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2020/11/03

「述語律」が文法の謎を解く -4

「述語律」が文法の謎を解く -4
2020年11月3日(火)
3.「述語律」が日本語の歴史をつなぐ
 述語律を思い描きはじめてから先史時代の助動詞、消滅した助動詞
の顛末のこと、[挿入音素]の由来のことなどを考察してきました。
・[挿入音素]の由来→古語ユ語法、ク語法との関わりを「述語律」の
 視点から解明しました。
 [挿入音素]=[a/-],[i/-],[-/r],[-/s],[-/y],[-/k], 6種のうち、連結子音の4
 種=[-/r],[-/s],[-/y],[-/k], については態接辞:-ar-,-as-,-ay-,-ak-, に由来
 するのだろうと気づきました。
・古語ク語法は 「-ak- 接辞の用法」に付けられた呼び名であり、
 曰く iw[-]ak[-]u、願わくは negaw[-]ak[-]u[+]は、などと使います。
 古語ユ語法は「-ay- 接辞の用法」を当文法で類似命名したもので、
 いわゆる iw[-]ay[-]u[r]u、あらゆる ar[-]ay[-]u[r]u、などに残ります。
 
●国語文法では、-ay- 接辞を古語助動詞:「ゆ」ととらえて、自発・
 可能・受け身の単語派生に使ってきたと解釈しています。
 ・怯え:obi[-]y[-]e →obi[-]y[-]u[r]u 語幹識別が不確かですが、ユ語
  法に関わるもの。
 ・脅かす:obiy[-]ak[-]as[-]u →古くは、obi[y]as[i/-], obi[k]as[i/-],
  の両方の用例があるとの記載。
 上記の2単語は『岩波古語辞典補訂版』大野晋他2名に記述あり。
 ちょうど、ユ語法、ク語法の解釈に貴重な手掛かりになる。
→大野晋の古語ク語法の研究成果は同辞典の凡例・用語についてに詳
 しく載っていて出色の考察ですが、-ak- 接辞を「動詞を概念化する
 形式名詞」と断定したところに国語学への忖度と限界があったのか
 もしれません。(未然形連結の常識を打破するために名詞扱いにせ
 ざるを得なかったか)
 
〇 当述語文法では、古語のユ語法、ク語法が [挿入音素]の[-/y], [-/k],
 の形態でも生き延びていると考えます。
・-ay- 接辞=自発・可能・受け身(-ar- 接辞よりも、-e- 接辞に近い)
 の派生に使われ、先史時代の造語に寄与したのだろう。
 現代口語のD[-/y]o[-]u:書こう、食べよう(意思/勧奨)の変遷を通し
 ←D[-/y]af[-]u:書かふ、食べやふ(-af-:合え/敢え:完遂/継続/勧奨)、
 ←D[a/-]m[-]u:書かむ、食べむ(-mu-:意思/催促/勧奨/推量)、
 の流れが分かる。(mu という心理表現よりも afu という折衝行動
 に重きをおく表現に変わってきた)
・-ak- 接辞=動作(周辺)概念化する意味を持つが、述語接辞の機能と
 して「無律化」を果たすものである。
 *おびやす:obi[y]as[-]u →述語律=「主:律他+客:自発」では無責
  任な言い方になる。客体の自発おびえの程度を主が規律できない。
 *おびかす:obi[k]as[-]u →述語律?=おび?かす? 客自律を解消
  したい心理は汲み取れるが単語の意味が固定していない。
 ○おびやかす:obiy[-]ak[-]as[-]u →述語律=obiy-ak おびえること+
  主が自律で成す=自律(他動詞) として主の規律範囲でおこなう。
  同様な構造で、あまやかす:amay[-]ak[-]as[-]u →述語律=あまえ
  ること+主が自律で成す=自律・他動詞にして主の規律内の甘え
  に収める意図を表す。
 ・「無律化」が分かりやすい例をもう一つあげると、
 ○寝かす:ne[k]as[-]u →横にすること+主が自律で成す=物を当分
  しまっておく→「乳児を寝かす」主の責任でおこなう。
 *寝さす:ne[s]as[-]u →乳児の自律に任す律他は主の無責任になる。
 △寝せる:ne[s]e[r]u →乳児と主の互律ならば責任半々?で可か。
 
 このように先史時代から述語律をわきまえて動作規律の構造を明確
にしようと工夫してきたのです。無律化の意図を忘れずに、述語律を
しっかりと自覚して使っていきたい。
 

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