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態文法:「動詞活用形の構造」-1
2019/03/12(火)
4.「動詞活用形の構造」:一般形式表記で新発見
動詞活用は、動詞派生と同様に機能接辞と密結合することで実現するので、
〇動詞活用=動詞派生=動詞語幹[挿入音素]接辞語幹[挿入音素]接辞語幹・・・
という構成法により生成されます。
・動詞活用・派生の基本概念を述べれば、
動詞語幹:Dを先頭に、[挿入音素]の連結器を介して第一接辞:自他交替接辞
、次に[挿入音素]を介して第二接辞:態接辞がつながる。
次に[挿入音素]を介して第三接辞:アスペクトや時制接辞などが順次つなが
っていき、詳しい描写が可能になる。
→活用の構成要素としては、
①動詞語幹:D、(自他交替接辞を組み込んだ状態の動詞語幹を含める)
②[挿入音素]:6種類=[a/・]、[・/y]、[i/・]、[・/r]、[・/s]、[・/k]。
なお、不規則動詞「する」では、連結母音に[a/・]、[i/・]ほかに、[e/・]も
継続してる。(古語時代は多用されたが、現代は限定的な使用にとどまる)
(注:「~してる」と併せて[e/・]について後段に補足説明する)
③機能接辞語幹:S、(使役・受動、打消、意向・推量、完了、希望、推定・断定、伝聞
、丁寧などの固有機能を有する助動詞が揃っている) 以上の3要素がある。
→「かな文法」の最大の欠陥は、派生後の動詞形態から①動詞語幹や、②[挿入音
素]、③接辞語幹の各要素を正しく区分できず識別できないことです。
例:使役、受動の接辞は、母音語頭の「あす:as、あせ:as[]e」と「ある:ar、あれ
:ar[]e」が本来の形態です。ところが、現状の「かな解析文法」では、接辞語頭
の「a」を挿入音素:[a/・]に繰り込んでしまい、未然形接続だと取り違えた。
江戸期からの間違いが時を止めたように今も続いています。
★使役はD[・/s]as[]e[r]u、受動はD[・/r]ar[]e[r]u、で区分するのが、当
態文法ブログが推奨する一般形式表記です。
音素解析の効果を活かした視点から、態文法:「動詞活用形」の概念を更新により
『動詞活用基本枠組』を既に提起しました。
→要約引用しながら、現代の規則動詞(四段・一段)活用と古語時代の二段活用
を比較しながら、活用の変遷を追体験してみよう。
〇現代の四段・一段活用の一般形式表記:動詞語幹:Dを()外に括り出す。
・D([a/・]na[k0]i、[・/y]ou、[i/・]te、[・/r]u、[・/r]u、[・/r]e、
[・/r]e【yo】/【ey】o)、この式一つで、規則動詞すべてを表現できる。
★現代語の「動詞活用形:未然、連用、~」は、動詞の動作進行局面を表現
するための派生並びなのだと理解することが大切です。
だから、未然・将然はまだ動作に取りかかる前の局面を意味し、
正然・連用は動作進行中を意味し、
事然・終止、連体は動作事象を出来事として描写し、
已然・連用は動作事象の完遂成就を意味している。
已然・命令は動作事象の完遂成就を目指して命令する。
〇古語・二段活用の一般形式表記:(なお古語・四段活用は現代に継承される)
例:古語「落つ:ot[]u」、の場合、
・二段:ot([i/・]zu、[i/・]te、[]u、[]u[r]u、[]u[r]e、[i/・]yo、)
例:古語「投ぐ:nag[]u」、の場合、
・二段:nag([e/・]zu、[e/・]te、[]u、[]u[r]u、[]u[r]e、[e/・]yo、)
→便宜的ながら、「落つ/投ぐ」を重畳して一般形式化してみよう。
例:ot/nag([i/e]zu、[i/e]te、[]u、[]u[r]u、[]u[r]e、[i/e]yo、)
★古語時代の「二段活用形」を追体験して判ることは、
①二段動詞が動き出す局面を表現できる[挿入音素]は、[i/・]、[e/・]の
2つだけ。
(現代語では、この[i]、[e]を動詞語幹に取り込んで、母音幹動詞の一段
活用になって収れんした。何世紀も二段活用が続いたが)
②動詞語幹から直接已然形(ot[]e、nag[]eは不適)を派生できないので
新たに終止形態に[r]uを付加して、連体形(D[]u[r]u)を生み出した。
続けて絶対に必須の已然形(D[]u[r]e)を派生した。
(終止形を温存する代りに大胆にも[r]uを直付け:事象化した)
③命令形は正然・連用を流用する→動作に取りかかることを命じる。
(現代語の命令形は已然・連用の流れにあり→動作完遂を命じる)
④二段から一段活用に変移するには、ot/nag[i/e]*[r]u、のような
大胆な独立化の大波が起きる必要があった。(鎌倉~江戸期)
・[i/・]、[e/・]は正然・連用形に付き、独立動詞化する際には、
oti[r]u、nage[r]u、のように母音末語幹の動詞に変化した。
★四段活用を見ると判るように、[i]音は正然・連用形の[挿入音素]であ
るが、「e」音は已然連用形の機能接辞である。 母音末語幹に組み入れ
られても当然のこと、「i」音:正然/「e」音:已然、という意味感覚の差を
感じてほしい。(正然:正に動作中、已然:既に完遂成就、というように
意味の差を強調して覚えておくとよい)
・「e」音語幹末の動詞は、已然:完遂成就の意味を内包するから、動作完遂
できる意味で使える。つまり可能動詞、可能態の出現です。
(見れる、来れる、食べれる、覚えれる、なども立派な可能動詞である)
〇古語・二段活用の完了助動詞「つ:tu」の一段化「てる:te[r]u」と、不規則動詞
「す:s[]u」の独立化:「せる:se[r]u」が一段活用化した状態を検証してみる。
例:D[i/・]te([a/・]na[k0]i、[i/・]te、[・/r]u、[・/r]e、[・/r]o、)
書いて/食べて(ない、て、る、れ、ろ、)、これは既に通用している。
例:称[+]se([a/・]na[k0]i、[i/・]te、[・/r]u、[・/r]e、[・/r]o、)
称せ(ない、て、る、れ、ろ、)→相性がよい漢語動詞もあるが、
・満足[+]se([a/・]na[k0]i、[i/・]te、[・/r]u、[・/r]e、[・/r]o、)
満足せ(ない、て、る、れ、ろ、)→満足でき(ない、て、る、れ、ろ、)、を意味
するのだが、「せ」が有する完遂成就の根源的意味合いが感じにくいし、不規
則性が強すぎる。(文語でも定着しているのは「せず、せる」だけか)
・「称せ→×称でき」、「満足せ→〇満足でき」、「証明せ→〇証明でき」の差は、
すでに「称す」、「称せる:可能態」が独立動詞になっており、「称[+]せ」でな
いからだと推測できる。
「せる:やり遂げることができる」の意味が強固に浸透・確立しないと汎用の
可能動詞にはなれないのだろう。
★『動詞活用基本枠組』での活用形並び順を「アスペクト並び」だと解釈する利点
は大きく、まだ語り尽せていない。 次回に未然の[a/・]音を検証する。
態文法:「態派生の構造」再発見
2019/03/01(金)
3.「態派生の構造」:一般形式表記で新発見
前回、形容詞の語幹はすべて母音末であると記したが、古語時代の動詞語幹は
逆に子音末の単語が多かった。
〇子音語幹の動詞は通常、四段活用となるものが多いが、古語時代には動詞自
体の自動詞/他動詞の分立化や態派生の確立化が試行錯誤の段階であった。
子音語幹動詞でも自他分立が未然連用で起きても、終止形にまで及ばず「二段
活用」にとどまる状態が何百年も続いたことになる。(二段活用が斯くも長引
いた理由は、連用+奉り文・給る文・候文・たり/なり文の工夫と、終止+[r]u
=連体、終止+[r]e=已然、の工夫による終止形の温存だったと思う)
・動詞派生で接辞を並べる順序は、自他区別の接辞、態の区別接辞をまず配置し
て登場人・物の動きに見合う動作表現に近づける。完了動作か未完了動作かの
「時制表現の接辞」はそのあとに連結する。 国語辞典付録解説の「助動詞活用
一覧表」で最初の枠には、「使役、受動」接辞を配置することが多い理由はこの
ためです。
〇「態派生の構造」:一般形式表記・・・「態の双対環」表現
★態派生の順序1=態の三系から一つ選択:
→①能動系:D[・/r]、・・・自他動詞の区別不問。終止原形(統語接辞:uは後続)
→②強制系:D[・/s]as[]、・・・強制態接辞:as[]連結。
→③使役系:D[・/s]as[]e[r]、・・・使役態接辞:as[]e[r]連結。
★態派生の順序2=態の四態から一つを選択:
→④系原形:-のままか、
→⑤系に可能態:e[r]を付加するか、
→⑥系に結果態:ar[]を付加するか、
→⑦系に受動態:ar[]e[r]を付加するか、どれかを選択する。
★順序3=組み上げ:「態の双対環」(三系四態)一般形式表記
①能動系:D[・/r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u、
②強制系:D[・/s]as[](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u、
③使役系:D[・/s]as[]e[r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u、
(態派生:三系四態は、すべての態動詞の構造を明示できること、未然形に接続
するのではないこと、「かな解析の異形態接辞」が「音素解析:ローマ字つづり」
の明解な一般形式表記化により同一形態接辞の構造へと解き明かせること、を
示しています)
〇「態の双対環」三系四態により日本語のすべての動作動詞のすべての態表現
を派生させることができます。(子音末・母音末、自動詞・他動詞、規則動詞・
不規則動詞を含めて、すべてに適用できます。当然、見れる、来れる、食べれる
など「ら抜き」も正規の態として認める新文法です)
→不規則動詞も基本的に態派生は規則動詞と同一構造です。
・例:不規則動詞:来る・する、の三系四態を示します。 不規則動詞なので、態派
生の語幹は、来る→ko、する→s、とします。
①能動系:ko[・/r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ 原形×こる、来れる、来らる、来られる。
①能動系:s[・/r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ 原形×す、せる、さる、される。
②強制系:ko[・/s]as[](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ 来さす、来させる、来ささる、来さされる。
②強制系:s[・/s]as[](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ さす、させる、ささる、さされる。
③使役系:ko[・/s]as[]e[r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ 来させる、来させれる、来させらる、来させられる。
③使役系:s[・/s]as[]e[r](④-、⑤er[]、⑥ar[]、⑦ar[]e[r])u:
→ させる、させれる、させらる、させられる。
(態派生の構造は規則的に一般形式での表記ができます。 何度も言いますが、
すべての動作動詞に対して「態の三系四態」の一般形式表記が可能であり、通用
する態動詞を派生することができます)
態派生を一般形式で検証していると、新発見することがあります。
少し横道へ入ります。
古語の助動詞:しむ:使役の一種で古い形を考察した。
『岩波古語辞典補訂版』:大野晋・佐竹昭広・前田金五郎:1990年2月8日補訂版
によると、「す」「さす」よりも前に成立した助動詞で奈良時代に「~させる」の使
役表現に用いられた。また、「しめ給ふ」「しめ奉る」の形で動作尊称の意を表すに
も用いられ、中世以後は文章語の書簡などで長く使われた、と解説がある。
〇動詞の未然形に接続すると解説にあるが、態接辞が未然形に連結するはずが
ないと思っていた。
・古語「~む」は、書かむ/見む:D[a/・]muの形態で推量・意向・勧奨を表現した
もので、D[a/・]n→→D[・/y]au→D[・/y]ou:書こう/見よう:に現代では
変化してきた。「ましじ、まじ、まほし」などの「m」音はこの推量の「m」に由来す
るのだろう。
〇古語「~しむ」は、「知らしむ、申さしめ給へ」と使われており、新文法の一般形
式で表記すれば、D[・/s]as[i/・]m[]u、:使役の一種と解しても通用する。
・D[a/・]m[]u:書かむ/見む、は発話者の意向・勧奨を表すが、使役場面では、
D[・/s]as[a/・]m[]u:書かさむ/見ささむ、の形態のままだと、発令者の意
向か、受命者への勧奨、動作者への尊敬表現か、曖昧であるから、相手へ働きか
けがはっきりする:D[・/s]as[i/・]m[]u、書かしむ/見さしむの形態を選ん
だのであろう。 と考えると、奈良時代から使役接辞の用法を正しく試行してい
たのだと感心する。
・ただし残念ながら、漢語動詞への応用が一般形式構造から外れてしまう。
不規則動詞の「す」に「しむ」を連結すると、使役態構造が弱まる。
例:「せしむ、感化せしむ、充足せしめん、興隆せしむる、退散せしめん、」などの
S[e/・]s[i/・]m[]u、の形態は、「す」の未然「せず」である:S[e/・]z[]uの
S[e/・]を使用したものであり、不規則動詞の本領発揮です。
〇不規則動詞の慣用として「せず」だけは活かすとしても、使役態になりきれな
い「せしむ」は、現代語でぴたりの言葉:「させる」を使うのが最適です。
・「させる」と「される」は裏表の関係、鏡像関係にあり、「される」が慣用されるの
だから、「せしむ」にこだわらずに「させる」で良いだろう。
規則派生に該当する「書かしむ、見さしむ、」自体が使われない現代なのに、変則
を自覚もせずに「せしむ」だけを残す必要性は低い。
〇「感化させる、充足させよう、興隆させる、退散させよう、」が現代風です。
・「講ぜしむ、信ぜしむ、」などは「講ざせる、信ざせる、」よりも「講じ[+]させる、
信じ[+]させる、」と連用形で複合[+]構造にするほうが分かりやすい。
〇これで態派生の構造に例外なしと公言もできますからね。
(意味もなく「可能態」を忌避する人の何と多いことか。奈良時代から続く試行
錯誤も理に適う方向だった。 態派生の構造に例外なしの心意気を示そうでは
ないか。)
(次回は「動詞活用形の構造」を再発見します)
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