態文法:動詞活用の歴史に真価を活かす4
態文法:動詞活用の歴史に真価を活かす4
2018/12/17(月)
-「れ足す」言葉をネット検索すると、「ら抜き」言葉との対比で取り上げられる
ことも多いようです。やはり可能表現、可能態に関することで共通しますが、
接辞が「可能接辞:e[r]」の「e[r]足す」と「結果接辞:ar」の「ar抜き」で、それぞ
れの根本原意は違うので、違いを正確に識別する検証が必要です。
34.「れ足す」言葉を「音素戻し法」で検証
-「れ足す」言葉の例を一般形式で表記すると:D[・/r]e[r]【e[r]】uのように、
余分にe[r]を継ぎ足す言い方です。まずは「音素戻し法」検証を使いましょう。
例:書‐け‐れ‐る:書‐ke‐re‐ru(音素戻し→)書k‐er‐【er】‐u、二重可能表現です。
食‐べ‐れ‐れ‐る:食べ‐re‐re‐ru(音素戻し→)食べr‐er‐【er】‐u、二重可能で不可
・やはり、「れ足す」言葉も正確には「e[r]足す」言葉と捉えるべきでしょう。
〇本来、書ける、食べれると「er」一段で言えば、動作可能が表現できます。
★なぜ、「れ足す」言葉が起きてしまうのか。
〇手掛りは動詞活用の已然形、仮定形にあり、説明が少し理屈っぽくなり
ますが、「れ足す」言葉を完全回避できる方法を次に示します。
→〇動作動詞での仮定形は:D[・/r]e[+]baで表現する。
例:書‐け・ば:書‐ke・ba(音素戻し→)書k‐e・ba、完遂するの仮定。
★完遂仮定の実現事象は→書k‐e・【ba→[r]u】→書k‐e・[r]u→書ける:
可能態(完遂尽力する意味の独立動詞となる。一段可能態)
例:食べ‐れ・ば:食べ‐re・ba(音素戻し→)食べr‐e・ba完遂するの仮定。
★完遂仮定の実現事象は→食べr‐e・【ba→[r]u】→食べr‐e・[r]u→
食べれる:可能態(完遂尽力する意味の独立動詞となる。一段可能態)
(動作動詞が可能態動詞に転換する仕方の一方法を示した)
→〇可能態動詞での仮定形は:D[・/r]e[r]e[+]ba、で表現する。
例:書‐け‐れ・ば:書‐ke‐re・ba(音素戻し→)書k‐er‐e・ba、完遂が実現す
ればの意味で成立する。
★完遂の実現仮定の実現は「完遂」と同じ言葉で表現する:書ければ→
書k‐er‐e・ba→書k‐er‐【e・ba→u】→書k‐er‐u、書ける:可能態。
(完遂事象の実現想定は完遂力が不要なので、「e・ba=u」:独立化だけに
とどめる:重要・二重可能を回避)
例:食べ‐れ‐れ・ば:食べ‐re‐re・ba(音素戻し→)食べr‐er‐e・ba、完遂が
実現すればの意味で成立する。
★完遂の実現仮定の実現は「完遂」と同じ言葉で表現する:食べれれば→
食べr‐er‐e・ba→食べr‐er‐【e・ba→u】→食べr‐er‐u食べれる:可能態。
(完遂事象の実現想定は完遂力が不要なので、「e・ba=u」:独立化だけに
とどめる:重要・二重可能を回避)
・一段目の可能動詞(可能を表現する動詞)が活用中の不注意で二重可能
態にならないように留意したい。
〇本来なら「動作完遂の結果」を表現するのは、結果態、受動態であるから、
★結果態:D[・/r]ar[]【e[+]ba】:書かれば、食べられば、
★受動態:D[・/r]ar[]e[r]【e[+]ba】:書かれれば、食べられれば、
のように結果仮定する使い方が明確でよい。
→もちろん、どちらも独立事象化は【e[+]ba→u】と終止形へ戻る。
(結果態の已然形が独立して、可能付加された受動態形態になったとも
言えます)
★詳細は次回「ら抜き」言葉の検証で考察したい。
-国語学、学校文法では、動詞活用の已然形を正確に実用的に運用できるように
教えてないから、「完遂の仮定」、「完遂の実現仮定」、「完遂の実現仮定の実現」
「完遂の実現仮定の実現=完遂」と並べてもまったく判りにくいでしょうね。
〇理解の手掛りは「仮定形は已然・仮定形だから、完遂力がある」と感得し、「完遂
する仮定」、「完遂を想定する仮定」、「完遂を想定する仮定が実現するとは、結
局のところ動作完遂があるということ」と論理が働いたのだと、納得していた
だければ、以下の説明が判りやすくなると期待します。
35.可能動詞が生まれる理由
〇動詞の基本活用枠組みのなかで既述したように、
已然形には三種類の機能構成があり、
①已然連用形:D[・/r]e[i/・]te:書‐け・て、食べ‐れ・て、
②已然仮定形:D[・/r]e[+]ba:書‐け・ば、食べ‐れ・ば、
③已然命令形:D[・/r]e【・yo】/【e・y】o:書け!/食べろ!
(命令形の方言には、食べれ!もあり、已然であると思う)
★可能動詞の生まれる由来:
→共通部分:D[・/r]e、は既に動作完遂に向けて取りかかっていること
を意味する。
〇この動作を独立事象化すると:D[・/r]e[r]u→書ける、食べれる、と
完遂可能の表現になります。すべての動作動詞が可能動詞になります。
(こんなに単純明解な由来で可能動詞が生まれるのです)
(国語学、学校文法は半分の認知で済ませ、理由を明確にしていない)
★二重可能が発生する由来:
→逆に、単純明解のつもりで可能動詞にさらに可能化を上乗せすると、
「れ足す」言葉が生じてしまいます。これが要因です。
〇通常は、可能動詞に再度の可能接辞を付加して二重可能にすることは
ないでしょうが、念を入れたい人は、書‐け‐れ‐る、行‐け‐れ‐る、渡‐せ‐れ
‐る、など二重可能を許容し、発話するのが問題です。
★②已然仮定形:D[・/r]e・ba:の、Dには書k/書け、食べ/食べれ、も
代入できるので、書‐け‐れ・ば、食べ‐れ‐れ・ば、のように、動作完遂に到
達することを仮定・想定する論理は論理として成立する。
①已然連用:書‐け‐れ・て、行‐け‐れ・て、も辛うじて成立するでしょう。
①已然連用:?食べ‐れ‐れ・て、?見‐れ‐れ・て、成立可否は割れそうです。
③已然命令形:D[・/r]e【・yo】/【e・y】o:?書けれ!、?書けろ!、?食べ
れれ!、?食べれろ!、のように到達状態を動作命令するのは不可です。
(書けろ!、食べれろ!に違和感を強く感じるのに、書けれ!、食べれれ!に
弱くしか違和感が湧かないのは、已然「e音」の動作性が命令形に反応
するからだと思います。違和感が弱くても命令意味が判らない。
動作完遂のさらに完遂を命令されても動けないでしょう)
36.可能動詞に命令形はありません
→以上を要約すると、「れ足す」・多重可能を防ぐ方法はあります。
★可能動詞の已然形:D[・/r]e[r]e~:書けれ、食べれれ、行けれ、来れ
れ、読めれ、見れれ、渡せれ、などは「可能動作の達成状態」を想定した
描写や仮定表現に使えるが、動作命令形としては意味不可解となる。
→・可能動詞に命令形はない、と定義する。(重要です)
→・可能動詞の已然形を独立動詞化する際に、已然接辞:e、を残さないで
:D[・/r]e[r]【e・[r]u】ダメ→D[・/r]e[r]【e→】u、のように、終止形
へ戻ること(元の可能動詞に戻る)が最良の選択です。
(已然形の動作完遂力を残したまま独立動詞化すると際限なく多重可能
動詞が生成できてしまうから、ここは厳しく峻別すべきです)
→・可能動詞の已然仮定形:D[・/r]e[r]e[+]ba:書ければ、読めれば、
行ければ、来れれば、見れれば、食べれれば、と使い勝手よく発話します
が、これを独立化する際に、已然接辞:e、を残さないで、
:D[・/r]e[r]【e・[+]ba=e・[r]u】ダメ→D[・/r]e[r]【e・[+]ba→u】
のように、終止形へ戻る(元の可能動詞に戻る)のが最良の選択です。
(已然形の動作完遂力を残したまま独立動詞化すると際限なく多重可能
動詞が生成できてしまうから、ここは厳しく峻別すべきです)
(つづく)
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