語である。
 母音幹:D[・]fu→?見ふ、?食べふ、?似ふ、
 →母音幹動詞では意味をなさない。 (接辞形態が「ふ」ではダメ)
〇接辞を:afu、あふ、と見直し、母音語頭の接辞に対応すると、
・一般形式=動詞語幹[・/r]afu、で表すのが通例の派生形式だ。
 子音幹:D[・]afu →住まふ、語らふ、戦ふ、散らふ、
 →子音幹で未然形を考慮しなくても新造語が成り立つ。
 母音幹:D[r]afu →?見らふ、?食べらふ、?似らふ、
 →しかし、母音幹動詞で意味が成立しないので、別の考察が必要だ。
〇接辞:afu、あふ、を、自立語:合う、会う、と見なして、
 (子音幹)派生/(母音幹)複合、の変則的な連結様式と考えると自由度が益す。
・一般形式=動詞語幹[・/+]afu、という文法的無音の[挿入音素]を想定する。
 子音幹:D[・]afu →住まふ、語らふ、戦ふ、散らふ、
 →子音幹で新造語が成り立つ。(未然形を考慮しなくてよい)
 母音幹:D[+]afu →見合ふ、食べ合ふ、似合ふ、
 →動作連用の意味合いで、見合い、食べ合う、似合うなどの複合語を生成した。
(古語での造語用例で助動詞扱いであったが、現代口語では接辞として常用は
していない)
〇念のため、連用形で接辞:afu:(自立動詞)との複合を想定し一般化すると、
・一般形式=D[i/・]Ø[+]afu、で考察できるから、
 子音幹:D[i]Ø[+]afu、→住み合う、語り合う、たたき合う、散り合う、
 →動作状態の継続、交互くり返しの描写ができる。
 母音幹:D[・]Ø[+]afu、→見合ふ、食べ合ふ、似合ふ、
 →同様に動作状態の継続、交互くり返しの描写ができる。
(古語での造語用例で助動詞扱いであったが、現代口語では接辞として常用は
していない)

 以上のように、かな分析と音素分析の比較検証を細かく展開すれば、音素分析
の方法が有利だとわかるはず。 特に、動詞派生の場合には、一般形式の表現を採
用することで子音幹・母音幹の両動詞を一度に検証できるから、接辞の汎用性の
有りか、無しかも自分で確実に感じとれる。
また、古語や現代語に対して一貫した音素分析の方法が適用できるから、文法の
効力も実感できる。

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