« 2025年主要記事一覧表 | トップページ | 新日本語述語文法−再入門(2) »

2025/03/06

新日本語述語文法−再入門(連載)

新日本語述語文法−再入門(連載)

はじめに
 『日本語の述語文法 〜「新手法」で学び取れる〜』(2024/6)にて提案した「新手法」は、膠着語である日本語の正確な理解につながる「新しい文法表記に適する一連の工夫の手法を」詳細に解説したものです。
ただし、出版時点の最終章では「構文作成の新手法」に未完成部分がありました。
 それは現在でも考察中であり、もう一度「再入門」しながら出直してみようとこの連載を思いつきました。

・『新手法(2024/6)』の最初の一歩は「自立語と付属語の連結・膠着で生み出す「活用形を」いかに表現したら正確に開示できるか?ということです。

・音素と音素の連結点の膠着度合いを表現するには、「ローマ字つづり」が必要で、「膠着度の強弱形式=3種類」に区分する工夫をします。
・ただし「ローマ字の続け書き」のみでは、読みにくいだけです。
そこで「膠着記号[#]:=[/]派生, [+]複合, [×]縮約,の」3種類を択一選択して連結点に書き残します。(例:kak[i/-]-[+]nokos[i/-]mas[-]u.)

 「膠着記号を選択する」=発話の際に選択演算子から選べるようにした概念です。この概念に至る先行研究を述べておきます。

・歴史的に「膠着語である日本語を」ローマ字で解析して「動詞活用は語幹に接辞語幹が膠着するだけで語幹が活用しているわけではない」ことを体系的に明示したのは、清瀬義三郎則府『日本文法新論』(1989/2)、『日本語文法体系新論』(2013/12)が初めてです。(連結音素を(i), (s), など選択結果を示す記述法でした)

・この清瀬本『新論』での提起は、例で示すと
「書かす:kak-as-u、食べさす:tabe(s)as-u,」のように、母音・母音つながりの場合、連結子音(s)を挿入して膠着する、子音・子音つながりの場合、書かず:kak(a)z-u、食べず:tabe-z-u、のように連結母音(a)を挿入して膠着する、ことを明確に示したのです。

・『新手法』では、発展的工夫として、[連結音素と無音]を組み合わせた[挿入音素]=[a/-], [-/s],…を採用しました。(無音記号: - との選択演算を促す表記様式とした)

実際の[挿入音素]の数は2+4の6種類です。
・[挿入音素]=[連結母音/無音]=[a/-], [i/-], の2種。
例:D[a/-]z[-]u==書かず:kak[a]z[-]u, 食べず:tabe[-]z[-]u, を選択演算する演習ができます。(後続接辞が子音始まりの場合に使用される。動詞語幹Dが子音末なら連結母音を、母音末なら無音を選択する。すべての動詞に選択演算を適用できる)

・[挿入音素]=[無音/連結子音]=[-/r], [-/s], [-/y], [-/k] の4種。
例:D[-/s]as[-]u==書かす:kak[-]as[-]u, 食べさす:tabe[s]as[-]u, を選択演算する演習ができます。(後続接辞が母音始まりの場合に使用される。動詞語幹Dが子音末なら無音を、母音末なら連結子音を選択する。すべての動詞に選択演算を適用できる)

 この「膠着記号の選択演算子化」の工夫は小さな文法規則でありますが、通時的に古代から現代に渡って広く深く動詞活用形の生成を説明できることに気づきました。また、『新手法』の膠着記号[#]3種類を考察していくと、清瀬本の捉え方=「動詞用言は活用していない」に共感すると同時に、もうひとひねりすると「体言:名詞・名容詞は活用していないが、用言程度には文章中で多様に役割を果たし、体言の活用を選択演算しているはずだ」と考えるようになりました。
つまり、用言も体言も膠着方法に違いがあっても、どちらも付属語と膠着して活用形態を生み出しているのだ、との捉え方が大事なのだ…膠着記号[#]3種は、用言/体言のすべての膠着を包括しているのだから。

つづく。

 

« 2025年主要記事一覧表 | トップページ | 新日本語述語文法−再入門(2) »

日本語文法」カテゴリの記事

態文法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 2025年主要記事一覧表 | トップページ | 新日本語述語文法−再入門(2) »