「新手法」の用語(2):主部律と述語律
「新手法」の用語(2):主部律と述語律
新著『日本語の述語文法 〜「新手法」で学び取れる〜』で解説した「新用語」をなじみやすく解説しています。第2回目です。
前回に示した「新用語の用語例−1」を再掲します。
用語例ー1(解説回目)ーー(出現回数)
・(1回目) 二段活用連体接辞:-u[r]u-(38回):-ur-(1回否定文脈)
・(2回目) 主部(325回):主部律(58回):主語律(8回否定文脈)
・述(896回):述部(84回):述語(603回)
(3回目) :述語律(349回):述部律(2回否定文脈)
・文の構成(11回):文節(168回):文節の構造(0回)
:文節の細部(3回):自立語節+活用節(3回)
・(4回目) 活用節(103回):活用語尾(11回否定文脈)
:活用節=(22回)
:体言(の)活用節(5回):用言(の)活用節(4回)
:補語活用節(3回):述語活用(18回)
・(各回で使用) 膠着(183回):膠着強度(22回)
:膠着種別(6回)〜種類(0回)
:膠着記号:派生[/](85回)、複合[+](346回)、縮約[×](180回)
(1)新手法の「主部律と「述語律」の詳細分析
前回は、二段活用の連体形接辞:-u[r]u-と:-ur-(否定文脈)の比較をしつつ、-u[r]u-:終止形二重化の表現と解釈することの利点を述べた。
今回は、文章の主部要素と述部要素に対する常識的概念をこの際一新してほしいので、主部律/述語律について分析したい。
新著の用語出現回数・主部(325回)/述語(603回)
:主部律(58回):主語律(8回否定文脈)
:述語律(349回):述部律(2回否定文脈)
日本語の述語は「文章の「主語の人称に」応じた形態変化をしません。
- つまり、述語概念は人称とは独立した不定詞(述語事象概念だけで)運用ができます。
- 西欧語のように「主語が「述語を」規律することを「主語律」と名付けるなら、日本語は「主語律の「言語」ではありません。
- 日本語は「主部律の「言語」であり、「主/客/対象物の「主部要素」がそれぞれ連用形となり「一つの「述語」と「対向照応」して「規律」を完結します。
- また、述語要素は「単独の述語が」規律を発揮して「主部律との「規律関係」を完結します。「述語律」であり「述部律」ではありません。一つの述語が「主/客/対象物」を規律します。
- 例文:主部変化に述語は柔軟に対応の「述語律」を持つ。
例文:(イチゴは売る、イチゴが?売る、イチゴを売る、と主部連用形を変化させて述語に連結して読んでみてください。
・a:イチゴ[+は/+が?/+を] 売る。ur[-]u.(売る自律・受律)
・b:イチゴ[+は/+が/+を] 売っている。ur[0i=Q]te[+]i[r]u.
(売って[+]いる:売る自律・受律[+]いる=状態互律)
・c:イチゴ[+は/+が/+を] 売れている。ur[-]e[-]te[+]i[r]u.
(売れて[+]いる:売れて(人と物の)互律[+]いる=状態互律) - 売る:動作主の自律、対象物の受律(受けるだけの動作)
[+]いる:連用形事象が主部要素のすべてに「及んでいる状態を」表現するので、「イチゴが売っている」で受律「状態の場に」あると理解できます。(受律状態にある:受動態状態の受律表現) - 売れる:自律/受律が完遂(人・物が相互条件すり合わせ互律)する。
売れて:已然連用形[+]いる:実現互律+状態互律の表現。 - 日本語の「述語律」が特徴的なのは、
・a:自律/受律が並立していること。(自受律と呼べる)
(人には、有情有意のものとして、「自律」を解釈する)
(物には、無情無意のものとして、「受律」を解釈する)
・b:正然連用形([+]いる/[+]ある)の形態で「動作の経過状態/結果状態」として描写すると、文脈の「主部要素すべてを」状態の場に収め得ること。(状態互律と呼べる)
・c:已然連用形([+]いる/[+]ある)の形態で「動作の完遂状態」として描写すると、文脈の「主部要素を「完遂互律」の対象範囲:主部律に収め得ること。(完遂互律+状態互律と呼べる) - 上記の「述語律」を整理すると、
・a例:自受律…単純形動詞でも「主部要素:主/客/対象物」に対する規律力を発揮する。互律よりも緩やかな規律力である。
(見す/着す/乗す:自受律…見せる/着せる/乗せる:主/客が隣接するなら自受律に介添え動作を含む互律性の表現が優勢)
・b例:自受律+いる状態互律…事象進行の状態を叙述するので、主部要素全体に述語律が行き渡るように配慮されやすくなる。
(イチゴが売っている:潜在する人間の販売行為も容易に想像できる。売られている、だと逆に人間の行為が遠くなる)
・c例:已然連用形互律+いる状態互律…事象実現の状態を叙述するので、結果状態に関与する主部要素が注目される。
(イチゴが売れている:売り手・買い手の行為思い、イチゴの品質・量などがよかったのか?と思いが向かう)
(2)「態が「動詞の述語律」を決める:では、状態互律は?
「新文法」では、態:三系四態(3×4=12種類)に「動詞の述語律」を割当てています。
・能動態系=動詞語幹[/]態接辞[/]態接辞=D[-/r]( [0]-, e-, ar-, ar[-]e-)[-/r]u
:能動態「自受律」可能態「互律」結果態「果律」受動態「果互律」
・強制態系=D[-/s]as[-]( [0]-, e-, ar-, ar[-]e-)[-/r]u
:強制態「命従律」可能態「命従互律」結果態「命従果律」受動態「命従果互律」…(命従律=主命じ・客服従的自律)
・使役態系=D[-/s]as[-]e[r]( [0]-, e-, ar-, ar[-]e-)[-/r]u
:使役態「命互従律」可能態「使役互律」結果態「使役果律」受動態「使役果互律」…(使役=主命じ互助し・客服従的自律)
動詞述語律を簡潔・簡単に解説しました。
態動詞が発話されるとき、「主/客/対象物」が如何なる意識・意図を内包して行動しているのかを感得できるように言語化したものです。
・三系四態の態動詞は、[自受/命従/命互従](1/互/果/果互)律…で選択した述語律によって文章中の「登場人・物」に役割を割り当てる働きをする。
会話の際では、何度も「主/客/…」を言わなくても、述語律が構文構造を支える機能に頼ることが多い。
では、状態互律はどこにあるのか?
(3)前回の「二段活用連体形-u[r]u-に」ヒントがあります。
- 終止形-uに終止形-[r]u-の二重化:事象遂行した状態を表現する。「主/客/物」すべてに終了状態の状況が関与し規律する。
・a:稲[+は/+が/+を] 育つる:sodat[-]u[r]u(遂行の状態互律)
(自他両用動詞に感じることも状態互律と解釈しやすい) - 正然連用形[+]いる/ある=事象遂行/結果状態の互律:全主部が関与し得る描写ができる。(対象物の自受律、状態で互律化)
・b:自販機[+は/+が/+を] 置いている:ok[0i=I/-]te[+]i[r]u。
・b’:自販機[+は/+が/+を] 置いてある:ok[0i=I/-]te[+]ar[-]u。
(いる:遂行中、ある:実現結果の状態を表現する) - 已然連用形[+]いる/ある=事象完遂/実績状態の互律:全主部が関与し得る描写ができる。(已然連用形:互律、状態でも互律)
・c:報告書[+は/+が/+を] 書けている:kak[-]e[i/-]te[+]i[r]u。
・c’:報告書[+は/+が/+を] 書けてある:kak[-]e[i/-]te[+]ar[-]u。
(已然:相手の条件とすり合わせ、完遂に尽力する「互律」、
その実現状態での関与状況を述べるための「互律」です) - 「状態の互律」の動作相と態との関係
置くok[-]uを使って「状態互律と「態の四態」を比べてみよう。
…状態:置いているok[0i=I/-]te[+]i[r]u、
=動態:置けるok[-/r]e[r]u:可能態に転換OK。
…状態:置いてあるok[0i=I/-]te[+]ar[-]u、
=動態:置かるok[-]ar[-]u:結果態(古語の受動態)に転換OK。
(二重可能態:置けれ?るok[-]e[r]e[r]u:冗長ダメ表現)
#置けるok[-]e[r]uは状態互律では使えるが、態変化には注意。
…状態:置けているok[-]e[-]te[+]i[r]u、
=動態:置かるok[-]ar[-]u:結果態に転換:OK。
…状態:置けてあるok[-]e[-]te[+]ar[-]u、
=動態:置かれるok[-]ar[-]e[r]u:受動態に転換:OK。
(三重可能態:置けれ?れ?るok[-]e[r]e[r]e[r]u:冗長ダメ表現)
…状態:置かれている/あるok[-]ar[-]e[-]te[+]いる/ある:OK。
=動態:置かれる:受動態以上には進展しない。
(強制態/使役態に追加転換できる意味状態であるなら「置かれさせられ」などと転換可能ではあるが…) - 正然・已然の連用形+状態表現は動作相の進行と態の進行が混合する感覚へ誘導するので、自制的で迷わない心構えでの判断力が必要です。
つづく:次回「自制的で迷わない心構えの判断力」について記述予定。
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