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2020年11月

2020/11/06

「述語律」が文法の謎を解く -5

「述語律」が文法の謎を解く -5
2020年11月6日(金)
 「述語律」が構文の謎を解くことにも威力を発揮します。
4.付属語コンビの述語文節が文末に膠着する
 単一構文の形式は通常、文末の述語要素の品詞から動詞文、形容詞
文、名詞・名容詞文と識別される。
また単一構文が途中で連体修飾句節の別構文を組み込まれることもあ
り、構文構造が複雑になりえます。
基本は単一構文での「述語律」を見極めることが出発点です。
今回は、名詞・名容詞文の「述語律」を中心に考察します。
 
●国語文法では、述語文節区切りの条件として、自立語+活用語(+
 助動詞)の連結を想定しています。
・動詞述語文節=動詞語幹+活用語尾+助動詞語幹+活用語尾、、、
・形容詞述語文節=形容詞語幹+活用語尾+助動詞語幹+活用語尾、、
・名詞述語文節=名詞単語+助詞+助動詞語幹+活用語尾、、、
このうち、名詞述語の活用形式が、動詞、形容詞と異なることに注目
しての構造解釈が必要だが、合理的な分析が出ていない。
・助詞+(助)動詞語幹+活用語尾ならば、(助)動詞文になり、先行の名
 詞+助詞は文の主部要素になるはずである。(それを斟酌すべき)
・実際は、助詞[x]助動詞語幹+活用語尾:d(e[x])a(r[-]u), de([x]ar[i]-
 ma)s[-]u, である、だ、であります、です、などのように、助詞を含
 む形態で述語を構成する。これを名詞+判定詞(断定詞)と解釈す
 る学説が有効に思われる。ただし、先行の名詞部分は述部要素では
 なく、構文の主部要素だと明確に定義しないでいる。
  
〇新述語文法では、上記の最後尾に書いたように、名詞+判定詞との
 構造解釈をおこない、名詞部分は構文の主部要素に組み入れて解釈
 することを推奨する。その名詞部分は「主語律・主部律」に相当す
 る役割を果たすと想定すれば、判定詞と連結しての「述語律」が決
 まるだろう。
・つまり、名詞・名容詞の述語文節は名詞:主部要素と、付属語コン
 ビの:助詞[x]接辞語幹[ / ]接辞語幹・・・:が、述部要素であると
 いう独特の組み合わせ構造なのである。
・名詞述語文の「述語律」は、先行名詞の種類で決まり3種類ある。
 ①指定律(名付け律):「固有名詞、普通名詞、抽象名詞」などが先
  行し判定詞が後続する構文の述語律。
 ②措定律(端折り律):「普通名詞、形式名詞(はず、つもり)、
  連体句節(〜なの、の)」などが先行し判定詞が後続する構文の述
  語律。(措定:事象と事象を関係付けすること)
 ③伝聞・推量律:連用・連体句節に「〜よう、そう、らしい」など
  が先行し判定詞が後続する構文の述語律。
・「判断詞」はまた、先行構文が表す事象の適否、合否を判断表明
  する述語なので、である、だ、です、でございます、であります、
  ではない、ぢゃない、ではありません、など、各種の縮約構造を
  判断発話者が選択して発話します。


<追記:2020/12/4:主部と述部の区切り記号を追加・修正しました>
動詞文・形容詞文の主部\述部、↘連用修飾、↖連体修飾、名詞文の
名詞|判定詞の区切り記号を導入しました>  
 新述語文法の立場で各種述語文を演習してみましょう。
・動詞文:これはペンと\呼びます。(注:主部\述部の区切り表示)
・名詞文:これはペン|です。(指定律・名付け律:名詞|判定詞)
・形容詞文:この本は\おもしろい。→形容詞の属性律と感情律の
 2面性を学ぶには、「私はこの本が\おもしろかった」複主型文を
 感得できるようにすると「面白い」を確実に理解できます。
・名詞文:象は(鼻が↖長い)動物|です。→形容詞長い:属性律
 しかないので「動物」を先行させた名詞文にすると安定します。
・動詞文:ぼくはウナギを\頼みます。(自律)
・名詞文:ぼくもウナギ|だ。(措定律・端折り律、文脈依存)
・名詞文:ぼくにウナギを\・・|です。(措定律)
・名詞文:僕はウナギが↖好きなの|です。(措定律)
・形容詞文:私はウナギが\こわかった。(属性律・感情律)
・動詞文:私は(ウナギが↘こわい)と\思っていた。(自律)
・名詞文:彼女は店の看板娘なの|です。(措定律)
・名詞文:昼食はウナギらしいの|だ。(推量律)
・名詞文:太郎は(明日大阪に↖行く)予定|です。
 (措定律:報告文)
・名詞文:太郎は(明日大阪に↖行く)予定なの|です。
 (措定律:説明文)
・名詞文:太郎は(明日大阪に↖行く)よう|です。(推量律)
・名詞文:彼は(父親が弁護士|だ)そう|です。(伝聞律)
・名詞文:彼は父親が弁護士(のはず)|です。(措定律)
・動詞文:直売所でイチゴが\売っている。(受律)
・名詞文:直売所で(イチゴが↖売ってる)の|だ。(措定律)
・動詞文:彼は自転車が\乗れる。(互律:物理法則との合致)
 
 以上の例文を比べてみると、名詞述語文節の名詞や形式名詞の部分
を構文の主部側に取り込むことが自然であり、合理的であることが分
かります。動詞文や形容詞文の構文主部と同等の名詞並びになるから
です。

 

2020/11/03

「述語律」が文法の謎を解く -4

「述語律」が文法の謎を解く -4
2020年11月3日(火)
3.「述語律」が日本語の歴史をつなぐ
 述語律を思い描きはじめてから先史時代の助動詞、消滅した助動詞
の顛末のこと、[挿入音素]の由来のことなどを考察してきました。
・[挿入音素]の由来→古語ユ語法、ク語法との関わりを「述語律」の
 視点から解明しました。
 [挿入音素]=[a/-],[i/-],[-/r],[-/s],[-/y],[-/k], 6種のうち、連結子音の4
 種=[-/r],[-/s],[-/y],[-/k], については態接辞:-ar-,-as-,-ay-,-ak-, に由来
 するのだろうと気づきました。
・古語ク語法は 「-ak- 接辞の用法」に付けられた呼び名であり、
 曰く iw[-]ak[-]u、願わくは negaw[-]ak[-]u[+]は、などと使います。
 古語ユ語法は「-ay- 接辞の用法」を当文法で類似命名したもので、
 いわゆる iw[-]ay[-]u[r]u、あらゆる ar[-]ay[-]u[r]u、などに残ります。
 
●国語文法では、-ay- 接辞を古語助動詞:「ゆ」ととらえて、自発・
 可能・受け身の単語派生に使ってきたと解釈しています。
 ・怯え:obi[-]y[-]e →obi[-]y[-]u[r]u 語幹識別が不確かですが、ユ語
  法に関わるもの。
 ・脅かす:obiy[-]ak[-]as[-]u →古くは、obi[y]as[i/-], obi[k]as[i/-],
  の両方の用例があるとの記載。
 上記の2単語は『岩波古語辞典補訂版』大野晋他2名に記述あり。
 ちょうど、ユ語法、ク語法の解釈に貴重な手掛かりになる。
→大野晋の古語ク語法の研究成果は同辞典の凡例・用語についてに詳
 しく載っていて出色の考察ですが、-ak- 接辞を「動詞を概念化する
 形式名詞」と断定したところに国語学への忖度と限界があったのか
 もしれません。(未然形連結の常識を打破するために名詞扱いにせ
 ざるを得なかったか)
 
〇 当述語文法では、古語のユ語法、ク語法が [挿入音素]の[-/y], [-/k],
 の形態でも生き延びていると考えます。
・-ay- 接辞=自発・可能・受け身(-ar- 接辞よりも、-e- 接辞に近い)
 の派生に使われ、先史時代の造語に寄与したのだろう。
 現代口語のD[-/y]o[-]u:書こう、食べよう(意思/勧奨)の変遷を通し
 ←D[-/y]af[-]u:書かふ、食べやふ(-af-:合え/敢え:完遂/継続/勧奨)、
 ←D[a/-]m[-]u:書かむ、食べむ(-mu-:意思/催促/勧奨/推量)、
 の流れが分かる。(mu という心理表現よりも afu という折衝行動
 に重きをおく表現に変わってきた)
・-ak- 接辞=動作(周辺)概念化する意味を持つが、述語接辞の機能と
 して「無律化」を果たすものである。
 *おびやす:obi[y]as[-]u →述語律=「主:律他+客:自発」では無責
  任な言い方になる。客体の自発おびえの程度を主が規律できない。
 *おびかす:obi[k]as[-]u →述語律?=おび?かす? 客自律を解消
  したい心理は汲み取れるが単語の意味が固定していない。
 ○おびやかす:obiy[-]ak[-]as[-]u →述語律=obiy-ak おびえること+
  主が自律で成す=自律(他動詞) として主の規律範囲でおこなう。
  同様な構造で、あまやかす:amay[-]ak[-]as[-]u →述語律=あまえ
  ること+主が自律で成す=自律・他動詞にして主の規律内の甘え
  に収める意図を表す。
 ・「無律化」が分かりやすい例をもう一つあげると、
 ○寝かす:ne[k]as[-]u →横にすること+主が自律で成す=物を当分
  しまっておく→「乳児を寝かす」主の責任でおこなう。
 *寝さす:ne[s]as[-]u →乳児の自律に任す律他は主の無責任になる。
 △寝せる:ne[s]e[r]u →乳児と主の互律ならば責任半々?で可か。
 
 このように先史時代から述語律をわきまえて動作規律の構造を明確
にしようと工夫してきたのです。無律化の意図を忘れずに、述語律を
しっかりと自覚して使っていきたい。
 

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