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2024/08/28

「新手法」の用語(3):-e[r]と-ar[-]uを分かる知恵


「新手法」の用語(3):-e[r]uと-ar[-]uを分かる知恵
新著『日本語の述語文法 〜「新手法」で学び取れる〜』で解説した「新用語」をなじみやすく解説しています。第3回目です。
(用例、説明の一部を加除修正しました)

(1)状態互律と態進行の関係性
・正然連用形[+]いる:置いて[+]いる…置くの連用形、
・正然連用形[+]ある:置いて[+]ある=ok[0i=I/-]te[+]ar[-]u.
(ある-ar[-]u=-e[r]-e[r]uに相当する)=置けれるok[-]e[r]e[r]u?
古語では已然-e-までで、-e[r]uの使い方がなかった!
・動作相が進んだ已然連用形[+]いる:置けて[+]いるok[-]e[-]te[+]i[r]u、
の状態表現もなく、態の「置かるok[-]ar[-]u」が使われたろうか。
・已然連用形[+]ある:置けて[+]ある…の状態表現も動作を継続観察した報告なのか、やや違和感がある。だから、態表現が優先される。
=置かる:結果態(古語の受動態)ok[-]ar[-]u、置かれる:(現代は)受動態ok[-]ar[-]e[r]uが常用されている。(受動は-e[r]-の三重連結に相当?する)

・態の進行・四態に区分けして解釈すると、
:置くok[-]u自律(能動原態)…他動詞、
…置けるok[-]e[r]u互律(可能態)…完遂に向け折り合って努力する(e[r]u)、

…置かるok[-]ar[-]u果律(結果態)…完遂が実現した状態(e[r]e[r]u)、
…置かれるok[-]ar[-]e[r]u果互律(受動態)…完遂結果に反応する(e[r]e[r]e[r]u)

・自他交替動詞を派生する接辞の組合わせは、この-e[r]u/-ar[-]uの対向が一番多い。典型的な動詞には、
:上げるag[-]e[r]u(他:自律)/上がるag[-]ar[-]u(自:自律)、
:休めるyasum[-]e[r]u(他:自律)/休まるyasum[-]ar[-]u(自:自律)、
:掴めるtukam[-]e[r]u(他:自律)/掴まるtukam[-]ar[-]u(自:自律)、
:求めるmotom[-]e[r]u(他:自律)/求まるmotom[-]ar[-]u(自:?自律!受律)、などがある。
 これらの元になる能動原態は「あぐag[-]u,休むyasum[-]u,掴むtukam[-]u,求むmotom[-]u」であり、原態に-e[r]uを膠着させて他動詞化もしくは可能態に交替させている。また、原態に-ar[-]uを膠着させて自動詞化・結果態(自発動詞)のような印象の態動詞にしている。

(2)自他交替すると、新動詞の態・述語律も変化するはず
 自他交替したそれぞれの動詞が「述語律:自受律」を持つのではないか?と推測できますが、考えてみましょう。

  1. 「態の四態」が万能方式であるなら、原態に→自受律、の述語律を与え、順次-e[r]uに↔互律、-ar[-]uに↑果律、-ar[-]e[r]uに↕果互律を与えるという態動詞の派生方法が通用するはずです。
  2. 当然ながら大部分の「自他交替は「態の四態を」成立させます。
    :上げるag[-]e[r]u:他動詞→自律、上がるag[-]ar[-]u:自動詞→自律と感じる動詞です。それぞれ「態の四態」を派生できます。
    ・自他交替で派生した自動詞/他動詞がどちらも→自律動詞であることが多いので「態の四態」を両方の動詞に適用できます。
  3. :ところが、休めるyasum[-]e[r]u:他動詞→自律と、自動詞↔(可能)互律、の二重の意味を持ちます。
    ・他動詞:手を休める→自律なら「四態OK」と判断します。
    一方、可能動詞:明日は休める↔互律(周囲条件と折り合いが取れる必要がある)では「四態NG」とみなすのが安全無難でしょう。
    つまり可能態では「四態の頂点:原動詞」にはなれないのです。

    ・自他交替したもう一方の自動詞:心身が休まるyasum[-]ar[-]u:→自律よりも複雑で
    「休めた効果の結果状態になる=yasum[-]e[r]-e[r]u」という意味の休まるyasum[-]ar[-]uなのでしょう。
     つまり休むyasum[-]uを完遂状態-e[r]uにする/なる+その効果を現実状態-e[r]uになる/する、の意味であり、-ar[-]uは積極的な自律動詞の側面があるのです。(-e[r]-e[r]u=-ar[-]uに相当します)
  4. 古代では已然-e-までしか使えず、-e[r]uに届かなかったので、休めれるyasum[-]e[r]e[r]uの派生は考慮の圏外、論外なのであった。
    その代わりが、休まるyasum[-]ar[-]uであったろう。
    ・現代で、休めれるyasum[-]e[r]e[r]uを、休めるyasum[-]e[r]uと同じ意味でしか使わないようでは混乱状態を招くことになる。
    :可能の休めるyasum[-]e[r]u↔互律は、状態の互律でもあり、自律動作の側面が弱いと感じる。
    自他交替の休まるyasum[-]ar[-]u→自律(積極結果出し)が主産物で、意図的に休める工夫の行動をとることを意味する。(上がる/休まる/掴まる/求まる:自律動作感を引き出す程度に強弱あり)

(3)二重可能態-e[r]e[r]u は正しい用法か?
 では、二重可能態は成立する使い方がないのだろうか?

  1. 現代において、可能態動詞を「四態頂点に置く」ことが認められているのは、「使役態四態」だけです。
  2. :休ませるyasum[-]as[-]e[r]u ;→命互従律(前回態四態説明)、
    …休ませれるyasum[-]as[-]e[r]e[r]u ;↔(使役互律)命互互律、
    …休ませらるyasum[-]as[-]e[r]ar[-]u ;↑(使役果律)命互果律、
    …休ませられるyasum[-]as[-]e[r]ar[-]e[r]u ;↕(使役果互律)命互果互律、が使われます。
  3. 非難されずに二重可能「休ませれる」が認められるのは、使役系可能態だけです。(主/客双方の互律を重視)
  4. …強制可能休ませるyasum[-]as[-]e[r]u ・↔命従互律(主命/客従互律)、(命ずるだけで客に従互律を課すのは実態に合わないが…)使役原態休ませるyasum[-]as[-]e[r]u ;→命互従律(主命互律/客従律)、(命じ補助して客に従律を課すこと…)
    …使役可能休ませれるyasum[-]as[-]e[r]e[r]u ;↔使役互律(主命互/客従互律)、(主命客従律を相互で完遂する…)
    これらの「述語律」の違いに対して、登場人物の動作意図を忖度して考えてみてください。

(4)二重結果態-ar[-]ar[-]u は正しい用法か?

  1. 上がる/休まる/掴まる/(求まる)=D[-]ar[-]u は、自律自動詞と解釈される場合が多い。
    (「求まる」は果律結果態とみなされることも多く、辞典の見出し語にないようだ)
  2. 自律動詞なら、「態の四態頂点に置く」ことができます。
  3. :掴まるtukam[-]ar[-]u も能動原動詞→自律と解釈されて、「四態頂点動詞」の位置づけで使われる。
    ・列車内放送で「安全のため、吊り革などに→おつかまりくださいo-tukam[-]ar[i/-]-kudas[-]ar[0i=I](mas[-]e)- !」とアナウンスする。
    (掴める状態で身体安定を確保する動作を促す放送です)
  4. :掴まる/掴まれる/捕まらる/掴まられるtukam[-]ar[-]ar[-]e[r]u、
    の「四態」は正しく理解されてほしい用法です。
    ・掴む/…/…/掴まれるtukam[-]ar[-]e[r]u の四態との違いを忖度して理解できることが大切です。
    ・原態掴むtukam[-]u:客体を動かさないために保持する意味で、
    ・原態掴まるtukam[-]ar[-]u:客体を掴み、自身を安定保持する、という積極的動作の意図を表現します。
  5. この「双方の四態」の掴まるtukam[-]ar[-]u は同一形態ですが、一方は能動原態で解釈されて使用され、片方は掴むの結果態と解釈されて使われる。(しかし、辞典や学者の理解ある解説はありません)
  6. 通論では、-ar-が人為を超えた結果現象の表現だとする「不作為論」が多いのだが、それが-ar-の意味の真芯ではない。
  7. 実際は人為の尽力意図があっての-ar-が大部分なのです。
    なにしろ、-e[r]u, -e[r]e[-]u=-ar[-]u, -e[r]e[r]e[r]u=-ar[-]e[r]u, のように已然実現意欲が山盛りの接辞膠着による表現なのですから。
  8. 現代までの通論では、四態の概念や態の二重化などが正確に考慮・考察されてこなかったからでしょう。
  9. 受動-(ar[-])e[r]u の-ar- (結果)を抜くと、可能-e[r]u (完遂実現)に相当する。当たり前の実績受動態と尽力可能態の関係であり、「ら抜き」言葉だなどと毛嫌いするのは大いなる筋違いです。
  10. 本来は、-e[r]u 已然可能が先行して存在し、次に結果-ar[-]u, 受動-ar[-]e[r]u, が登場すると好都合だった。現代なら、時間を遡って態接辞の全部を見渡せる。時代順に左右されずに整理できるはずです。

 今回の解説で動詞述語の動作相の状態と態の表現描写を考察した。
「態の四態」が教えてくれることを開示すると、
・態原動詞:→自律/←受律を持つ、(主/客に関与し規律する)
・可能態 互律↔、/結果態 果律↑、/受動態 果互律↕:どれも-e[r]-接辞を含む(潜在)ので、ともに主/客に関与し規律する。
・つまり、(どんな態動詞であっても)述語は一つであっても主部全体に規律を発揮する、ということが重要な結論です。第三者が受動態を使って主体の動作を敬語表現することもできるわけです。

つづく:次回は「新手法の活用節」=(体言/用言)[連用/連体/終止] 

 

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