態文法:[挿入音素]の構造
態文法:[挿入音素]の構造
2019/02/24(日)
2.[挿入音素]の構造:一般形式表記を目指して
日本語の単語は密結合する場合、子音連続や母音連続を避ける特徴があり、
特に動詞派生では、動詞語幹[挿入音素]接辞語幹のように語幹の間に[挿入
音素]が挟まる構成で、発声しやすい音節化を実現させている。
・[挿入音素]の構造は、連結時の子音や母音の同種音連続を避けるために、「単
音素の挿入」が必要であると同時に、異種音連結の場合には直接連結でよいの
で、「無音挿入」でなければならない。
①[挿入音素]の構造1=[連結母音/無音]→子音語頭の接辞と連結するため。
(現在は①[a/・]、②[i/・]、の2種類を使う)
②[挿入音素]の構造2=[無音/連結子音]→母音語頭の接辞と連結するため。
(現在は③[・/r]、④[・/s]、⑤[・/y]、⑥[・/k]、4種類を使う)
〇このように[挿入音素]を規定するのは、動詞語幹の末尾音が子音の場合と母
音の場合の両方に対応した一般形式表記にしたいからである。
(簡略的に動詞活用形、受動態、使役態の派生を一般形式表記する)
例:D[a/・]na[k0]i→書k[a]ない/食べ[]ない、
:子音語頭の接辞:na[k0]i(打消)。
:D[・/y]ou→書k[]おう/食べ[y]おう、
:母音語頭の接辞:ou(意向、勧奨)。
:D[i/・]mas[]u→書k[i]ます/食べ[]ます、
:子音語頭の接辞:mas[]u(動作敬体)。
:D[・/r]u→書k[]う/食べ[r]う、
:母音語頭の接辞:u(動詞標識接辞)。
:D[・/r]e[i/・]tara→書k[]e[]たら/食べ[r]e[]たら、
:母音接辞:e(已然連用、完遂可能の意味)、
:子音語頭の接辞:tara(完了想定の接辞)。
:D[・/r]ar[・/r]e[・/r]u→書k[]ar[]e[r]u/食べ[r]ar[]e[r]u、
:母音語頭の接辞:ar(動作結果があるの意味)、e(已然連用、完遂可能
の意味)。
:D[・/s]as[・/r]e[・/r]u→書k[]as[]e[r]u/食べ[s]as[]e[r]u、
:母音語頭の接辞:as(動作をやらすの意味)、e(已然連用、完遂可能の
意味)。
(注:後段2例のar、e、are、as、ase、は態の接辞であり、詳しくは「態の構造」
で解説する)
6種類の[挿入音素]の使用例を掲載したが、動詞語幹が子音末/母音末の両方
に対応した[挿入音素]構造になっていることに注目してほしい。
その構造により、連結する各機能接辞が動詞語幹末の子音/母音に関係なく、
同一形態で表記できる利点を確認してほしい。
なお、[挿入音素]の⑥[・/k]の例について追加説明します。(当文法の独創)
例:形容詞派生のための[挿入音素]として規定する。(動詞派生も別途説明)
:楽しい→tanosi[・/k0]i→tanosi[k0]i、
:早い→haya[・/k0]i→haya[k0]i、
:ない→na[・/k0]i→na[k0]i、らしい→rasi[・/k0]i→rasi[k0]i
:望ましい→nozomasi[・/k0]i→nozomasi[k0]i、
〇形容詞語幹:K=常に母音末語幹であり、上例のように終止形の一般形式は
K[k0]i、の一本式で表記できる。(現代はイ音便により[k=0]i、kが無音化)
もっとも、形容詞の活用形式が「し・く活用」と「かり活用」の二本立てで、
例:「し・く活用」:語幹=Kで一般形式表記。(形容詞・副詞的運用である)
:K(-、[k]u、[s0]i、[k0]i、[k]ere[+]ba、-):連用、終止、連体、仮定。
・早(-、く、い、い、ければ、-):古語では[s]i、[k]i、現代ではs、k発音せず。
例:「かり活用」:語幹=Kで一般形式表記。(形状動詞的運用である)
:K([k]ar[a]、[k]ar[]ou、[k]ar[i]、-、[k]ar[]u、[k]ar[]e、[k]ar
[]e):打消、意向推量、連用、連体、已然、命令。
・早(から、かろう、かり、-、かる、かれ、かれ):補完的に連用、終止、仮定は
「く活用」から借用する使い方になっている。
(注:[s0]i、[k0]i、の形容詞標識接辞:「i」音と、[k]ar[i]、の[挿入音素の「i」
音]の扱い方では解釈に違いがある。それでよいと思ってる)
〇形容詞派生の「く活用」では、K[k]u単独で副詞的な連用修飾が使いやすい、
:楽しく:tanosi[k]u、早く:haya[k]u、~[+]らしく:rasi[k]u、など。
:楽しくて:tanosi[k]u[i/・]te、と解釈するよりも、:tanosi[k]u[+]te、と
解釈するほうが応用が広いように思う。楽しくなる、楽しくない:K[k]u[+]
nar[]u、K[k]u[+]na[k0]i、などと連用修飾の規則を援用できる。
〇また、「かり活用」の由来も、楽しく[+]あり:K[k]u[+]ar[i]の母音縮約に
よって、K[k]ar[i]に転換して「かり活用」が併立したと解釈しうる。
〇文語時代の早し:K[s]iの[s]には、動詞的意味合いがありそうだが、一般形式
になれなかった。楽しし、悲しし:~si[s]iの終止形を頑張り通せずに、[s]iを
放棄して、楽し、悲しの形態で終止形としたのです。
以上、[挿入音素]の[・/k]について形容詞派生での用法を説明しました。
この[・/k]は動詞派生でも特定の場面で使われますが、詳しくは[挿入音素]全
体の意味の解説で触れたいので、ここでは割愛します。
〇形容詞派生=形容詞語幹[挿入音素]接辞語幹・・・の密結合の法則に従った
派生構造であることを提起しました。
(次回は「態の構造」を再発見します)
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