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2020年10月

2020/10/31

「述語律」が文法の謎を解く -3

「述語律」が文法の謎を解く -3
2020年10月31日(土)
 前回の項目のつづき
2.e[r]u 接辞への無理解がつづく-つづき
 ●使役形には、例「立たす」よりも「立たせる」のほうがよい。
  立たしてよりも、立たせてのほうが清雅、上品であるから、、、
  国語文法ではこれ以上の精雅な説明はできていない。
 〇態接辞は先史時代よりこのかた、-ar-, -as-, -e-, の3種を使用して
  きた。文語時代では、受動:-ar[e]-, -ar[-]u,(連用,終止)、使役:
  -as[e]-,-as[-]u,(連用,終止)、のように二段活用されていた。
  ・ただし、自他交替接辞としても使われる-ar-, -as-, は四段活用動
   詞でも活用され、特に-as[-]uは強制動詞としても並行して用い
   られてきた。(任す:mak[-]as[-]u/任せ:mak[-]as[-]e,已然形) 
  ・江戸期に一段活用化が進むと、受動:-are-, -are[r]u、使役:
   -ase-, -ase[r]u, の構造での認識も増えるようになった。
  ・その結果、-as[-]e[r]u と -ase[r]u の同音・同義が定着し始めた。
(先史時代から現代口語まで根源的に連続する法則を組み上げる)
 〇当述語文法では、強制系と使役系の双方を併存させ、能動系と合
  わせて、「態の三系四態」により態の全体像を把握する。
  ・態三系四態の「述語律」も3✕4=12通りになるが、半分の
   6態に-e[r]u, が付属し、さらに使役には四態ともにはじめから
   -e[r]u, が付属するから、10個の-e[r]u, が使われるのです。
  ・これほど重要な-e[r]u, の「述語律」を正確に理解できていない
   のは残念なことです。
  ・強制系:D[-/s]as[-]u:立たす/食べさす:述語律は「律他」
   :主が他に命じて他を律する(動作は他が自律でなす)
   強制可能:D[-/s]as[-]e[r]u:立たせる/食べさせる:述語律は
   「律他互律」:律他+完遂へ相互協力。(主体動作も感じる)
   強制結果:D[-/s]as[-]ar[-]u:立たさる/食べささる:述語律は
   「律他果律」:律他の動作結果が他を律する(受け身)。
   強制受動:D[-/s]as[-]ar[-]e[r]u:立たされる/食べさされる:
    述語律は「律他果互律」:律他の動作結果が関与者相互に
   及ぼす規律を表現する。文章の主部には客体、対象がなり、
   強制主体は隠れることが多い。
  ・使役系:D[-/s]as[-]e[r]u:立たせる/食べさせる:述語律は
   「律他互律」:律他+完遂へ相互協力。(主体動作も感じる)
  (強制可能と同音・同義であり、簡略のため述語律=使役律と呼
   ぶ)主体が命じるだけでなく、完遂に向けて助力など行う。
  ・使役可能:D[-/s]as[-]e[r]e[r]u:立たせれる/食べさせれる:
   述語律は「使役互律=律他互互律」、主体が他にやらせて完遂
   させることができる、助力・助言もする。
  ・使役結果:D[-/s]as[-]e[r]ar[-]u:立たせらる/食べさせらる:
   述語律は「使役果律=律他互果律」、主体が他にやらせた結果
   事象が及ぼす規律を表現する。
  ・使役受動:D[-/s]as[-]e[r]ar[-]e[r]u:立たせられる/食べさせら
   れる:述語律は「使役果互律=律他互果互律」、使役動作の結
   果事象が関与者相互に及ぼす規律を表現する。文章の主部には
   主体、客体、対象の誰もがなれる。
 〇基本の態接辞に対する述語律を整理しておこう。
  ・能動系:D[-/r]u:述語律は「自律」、主体の自律的動作で規律
   する。自動詞、他動詞ともに「自律」であり、対象物にとって
   は動作を受けるだけの「受律」である。
  (「昨日買った本は一晩で読んだ:kaw[0i=Q]ta 本はyom[0i=N]
   da.」:本は「買う」「読む」の動作を受けるだけ。通常「受
   け身」表現にしないで済ませる。重要な文法則である)
  ・強制態接辞:-as[-]u:述語律は「律他」、主体が他に命じて
   他に「自律」動作をやらす。主は他を規律するのみ。
  ・結果態接辞:-ar[-]u:述語律は「(結)果律」、動作結果が有
   る、在る、出る、の意味で、結果事象からの視点で各関与者
   との規律関係を表現する。(自動詞も結果態、受動態を持つ)
  ・可能態接辞:-e[r]u:述語律は「互律」、動作を完遂するため
   に各関与者が相互に規律し協力し合う。
  ・使役態接辞:-as[-]e[r]u:述語律は「律他互律」、主は他を規
   律するだけでなく、相互に協力し完遂へ向ける。
  ・受動態接辞:-ar[-]e[r]u:述語律は「果互律」、動作結果が各
   関与者と如何なる相互規律関係であるかを表現する。
  (主部が、主体:動作実績、尊敬(隠れ話者)、客体・対象:受け
   身、など、関与者ごとに表現できる)
 先史時代からつづく基本の態接辞について、その意味、述語律を
明確に解説(発話連動)できる文法則に育てたい。
 

2020/10/28

「述語律」が文法の謎を解く -2

「述語律」が文法の謎を解く -2
2020年10月28日(水)
 現在の国語文法の問題点には「かな文字頼り」の分析による欠陥が
根源にあり、文法則に確信が持てないために広義の解釈に発展させる
ことができず、狭義の法則に押し止め、広がりを禁止法則にしてしま
う傾向がある。
・だから、余計な禁止法則に惑わされるな、という原則に立ち十分に
 禁止理由を吟味すべきである。
・「惑わされない原則」は「ローマ字つづり」で分析する新述語文法
 が示唆する「五段活用/一段活用」一般形式表記の原理:子音末・
 母音末動詞の区別なく「接辞の機能」が両方に働くのだと確信する
 こと。
 
1.余計な禁止文法則の例
 ●「(わけがあって)折戸を開けてある:ak[-]e[-]te[+]ar[-]u」他動詞
  なら良し、だが自動詞ではダメと禁止的に言及する。
 〇「(長いこと)折戸は開いてある:ak[0i=I]te[+]ar[-]u」自動詞でも
  OK。「(今日はもう)しっかり歩いてある:aruk[0i=I]te[+]ar[-]u」
  自動詞でもOK。
 ●「読める、書ける:yom[-/r]e[r]u, kak[-/r]e[r]u,」可能動詞だが、
  「見れる、食べれる:mi[-/r]e[r]u, tabe[-/r]e[r]u,」は可能動詞と
  認めず、「見られる、食べられる:mi[-/r]ar[-]e[r]u, tabe[-/r]ar-
  [-]e[r]u,」を無理強いする。国語文法の最弱点である。
 〇可能動詞の一般形式:D[-/r]e[r]u,に従い「見れる、食べれる」が
  当然ながら認められ、可能態として推奨されるべきである。
 (「ら抜き」概念自体が間違いで、国語文法の最弱点である)
 
2.e[r]u 接辞への無理解がつづく
 ●立つ:tat[-]u,→立てる:tat[-]e[r]u,:e[r]u付きで他動詞化する、
  割る:war[-]u,→割れる:war[-]e[r]u,:e[r]u付きで自動詞化する、
  国語文法の最弱点は、接辞 e[r]u の機能を説明できないからだ。
  あるときは他動詞化、またあるときは自動詞化になる e[r]u 接辞
  を持て余し、解釈しえないで世紀を過ごしている。
 〇立てる、割れるの一般形式:D[-/r]e[r]u, は可能動詞を表現する。
  同時に動作:Dを実行し「立つように、割るように」して完遂に
  達するという意味を表現するのが「立てる、割れる」なのであ
  る。(已然:D[-/r]e すでに動作している→D[-/r]e[r]u 完遂!)
  自他交替の接辞ではなく完遂状態に達すること表す接辞なのだ。
  ・つまり、e[r]u 接辞の根源は「動作完遂」を表す機能である。
  (已然形は完遂の仮定に通じるだけでなく、e[r]u 「る」の援軍
   が挿入されて、完遂状態に達する表現:完遂可能になるのだ)
  ・活用形の中でも已然形は典型的に動相と態変化に関わる派生形
   である。「述語律」も独特であり、主体と客体、対象物ともに
   動作条件を合わせながら互(いに協力し規)律し合うこと:
   「互律」を意味する。(自然・物理条件などとも折り合いを
   つける)
  ・「彼は納豆が食べれる:tabe[-/r]e[r]u 」互律だから複主型が可。
   「花子がピアノが弾ける:hik[-/r]e[r]u」互律だから複主型が可。

  国語文法の e[r]u 接辞の無理解の影響はまだまだあり、次回へ続く。

2020/10/24

「述語律」が文法の謎を解く -1

「述語律」が文法の謎を解く -1
2020年10月24日(土)
 英語など西欧語では文章の述語は主語による強い規律を受けます。
その西欧語の統語法則を「主語律」と名付けるなら、日本語の文章の
述語は「述語律」と呼ぶべきほどの統語法則で主部文節に関与します。
例えば、受動態のように一つの動詞述語が主語を選ぶ場面を想定する
と、動作主体を選ぶ以外に、客体を主語にしたり、対象物を主語にし
たりができることを日本人なら経験しているはずです。
主語律の西欧語なら対象物を主語にする場合以外には受け身形を使わ
ない。(過去分詞として完了表現に応用しても使うが、日本語の融通
力には適わない)
 
 日本語の研究分野に「述語律」を掲げるところはないようで、名詞
と格助詞の関わりで述語関係を論じるような本末転倒の議論が多い。
また、動詞の分類:自動詞/他動詞、動作動詞/状態動詞、意思動詞
/無意思動詞、なども「述語律」の概念に直接的に寄与しない。
 
 「述語律」の明確な定義には知恵が届かないので、自己流の説明に
止めます。 述語が「主部に対してある種の規律関係を持つ」ことに
着目した文法概念で、
 ①動詞では、活用形態の一種、一種(態の三系四態など12通り)
  の「述語律」がある。述語構造は動詞語幹[/]接辞語幹[/]接辞語
  幹・・・である。([/]=[挿入音素]で6種類ある)
 ②形容詞では、実体とその属性(表現による規)律、主体とその形容
  状態との感情・感覚(的反応の規)律、の2種の「述語律」があり
  両律を持つもの、片律のものなどがある。
  述語構造は形容詞語幹[/]接辞語幹[/]接辞語幹・・・である。
 ③名詞・名容詞述語文では、名詞・名容詞+判定詞と分析し、名
  詞・名容詞は構文中の主部成分とみなす。
  判定詞([+]助詞[x]接辞語幹[/]接辞語幹→[+]d(e[x])a(r[-]u),
  [+]de([x]ar[i/-]ma)s[-]u,:である、だ、であります、です、)
  などを付属語コンビの述語文節とみて「主部に対する」指定律
  (名付け律)、措定律(端折り律)、推量・伝聞律(形式名詞:よう、
  そう、らしい、はず、:連体形は主部成分)の3種類の「述語律」
  があると解釈する。
  ・形容動詞を名容詞と改称。(形容状態の程度を表す名詞だから)
  述語構造は(名詞・名容詞:主部構成要素)[+]助詞[x]接辞語幹
  [/]接辞語幹・・・である。
という概要項目を適用範囲におきます。
 
 ここまでは前回の日本語の述語文法3回分の内容復習ですが、
ここから「述語律」概念がもたらす威力、利点を解説したい。
 まず、「述語律」の立場を明確に説明しておきます。
・膠着語の文章(特に述語文節)を「ローマ字つづり」で解析して正
 確に「語幹」、[挿入音素]を識別する新しい文法則により接辞語幹
 を明確にしました。この「接辞」が述語律を生み出す根源です。
・「かな文字」解析にこだわる国語文法は「接辞語幹」を見つけ出せ
 ません。当然、「述語律」へたどり着けません。
・例えば、動詞基本活用形(未然、連用、終止、連体、已然、命令)
 は、動相:アスペクトの基本並びを示唆するものですが、態:ヴォ
 イスの一端も含まれるのです。
 ところが、文法学の常識では動相や態が混在する解釈には拒絶反応
 して、自ら学問の進路を塞ぐような思考停止の状態です。
・日常会話では、多くの接辞を使いこなして、自他交替や態三系四態、
 不定詞、完了形、進行形などを作り出します。「述語律」をしっか
 り理解することの利益は計りしれません。

 では、次回から「述語律」による謎解きを掲載します。お楽しみに。

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