« 態文法:哲学でする動詞活用5 | トップページ | 態文法:哲学でする動詞活用7 »

2018/09/09

態文法:哲学でする動詞活用6

2018/09/09(日)

9.正然・已然の連用形に絶妙な力
 当態文法では、自動詞と他動詞の活用形に区別を与えず、動作意図を示す「律仕
方」の解釈でも、能動系なら「自律」、強制・使役系なら「律他・律他互律」と定義し
て、自他区別をしない法則である。
しかし、「正然」連用形には隠れた選択力が働いてるので、法則を追加すべきかも
しれない。

→今回の考察で、自他交替と正然・已然の連用形との絶妙な関係を調べる。
〇ネット検索すると国語学の研究分野で議論されている問題のなかには、
(1)「直売所でイチゴが売っている」→正然連用形 (イチゴが売る)は不成立。
(2)「ケーキが六等分に切れた」→已然連用形(ケーキが切ってある)正然連用形。
のように、他動詞でありながら連用形になると擬似的な自動詞用法が現代の会話
文で成立するという。

★当態文法の「動作律仕方」定義を再掲すると、
・能動系→自律(自他共に:対物、対人に関わる)→自らの動作意図で律する。
・強制系→律他(対人他動詞になる)→対他に指示し対他の自律動作を律する。
・使役系→律他互律(対人他動詞)→律他し、完遂に必要なら手助けする。
・可能態→互律(人・物・事の相互律)→完遂に向け相互尽力する。
 「已然」連用形も互律が適用可能。
・結果態→果律(結果事象が生ずる)→動作結果、結果物が律する。
・受動態→果互律(結果事象が関与する人・物を律する)→動作主:実績、動作習慣
 、客体:受け身、対象物:受け身、自発、習慣、第三者発話:敬語。
が基本定義である。
・使役受動態には律他互律果互律=使役果互律として複合の律形態で解釈する。

→「正然」連用形に対しての律仕方は未定義であり、考察をして新提案しよう。
〇動詞派生を一般形式で表記する。
・正然連用形の一般形式:D[i/・]te、このうち、対物他動詞の連用形を考察。
 売って、切って、書いて、読んで、立てて、見て、食べて、壊して、盗んで、叩いて
 、返して、などが対物他動詞の正然連用形に該当する。
・通常、他動詞の対象物を主格に立てる構文では、受動態表現にするはずで、
 受動態連用形の一般形式:D[・/r]ar[]e[i/・]te、で示すと、
 売られて、切られて、書かれて、、、壊されて、盗まれて、叩かれて、返されて、
 などとなる。(受動態:are→果:ar、互律:e)
・上記の受動態連用形から結果接辞:arを外すと、可能態連用形・已然連用形にな
 る。已然連用形の一般形式:D[・/r]e[i/・]te、の形態で、
 売れて、切れて、書けて、読めて、立てれて、見れて、、盗めて、叩けて、返せて、
 などとなる。(可能態・已然:e→互律、完遂尽力)
★已然連用形は動作完遂の経過での主体・対象物の行動を肯定的に考慮する動作
 を表現する。(売れて、切れて、書けて、盗めて、叩けて:人も物も肯定協力的)
・受動態連用形は動作事象の結果に反応・態応する心情、感情を表出する準備表
 現である。(売られて、切られて、書かれて、盗まれて、叩かれて:動作結果が支
 配的である) 普通、結果に由来する喜怒哀楽の描写が後続することが多いが、
 「イチゴが売られ、」「ケーキが切られ、」「物 書かれ、」が単独で語られると、対
 象物に対する日常、必然の習慣行為だと述べているように感じられる。
〇さて、正然連用形は一般形式:D[i/・]te、であり、完了接辞:te(下一段)が付加
 され、売ってる、書いてある、見てる、食べてる、盗んである、叩いてある、置い
 てある、貼ってある、並べてある、干してある、などの形態となる。
・この形態により対象物への動作が完了した状態を表現することになるから、
 已然接辞や受動接辞が付かない「直接の連用形:特段の感情移入がない動作」を
 受けたことになる。
・特段の感情移入がないので、正然連用形:「イチゴが売っている」「字が書いてあ
 る」「朝飯はちゃんと食べてる」「ケーキが六等分に切ってある」「看板が立てて
 ある」などが文法的に違和感が少ない動作完了相と見なされる。
・この正然連用形の律仕方を「受律動作」と新定義したい。
★受律動作:対物他動詞の対象物を主格とする構文での正然連用形の動作意図:
 律仕方を「受律」と名付け、動作を受けた完了状態、進行状態を保持することを
 表現する。 (動作の経緯や結果に対する利害関係を内包しない)
・感情移入がある「財布が盗んで、」「扉が壊して、」などは意味不明となる。
 それには、受動態・受け身表現:つまり→「財布が盗まれて、」「扉が壊されて、」
 という、結果が人・物を律する:果互律動作として表現するのが最適である。
(受律動作は、動作主との関係性が互律よりも希薄で、動作を受けたことだけを
意味する。 つまり、動作主を伏せたまま対象物が動作を受け取ること)

→「受律」は適用範囲が限定的であることを納得しておきたい。
 (対物他動詞の対象物が主格文となり、D[i/・]te[r]u、D[i/・]te[+]i[r]u、
 D[i/・]te[+]ar[]u、などの動作完了相、進行相を表現する場合に限定)
・日本語話者の感覚は、わざわざ動作主を言わなくても、動作主との関係性の強
 弱を動詞の律仕方:「受律」「互律」「果律」「果互律」(「律他」「律他互律」)の使い分
 けで表現してることになる。

« 態文法:哲学でする動詞活用5 | トップページ | 態文法:哲学でする動詞活用7 »

日本語文法」カテゴリの記事

態文法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 態文法:哲学でする動詞活用6:

« 態文法:哲学でする動詞活用5 | トップページ | 態文法:哲学でする動詞活用7 »