「新手法」の用語(1):膠着方式
「新手法」の用語(1):膠着方式
新著『日本語の述語文法 〜「新手法」で学び取れる〜』で解説した概念構造は、学校文法での文節単位までの文法用語で説明しても矛盾しない用語は流用し、文節の下部:細部を解析する「自立語/付属語の膠着」に対する正確な分析概念を記述するために、「新手法」ごとに新用語を適用している。
『述語文法』の「まえがきから「参考図書」までの全254頁を全文検索して、新手法にまつわる用語の出現回数を調べてみました。
用語例ー1(解説回目)ーー(出現回数)
・(1回目) 二段活用連体接辞:-u[r]u-(38回):-ur-(1回否定文脈)
・(2回目) 主部(325回):主部律(58回):主語律(8回否定文脈)
・述(896回):述部(84回):述語(603回)
(3回目) :述語律(349回):述部律(2回否定文脈)
・文の構成(11回):文節(168回):文節の構造(0回)
:文節の細部(3回):自立語節+活用節(3回)
・(4回目) 活用節(103回):活用語尾(11回否定文脈)
:活用節=(22回)
:体言(の)活用節(5回):用言(の)活用節(4回)
:補語活用節(3回):述語活用(18回)
・(各回で使用) 膠着(183回):膠着強度(22回)
:膠着種別(6回)〜種類(0回)
:膠着記号:派生[/](85回)、複合[+](346回)、縮約[×](180回)
用語例−1(新手法での詳細分析)
上掲の用語例で示すように、「新手法」として新定義した用語例に対向して現文法の用語を否定文脈で使用した回数を表示してある。
- 新定義語と否定用語の対向を抜き出してみよう。
- ・二段活用連体接辞:-u[r]u-(38回):-ur-(1回否定文脈)
・主部(325回):主部律(58回):主語律(8回否定文脈)
・述語(603回):述語律(349回):述部律(2回否定文脈)
・活用節(103回 / 活用節=(22回)):活用語尾(11回否定文脈) - 日本語の原理には「膠着語方式の応用」が必須である、という方向に用語検索を誘導しています。
・今回は、「二段活用連体形の接辞」からはじめ、「膠着種別」に到達するまでを区切りとした。
この区切り2項目は新文法の基点として大事な視点です。
しかし、現代文法では膠着語方式に立脚した視点からの解析がほとんど定着していません。
そこで「新文法」の視点を補足的に解説していきたい。
(1)膠着語の視点で「二段活用連体形-uru」を分析する
古語時代では、終止形の-u接辞へのこだわりが強かったので、
・砕く/砕くる:kudak-u/kudak-uru:古語二段活用動詞
・過ぐ/過ぐる:sug-u/sug-uru:古語二段活用動詞
終止形kudak-u, sug-u, の形態(自/他共有)が優勢であっただろう。
しかし連体形-ur-uの-ur-接辞には固有の意義が認められない。
「新手法」では膠着種別の視点に立って
:二段活用連体形は-u[r]uの形態、つまり終止形-u-に追加の-[r]u-を付加した二重終止形-u[r]uだろう、と推測するのが特徴です。
これは事象動作が終止し「完了した事態を」描写することに相当する。
(-ur-という意味をなす接辞が存在したのではない、との意味です。無意味の-ur-を接辞として膠着させることは先史時代でも有り得ないことでしょう)
事象終了-u-になった「状態」を描写するため、さらに-[r]u-(自律・受律)を付加したのだと推測する。事象完遂状態になった事態を-e[r]u-で表現する現代風可能態の視点と共通するのです。
つまり動作終了-u-の状態を、さらに-[r]u-で補強すると、自律・受律が働くので、動作主体、客体、対象のどれが主部連用形に立っても述語連結できるようになります。
(自他交替が起こり、自律・受律が混合したような「態動詞」が出現したように感じるのです)
古語時代は、終止形に統語接辞-u-を必須としたので、-u[r]u-とみなす人が少なかった?のは理解できます。
さらに、何世紀も経過し近世に出現した-e[r]-に対しても、已然-e-に-[r]u-(自律・受律)が必然の登場なのだ、と見る言語学者は現代でも少ないのです。(接辞-ur-の意味構造を探求する人がもっと居てもよかろうに?)
幸いにも一般世論は五段/一段どちらの活用でも已然-e-に-[r]u-を付加して可能態を毎日発話しています。膠着原理に立ち、-e[-/r]u-=-e[r]u-と解析するほうが確実な言語運用です。
文法のほうがむやみの禁則状態なのです。
つまり、二段活用連体形が-uru-の膠着で構成される、と解釈しても成果は出ない。これは歴史的な世紀をまたぐ負の教訓遺産なのでしょう。
だから-u[r]u-の派生膠着である、と解釈するほうが文法的な収穫が遥かに多くなるのです。
・二段活用動詞は、語幹末尾に連用形の母音:+i/+eを組み込んだ形態で
動詞語幹に見立てることにより、連用形+[r]uの形態で終止形-[-/r]uを表現できるようになった。
これが一段活用動詞への転換のはじまりです。
(砕ける:kudak;e-[r]u, 過ぎる:sug;i-[r]u,など母音末語幹が登場)
近世での日本語の大転換期です。同時期にはじまるのが、已然形-e-に-[r]u-を膠着連結する「可能態、完遂態」の試みでしょう。
(2)膠着の初歩段階を考える(初歩の演習)
日本語の膠着方式[#]=派生[/],複合[+],縮約[×],の3種類の膠着結合があります。単純な複合膠着でも音便表現には工夫が必要です。
- 例1:日本語=日[+]本[+]語=niti[+]hon[+]go==
==niti[+0i=P](h)on[+]go==ni[t+P](h)on[+]go==
==ni[PP]on[+]go==nippongo.=にっぽんご。 - 例2:日本語=日[+]本[+]語=niti[+0i=00]hon[+]go==
==ni[ti=00]hon[+]go==ni[-]hon[+]go==nihongo.=にほんご。 - 例3:1.5=iti[+]ten[+]go==iti[+0i=Q]ten[+]go==i[t+T]ten[+]go==
==i[T]tengo.=いってんご。 - 例4:8×8=hati[+0i=Q]ha=ha[t+P](h)a=ha[PP]a=はっぱ。
8×9=hati[+0i=Q]ku=ha[t=K]ku=ha[K]ku.=はっく。
注:‘0’i はイ音便のはじまりを示し、前音i を消音し、i=Q,T,P,Kで前音後音との発音器官の兼ね合いが取れる音素に変換する。
(3)膠着の全3種を確認(開示のみ説明省略)
- 派生[/]:読める:yom[-/r]e[-/r]u==yom[-]e[r]u.=よめる。可能態
:食べれる:tabe[-/r]e[-/r]u==tabe[r]e[r]u.=たべれる。可能態 - 派生[/]:読みたい:yom[i/-]ta[k]0i==yom[i]ta[-]i.=よみたい。
- +複合[+]、縮約[×]:読みたがる:yom[i]ta[+]g(e[×])ar[-/r]u==
==yom[i]ta[+]gar[-]u.=よみたがる。 - 読みたかった:yom[i/-]ta[k]ar[0i=Q]ta==yom[i]ta[k]a[T]ta==
==yom[i]ta[k]a[t]ta.=よみたかった。 - 吾輩は猫である:wagahai[+]wa neko[+]de[×]ar[-/r]u==
…wagahai[+]wa:名詞連用形。
…neko[+]d(e[×])a(r[-]u)==[+]da,…[+]de([×]ar[i/-]ma)s[-/r]u==
==[+]des[-]u,…[+]de[×]gozar[0i=N](ma)s[-]u.…=猫である
/猫だ/猫であります/猫です/猫でござんす。名詞(猫)終止形。
(注:[+]de[×]ar[-/r]u…[+]de[×]ar[i/-]mas[-]u,など名詞終止形:肯定を意味します。付属語だけの活用節なので「どれも判定詞」と命名しますが、述語律はありません。自立語(猫)が述語としての述語律も果たします)
つづく:次回は「主部律と「述語律」についてを記述します。_
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